休暇・休業の賃金|就業規則の規定例

休暇・休業の賃金

  • 従業員が休暇を取得したときは、無給で処理をしても良いですか?
  • 法律上は、年次有給休暇を除いて、休暇を取得した日については、無給で処理をしても構いません。

休暇・休業の賃金

労働基準法等の法律によって、従業員は次のような休暇・休業を取得できることが定められています。要件を満たしている従業員が申し出た場合は、会社は休暇・休業を与えないといけません。

  1. 公民権行使の保障(労働基準法 第7条)
  2. 年次有給休暇(労働基準法 第39条)
  3. 産前産後休業(労働基準法 第65条)
  4. 育児時間(労働基準法 第67条)
  5. 生理休暇(労働基準法 第68条)
  6. 育児休業(育児介護休業法 第5条)
  7. 介護休業(育児介護休業法 第11条)
  8. 子の看護休暇(育児介護休業法 第16条の2)
  9. 介護休暇(育児介護休業法 第16条の5)
  10. 裁判員休暇(裁判員法 第100条)
  11. 妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(男女雇用機会均等法 第12条)

年次有給休暇については、「使用者は、その雇入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。」として、名称のとおり、有給で処理をすることが定められています。

しかし、他の休暇については、次のように規定されていて、賃金の支払いについては記載がありません。

賃金の支払いが義務付けられていない場合は、「ノーワーク・ノーペイの原則」が適用されます。つまり、勤務をしていない時間に対して、賃金を支払う必要がないという考え方です。

賃金を支払わなくても良いということですので、会社の判断で支払っても構いません。最近は、子の看護休暇や介護休暇を有給扱いにする会社が少しずつ増えています。

しかし、生理休暇を有給扱いにすると、過剰に利用したり、利用しない従業員が不満を持ったりして、トラブルの原因になることが多いです。

以上は、労働基準法等の法律で定められている休暇・休業を取得した場合の取扱いです。

それ以外にも、就業規則で、冠婚葬祭があったときに取得できる慶弔休暇、心身の疲労回復を目的に取得できるリフレッシュ休暇など、法律で定められていない休暇を設けている場合があります。

冠婚葬祭があった場合は慶弔休暇を与えている会社が多いですが、法律では義務付けられていません。慶弔休暇の制度がない会社においては、従業員は年次有給休暇を取得して休むことになります。

法定外の慶弔休暇やリフレッシュ休暇等は、会社が自由に定める休暇ですので、法律的には無給でも問題はありませんが、無給とすると、年次有給休暇が不足する限られた者しか利用しませんので、休暇を設ける意味がないように思います。

そのため、会社の判断で設ける法定外の休暇(慶弔休暇やリフレッシュ休暇等)は、有給で処理をする方法が一般的です。

そして、それぞれの休暇が有給なのか無給なのかは、従業員にとっても会社にとっても重要なことですので、就業規則(賃金規程)で明示する必要があります。

休暇・休業ごとに有給・無給の区別を記載しても構いませんが、最初に列挙したとおり、労働基準法等の法律によって様々な休暇・休業が定められています。

無給で処理をする休暇が大半ですので、賃金規程(就業規則)には、年次有給休暇、慶弔休暇やリフレッシュ休暇など、有給で処理をする休暇を列挙して、それ以外の休暇は無給とするといった構成が分かりやすいと思います。

たまに、裁判員休暇の記載が漏れている就業規則を見掛けることがあります。休暇・休業ごとに有給・無給の区別を記載していると、記載していない法定の休暇の取扱いが曖昧になってしまいます。

有給の休暇を列挙する方法では、それ以外の休暇は全て(就業規則に記載していない裁判員休暇も)、無給で処理をすることが明確になります。また、将来、法改正によって休暇が追加されても、そのままで対応できます。


執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。

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