私傷病休職の休職期間|就業規則の規定例
私傷病休職の休職期間
- 私傷病を理由に休職する場合の休職期間は、どれぐらいが適正ですか?
- 適正な休職期間は、会社の規模、業種、業務の調整や補充要員の確保のしやすさ等によって異なりますので、一概には言いにくいです。
私傷病休職の休職期間
休職制度は、労働基準法等の法律で義務付けられている制度ではありませんので、休職期間は会社ごとに自由に設定できます。そもそも休職制度を設けるかどうかは、会社の自由です。
したがって、小規模零細企業において、従業員が私傷病を理由にして長期間勤務が不可能になった場合に、代わりの者を直ぐに採用しなければ、経営が立ち行かなくなると予想される会社は、休職制度は設けない方が良いと思います。
担当していた業務を穴埋めするために、周りの従業員が残業をして対応すると、過労死の認定基準を超える程度の長時間労働が復帰するまで継続すると予想される場合も同じです。
休職制度を設けていない会社で、私傷病によって復帰が見込めない場合は、解雇することになります。従業員にとっては酷ですが、休職期間の満了によって退職する場合も会社を離れることは同じです。猶予期間があるかどうかの違いです。
なお、通常は退職後も、健康保険の傷病手当金(標準報酬月額の3分の2)を、支給開始日から最長1年6ヶ月まで受給できます。
そして、既に就業規則で休職制度を設けていて、休職期間を短縮したり、休職制度を廃止したりする場合は、就業規則の不利益変更に当たりますので、様々な要件を満たしていることを確認しながら、慎重に進める必要があります。
新規に就業規則を作成して、休職制度を設ける場合は、どれぐらいの期間であれば、周りの従業員が穴埋めをして(採用をしないで)仕事を回せるか検討します。
なお、休職期間に入る前に、通常は年次有給休暇を取得して、休職を適用(発動)する条件となる欠勤期間があります。
長期勤続の従業員を優遇したいと考える場合は、勤続○年未満の者は○ヶ月、勤続○年以上の者は○ヶ月と、勤続年数で区別する方法も可能です。
また、休職は解雇を猶予する期間ですので、長期雇用を前提とする正社員等に適用して、有期雇用の契約社員や嘱託従業員には適用していない会社が多いです。その場合は、契約期間の満了によって雇止めをすることになります。
就業規則を作成するときは、休職制度の対象者や休職期間について、明確に定める必要があります。
大企業の就業規則やモデル就業規則を見ると、休職期間を1年から2年の範囲で設定しているものが多いですが、休職期間中も、社会保険(厚生年金保険と健康保険)の保険料を負担し続けないといけません。なお、標準報酬月額が30万円とすると、会社が負担する社会保険料(本人も同額です)は、1年間で約50万円になります。
中小企業では、休職期間は2ヶ月から6ヶ月、休職を適用(発動)する条件となる欠勤期間は1ヶ月から2ヶ月の範囲で設定するのが良いと思います。
就業規則の規定としては、休職期間を2ヶ月や3ヶ月の短期間で定めておいて、その都度、回復状況や復帰の見込み、周囲の従業員の負担等を考慮して、会社の判断で延長することがあるという構成にしても良いと思います。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。