休職事由|就業規則の規定例
休職事由
- 就業規則で定める休職事由は、どのようなものがありますか?
- キノシタ社会保険労務士事務所で就業規則を作成するときは、標準で4項目の休職事由を定めています。
休職事由
休職とは、休職事由に該当する従業員に対して、休職期間を設定してその期間は、解雇を猶予したり、出勤する義務を免除したりする制度です。
休職は労働基準法等の法律で定められた制度ではありませんので、制度の内容はそれぞれの会社の就業規則で自由に定めることができます。休職制度を設けないという選択も可能です。
なお、休職期間が満了しても復職できないときは、自動的に退職扱いとするものが一般的ですので、曖昧な就業規則を作成していると、労使間で異なる解釈をしてトラブルになりやすいです。
ここでは、休職事由に関連して生じるトラブルについて、解説いたします。
キノシタ社会保険労務士事務所で就業規則を作成するときは、次の4項目の休職事由を定めています。
- 業務外の傷病により、欠勤が連続して○ヶ月に達したとき
- 精神疾患等により、労務の提供が不完全なとき
- 会社の命令により、出向するとき
- 前各号の他、会社が必要と認めたとき
近年は精神疾患が増えています。精神疾患は本人が出勤しようと思えば出勤できるケースが多いので、第1号の期間に達する前に出勤すると、休職を命じることができません。
そうなると、第1号では対応できませんし、無理に出勤して病状が悪化することは避けるべきですので、第2号として精神疾患を対象とした項目を規定しています。
ただし、第2号を適用する場合でも、会社のみの判断によらないで、従業員の主治医や産業医など、医師の診断書に基づいて対応するようにしてください。
第3号の出向については、出向を想定していない会社は、記載は不要です。出向は会社が命じて行うことで、休職期間が満了しても退職扱いにすることはありませんので、トラブルになることは考えにくいです。
その他の例外的な事態が生じたときに、その都度、会社の判断で決定できるように、第4号の規定を設けています。
その他の休職事由
上の4つの休職事由の他に、次の休職事由を定めている就業規則を見掛けることがあります。
- 自己の都合により、欠勤が連続して○ヶ月に達したとき
- 刑事事件を犯して、起訴されたとき
- 公職に就任して、会社の業務に支障が生じるとき
自己都合休職
第5号のような自己都合休職を規定していると、個人的な事情があって、解雇が認められるような状況であっても、「休職が権利として認められる」と従業員に主張されて、解雇か休職かというトラブルが生じる恐れがあります。
したがって、自己都合休職は、就業規則には規定しない方が良いです。もし、自己都合で何かあったときは、会社の判断で決定できる第4号(前各号の他、会社が必要と認めたとき)を適用するか、解雇を検討することになります。
起訴休職
二重処罰の禁止(一事不再理)と呼ばれる原則があって、1つの違反行為に対して、後から重ねて処罰をすることが禁止されます。
第6号の起訴休職について、起訴されている期間の賃金を無給とすると、その行為は出勤停止の懲戒処分と判断されて、後から懲戒解雇や普通解雇等の処分が不可能になる恐れがあります。
本人が拘留されていて出勤できない場合は、無給でも問題はありませんが、在宅起訴で出勤できる状態で、会社として出勤して欲しくなければ、休業手当(平均賃金の6割)を支給する必要があります。
休業手当を支給していれば、懲戒処分(出勤停止)には当たりませんので、その後に諸事情を考慮して懲戒解雇や普通解雇等の処分が可能になります。
また、起訴休職を休職事由として規定していると、自己都合休職の場合と同様に、起訴されて犯罪事実が明白であったとしても、「休職が権利として認められるから、解雇ではなく、休職を適用するべきだ」と主張される恐れがあります。
したがって、起訴休職は、就業規則には規定しない方が良いです。この場合も、会社の判断で決定できる第4号を適用するか、解雇を検討することになります。
様々なケースを想定することは重要ですが、何でも記載すれば良いということではありません。記載することでトラブルの原因になることもありますので、あえて記載しないことも重要です。
公職休職
第7号の公職休職については、単に公職に就任しただけで休職させることは不適当で、「会社の業務に支障が生じる場合」でなければ休職させられないと考えられています。公職に従事するために、会社を休みがちで通常どおり業務を遂行できないような状況が想定されます。
正しく運用して、解雇しないで、休職させるのであれば、休職事由として公職休職を定めても問題になることは考えにくいので、就業規則に規定しても不都合はないと思います。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。