休職は義務ではない|就業規則の規定例

休職は義務ではない

  • 就業規則に、休職の規定は設けなくても良いのでしょうか?
  • 休職は、法律で義務付けられている制度ではありませんので、就業規則に休職の規定は設けなくても構いません。

休職は義務ではない

休職とは

休職とは、従業員が病気等で勤務できない場合に、労働契約を維持したまま、一定期間勤務を免除する制度です。そして、通常は、一定の休職期間が満了しても復職できないときは、自動的に退職扱いとなります。

厚生労働省のモデル就業規則を見ると、次のように、休職の規定が設けられています。そのため、「休職は法律的に義務付けられている」と勘違いしている経営者が多いです。

労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。

  1. 業務外の傷病による欠勤が ____ か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき --- ____ 年以内
  2. 前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき --- 必要な期間

労働基準法や労働契約法には、休職に関する規定はありません。つまり、休職制度を設けることは義務ではありませんので、設けなくても構いません。

しかし、就業規則に休職制度の規定があると、それが労働契約の一部になりますので、就業規則に基づいて、会社は休職制度を適用することが義務付けられます。

モデル就業規則や他社の就業規則をコピーして作成した就業規則は、そのまま休職制度を定めているものが多いです。そして、休職期間を1年と規定していれば、従業員からそのように対応するよう求められます。

休職期間中は、会社負担分の(本人負担分も)社会保険料が掛かりますし、周りの従業員が業務の穴埋めをしないといけません。大企業であれば支障はないかもしれませんが、中小零細企業にとって、1年は長過ぎると思います。

厚生労働省のモデル就業規則では、年単位で設定することが前提になっていますが、月単位で設定することも可能です。

休職制度がない場合

では、休職制度がない会社(就業規則に休職制度を定めていない会社)で、従業員が病気等で勤務できない場合はどうなるのでしょうか。その場合は、原則的には、解雇することになります。

労働契約法(第16条)によって、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定されています。

中小零細企業でも、雇用を継続できるのであれば、そうすることが理想です。しかし、復帰できる見込みがなければ、事業運営に大きな支障が生じますので、雇用を継続することができません。従業員にとっては酷なことですが、正当な解雇理由と認められます。

休職制度は、一定期間、解雇を猶予する制度と考えることができます。

休職制度のメリットとデメリット

休職制度の有無によるメリットとデメリットを整理しました。

休職があることのメリット

休職があることのデメリット

休職がないことのメリット

休職がないことのデメリット

少人数で1人でも従業員が抜けると、周りの者が過労死の認定基準を超えるような過重労働で対応せざるを得ないケースがあります。直ぐに採用して補充しないと、事業運営に支障が生じるという会社は、休職制度は設けない方が良いと思います。

一方、解雇に関するトラブルを防止できるという大きなメリットがありますので、半年程度は乗り切れるという会社は、休職制度を設けた方が良いと思います。

就業規則に記載する事項

就業規則に、休職に関する規定がなければ、その会社には休職制度がないことになります。

一方、休職制度を設ける場合は、就業規則に休職に関する事項を記載します。就業規則で定める主な内容は、次のとおりです。

復職できない場合は退職に繋がりますので、従業員にとっては重大事で、トラブルに発展しやすいです。また、一旦、就業規則で定めると、そのとおりの対応が義務付けられますので、休職制度を設ける場合は1つ1つ慎重に検討して決定してください。

例えば、適用対象者については、無期雇用の正社員に適用して、有期雇用のパートタイマーや契約社員に適用しない方法もあります。また、試用期間中の者や勤続1年未満の者の適用を除外することも可能です。


執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。

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