就業規則より有利な取扱い
就業規則より有利な取扱い
- 会社の就業規則(賃金規程)に、「従業員が遅刻、早退、私用外出をしたときは賃金を減額する」という規定があります。従業員が遅刻をしたときは、必ず賃金を減額しないといけないのでしょうか?
- 会社の判断により、賃金を減額しない取扱いは可能です。
就業規則の内容より有利な取扱い
労働契約法(第12条)によって、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」と規定されています。
この規定の“労働契約”は、“個別の取扱い”と言い換えることができます。つまり、就業規則で定めている内容より不利益な取扱いは無効になって、就業規則で定めている内容が適用されます。
就業規則で定めている内容より、不利に取り扱うことは禁止されていますが、有利に取り扱うことは可能です。
そして、就業規則(賃金規程)に、「従業員が遅刻、早退、私用外出をしたときは賃金を減額する」という規定を設けている場合で考えてみましょう。
従業員が遅刻をしたときに賃金を減額しない取扱いは、就業規則で定めている内容より、従業員にとって有利な取扱いですので、問題はありません。
しかし、これの反対は認められません。
就業規則(賃金規程)に、「従業員が遅刻、早退、私用外出をしても、賃金を減額しない」と規定していて、従業員が遅刻をしたときに賃金を減額する取扱いは、就業規則で定めている内容より、従業員にとって不利な取扱いです。
最初に説明した労働契約法で禁止されている取扱いに該当しますので、認められません。
したがって、賃金を減額するのであれば、就業規則(賃金規程)に、賃金を減額することを記載しておく必要があります。また、通常は賃金を減額していなくても、賃金を減額する可能性がゼロでなければ、賃金を減額することを記載してください。
例えば、10分程度の遅刻で本人に悪意がないと認められる場合は、賃金を減額していない会社が少なくありません。しかし、遅刻をしたときに、賃金を減額しないことがルールになっていると、1日8時間勤務で1時間だけ出勤した場合は7時間の遅刻として、その日は満額の賃金を支払うことになります。
このような従業員や遅刻・早退を繰り返すような従業員が現れたときのことを考えると、就業規則(賃金規程)には、賃金を減額できるよう定めておいた方が良いです。
なお、遅刻や早退をしたときに賃金を減額しない取扱いが、労使慣行になっている場合があります。
従来の労使慣行を改めて、遅刻や早退があったときに、賃金を減額するよう取扱いを変更する場合は、それなりの理由があったものと思われます。急に賃金を減額するとトラブルになりますので、事前に従業員に説明をするべきです。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。