就業規則を遵守させたい
就業規則を遵守させたい
- 従業員に就業規則を遵守させたいと思っています。どうすれば良いでしょうか?
- 労使間で丁寧に話し合うことが重要ですが、人が行うことですので、完璧に遵守させることは難しいです。
就業規則を遵守させたい
就業規則の周知
まずは、従業員に就業規則の内容を周知することです。作成した就業規則にどのようなことが記載されているのか、従業員が知らないと、無意識に違反行為をする恐れがあります。
労働基準法(第106条)によって、就業規則を従業員に周知することが義務付けられています。職場の書棚に置いたりしている会社が多いですが、特別に遵守させたいと考えるのであれば、従業員に記載内容を説明することが望ましいです。
従業員が入社するとき、会社が就業規則を作成・変更したとき、管理職に登用するときに説明をすることが考えられます。
その際は、必要な手続きやルール、禁止する行為など、1つ1つ法律的な根拠やどのような目的があって規定しているのか分かりやすく説明を行います。
例えば、遅刻については、事前に会社に連絡をすること、原則的には違反行為で、遅刻を繰り返したときは懲戒処分の対象になることを規定していると思います。
特に若い従業員に多いですが、「遅刻をした時間は無給だから、それでペナルティを受けている」「それ以上非難される理由はない」と考えている者がいます。
なぜ、会社は遅刻を違反行為として禁止しているのか、「当たり前のこと」で済ませないで、次のように、会社によって様々な理由があると思います。
- 「顧客に、他の従業員に、(このような具体的な)迷惑が掛かる」
- 「他の従業員の士気に悪影響が生じる」
- 「時間を守れない者に大事な仕事は任せられない。管理職に登用できない」
- 「会議を始められない」
- 「朝礼に参加しないと二度手間になる」
このような説明をして、本人が納得すれば、違反行為をする可能性を減らせます。
労使関係の改善
違反行為をする従業員は、正当に評価されていない、サービス残業を強要されている、経営者が公私混同をしているなど、会社に対して不満を持っていることが多いです。
労使関係を円滑にして、不満を解消するために、コミュニケーションを絶やさないことが重要です。会社や上司を信頼している従業員が、通勤手当や出張旅費をごまかしたり、悪意を持って違反行為をすることは考えにくいです。
懲戒処分の実施
人が行うことですので、就業規則を完璧に遵守させることは難しいです。従業員が就業規則に違反する言動をして、会社が指導や注意をして改善すれば、それで良いと思いますが、違反行為を繰り返したときは、懲戒処分を検討します。
会社が違反行為を放置していると、他の従業員は「会社は黙認している」「その程度のことであれば見逃される」と考えて、ルーズな職場になってしまいます。
ただし、違反行為の内容と懲戒処分の程度が釣り合っている必要があります。例えば、遅刻を繰り返したときは、初回は始末書を提出させる譴責処分が相応で、懲戒解雇は違反行為に対して厳し過ぎますので、認められません。
また、例えば、年次有給休暇を取得するときに1週間前の申請を義務付けたり、自己都合退職をするときに1ヶ月前の申出を義務付けたりして、法令より厳しいルールを設定している就業規則があります。
そのような規定は、会社の要望を定めたものとして、従業員に強制することはできません。従わなかった従業員に対して、会社が懲戒処分を行っても無効になります。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。