合同労組(ユニオン)から団体交渉を求められたときの対応
合同労組(ユニオン)とは
労使間のトラブルには、解雇や賃金の引き下げ、割増賃金の不払、年次有給休暇の取得拒否、配置転換の拒否、始末書の提出拒否など、様々なものがあります。
このようなトラブルが起きて、従業員が労働基準監督署に駆け込むケースがありますが、合同労組に加入して団体交渉を要求してくるケースも増えています。
日本の労働組合は、会社単位で組織されるのが一般的ですが、これとは別に「合同労組」という労働組合もあります。「合同労組」は、複数の会社の労働者で構成され、1人でも加入できます。
合同労組による団体交渉申入書の対応手順
合同労組から突然、団体交渉申入書が届くと驚くと思います。しかし、感情的に対応したり、放置したりすることは避けるべきです。次の手順で冷静に対応してください。
1.団体交渉申入書の内容を確認する
まずは、申入書に記載されている組合名、対象となる従業員、団体交渉の議題、希望日時などを確認します。議題が不明確な場合は、事前に明らかにするよう求めます。
2.関係資料を収集する
解雇や退職勧奨であれば、その経過の記録、賃金トラブルであれば、賃金台帳やタイムカードなど、議題に関係する資料を整理します。
3.社労士や弁護士に相談する
団体交渉の対応を誤ると、不当労働行為と判断される可能性があります。特に解雇や懲戒処分が争点となる場合は、事前に専門家に相談することが重要です。
4.日時・場所・出席者を調整する
合同労組が指定した日時や場所にそのまま応じる必要はありません。会社の都合や要望を伝えて、双方が合意できる日時・場所を調整します。
5.団体交渉を実施する
団体交渉では感情的にならないで、事実に基づいて説明することが重要です。即答できない質問には曖昧な回答はしないで、必要に応じて持ち帰って検討することにします。
6.議事録や確認書への署名は慎重に行う
団体交渉終了後に、議事録や確認書への署名を求められることがあります。しかし、その内容によっては労働協約として法的な効力を持つ場合がありますので、その場では署名しないで、十分に内容を確認してから対応する必要があります。
団体交渉応諾義務とは
合同労組も、労働組合法で認められた労働組合ですので、自社の従業員が加入している合同労組から団体交渉の申し入れがあったときは、正当な理由がない限り、会社はこれに応じる義務があります。
解雇について争いがある場合に、「解雇したのだから、もう当社の従業員ではない。当社とは関係がない。団体交渉に応じる義務はない」と考える経営者もいらっしゃいます。
確かに、有効な解雇であれば雇用契約は終了しますので、自社の従業員ではありません。しかし、解雇が有効か無効かで争いがある場合は、労働組合法上は労働者であると判断されます。
したがって、解雇した従業員が加入している合同労組から団体交渉の申し入れがあったときは、会社は応じる必要があります。
団体交渉を拒否した場合の不当労働行為とは
合同労組から団体交渉を申し入れられたときに、正当な理由なく拒否すると、労働組合法第7条で禁止されている「不当労働行為」に該当する可能性があります。
不当労働行為とは、労働組合の活動を妨害したり、労働者の団結権を侵害したりする行為をいいます。合同労組が労働委員会に救済を申し立てると、会社は団体交渉に応じるよう命令を受けることがあります。
例えば、次のような対応は不当労働行為と判断される可能性があります。
- 合同労組からの団体交渉の申し入れを無視する
- 「外部の労働組合とは交渉しない」として一律に拒否する
- 議題を確認した後も理由なく団体交渉を引き延ばす
- 交渉権限のない者だけを出席させて実質的な交渉を行わない
会社は団体交渉に応じる義務があるとしても、合同労組の要求を受け入れる義務はありません。会社は資料や根拠を示しながら説明をして、自らの立場を主張することになります。
合同労組の要求に応じる義務の範囲
労働組合法により、会社は誠実に労働組合と交渉する義務がありますが、団体交渉はあくまでも交渉事です。
受け入れられない要求であれば、資料を見せて受け入れられない理由を説明したり、合同労組に対して自社の考えを主張してください。
交渉が決裂したとしても、それは交渉した結果であって、合同労組の要求を受け入れる義務はありませんし、合意が義務付けられることもありません。
団体交渉を進める際の注意点
合同労組からいきなり団体交渉を求められても、会社としてどう対応すれば良いのか、普通は戸惑ってしまいます。
団体交渉の準備が不十分で、また、労働基準法や労働組合法の知識が不十分な状態で団体交渉を行うと、合同労組のペースで進んでしまいます。合同労組もそれを分かっていますので、団体交渉の日時や場所を指定して、早く団体交渉を開催するよう求めてきます。
しかし、合同労組が指定してきた団体交渉の日時や場所等は、合同労組の申し入れであって、会社がそれに従う義務はなく、別の日時や場所等を指定しても構いません。
団体交渉を開催する場合は、次のように、あらかじめ、議題、日時、場所、出席者(氏名・役職・人数)について、双方で合意してから交渉に入るようにしてください。これらについては文書化しておくと良いでしょう。団体交渉を行う前の主な注意点は、次のとおりです。
団体交渉の時間帯
合同労組から勤務時間内に団体交渉を行うよう求めてくることがありますが、勤務時間内に団体交渉を開催する必要はありません。業務への影響や賃金の取扱いの問題もありますので、勤務時間外に実施することが望ましいです。
これを認めると、業務を中断することになりますし、団体交渉を行った時間の賃金の支払で問題になります。
勤務時間内に団体交渉を行ったにもかかわらず、賃金をカットしていないと、それが前例になりますので、以降も団体交渉を行った時間の賃金を支払わされることになります。
団体交渉の場所
団体交渉は、会社の施設や合同労組の事務所で行うことは避けた方が良いです。
例えば、1回目の団体交渉を会社の会議室で行うと、以降も会社の会議室の使用を求められます。会社で団体交渉を行うと、業務に支障が生じることも考えられますし、会社での組合活動を認めるよう要求されるかもしれません。
一方、合同労組の事務所で行う場合も、関係のない人が団体交渉に参加したり、気を配る必要があります。
したがって、団体交渉は他の民間の会議室等を借りて行うのが良いでしょう。会議室等の使用料は双方で折半することが望ましいです。
団体交渉の議題
議題を明らかにしないで、団体交渉を申し入れてくる合同労組もあります。
議題が明らかでないと、何のために団体交渉を行うのか分かりません。また、会社は事前の準備ができませんので、団体交渉の議題を明確にするよう要求するべきです。
団体交渉の出席者
合同労組は社長や代表者の出席を求めてきますが、必ずしも社長や代表者が団体交渉に出席する必要はありません。
ただし、社長や代表者が出席しない場合は、社長や代表者と同程度の権限(労働条件等について決定できる権限)のある者を出席させないといけません。そして、団体交渉の場では、「社長に聞かないと分からない」といった発言をすることは許されません。
一方、合同労組の出席者については、合同労組とは関係のない者の出席は拒否できます。なお、合同労組の組合員や上部団体の役員の出席を拒否することはできません。
団体交渉をする前に出席者の氏名・役職・人数を明らかにしておくことで、労働組合と関係のない者の出席を防止できます。なお、団体交渉は、労使の代表者が協議するものですので、双方5名程度で良いと思います。
団体交渉の時間
議題の内容にもよりますが、2時間も交渉をすれば議論が平行線になったり、持ち帰って検討しないと進まないといった状況になることが多いです。
団体交渉の時間は1回あたり2時間として、延長する場合は双方合意の上で1時間以内の延長とすることを取り決めておくべきでしょう。これを取り決めていないと、団体交渉が深夜に及んだり、合意するまで終わらないことになりかねません。
労働組合が用意した書類にサインしない
そして、団体交渉が終わった際に、合同労組から議事録と称して書類へのサインを求めてくることがあります。そこで、双方がサインをすると、議事録といった名称は関係なく、その書類が労働協約として有効になることがあります。
合同労組も当然、組合側に有利な文書を用意していますので、安易にサインはしないよう注意してください。サインを求められても、「今もらったばかりで、検討できないから、社内に持ち帰って検討する」と言って、その場ではサインしないのが良いでしょう。
(2014/7作成)
(2026/3更新)
執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。メールを用いた関連サービスは20年以上の実績があり、全国の中小零細企業を対象に、これまで900社以上の就業規則の作成・変更に携わってきました。
