始末書について

始末書について

社員が問題行動を起こしたときは、会社はどのように対応されていますか?

これまでに始末書を提出させたことはありますか?

「注意をしたら、職場の雰囲気が悪くなってしまうから」といって、始末書の提出を敬遠される経営者もいらっしゃいます。

そうでしょうか?

始末書について考えてみましょう。

始末書の効果

始末書は、罪を犯したから罰を与えるというだけではなく、もっと大事な効果があります。

組織風土の是正

自分勝手な考えや行動をする社員が現れると、他の社員は「どうして上司は注意をしないのだろう?」と思い、上司が注意をしないまま見過していると、「じゃー、私も」という考えになってしまいます。

それが蔓延するとチームワークがなくなり、好き勝手なことをする社員が増える。そして、業績が悪化する...

そうなる前に手を打っておかないと、組織風土が悪い方向へ流れていきます。見て見ぬ振りをしていると、後でツケが回ってきます。

職場の規律を乱す社員が現れたときは、違反の程度によって始末書を提出させたりして、毅然とした態度で会社の意思やルールを示すべきです。

後のトラブル防止

始末書を取っておくと記録として残りますので、万一、裁判になったときに事実の有無を示す重要な証拠になります。

しかし、始末書がないと、後から違反行為を立証するのは難しくて、会社の立場は不利になります。それに何の処分もしていなければ、会社はその行為を黙認していたと判断される可能性が高いです。

実際に、違反行為があって解雇をして、社員から解雇の無効を求めて訴えられたケースで、会社が違反行為の事実を証明できなかったり、黙認していたとして、社員の言い分が通った(解雇無効と判断された)裁判例があります。

教育的効果

例えば、遅刻を繰り返す社員がいたとします。誰からも注意されなければ、本人は遅刻が悪いこととは思いません。

遅刻が繰り返されたときは、「なぜ遅刻はいけないのか」「遅刻することで他の社員にどれぐらいの迷惑をかけているのか」など、最初は口頭で注意や指導をします。

それでも改善されないときに、始末書を提出させることで、自分の行った違反行為の重大さに気付くこともあります。

始末書の書き方

一般的な始末書は次のような構成になっています。

  1. 件名
  2. 日時や時刻
  3. 場所
  4. 実際に自分が行った行為
  5. その理由・目的
  6. 誓約すること

1.〜5.までが事実経過の部分、6.が謝罪や反省の部分となっています。

始末書を提出させるときの注意点

始末書の提出は強制できるのか?

先に説明したとおり、始末書は事実経過の部分と、謝罪・反省の部分に分けられます。

会社は「謝罪や反省の文を書け」と強制することはできません。なぜなら、個人の意思の自由が尊重されるからです。

したがって、謝罪文や反省文も書かせたいときは、社員の理解を得て、自主的に書くよううまく持っていくようにして下さい。

もう一方の事実経過の部分については、本来社員には業務の遂行内容を会社に報告する義務があります。また、事実経過(顛末書)を書かせることは、本人の意思の自由には関係ないことですので、業務命令として強制できます。

始末書を提出して来ないときは、事実経過のみを記載した顛末書の提出に指導方針を変えることになります。

始末書の提出を拒否されたときは?

始末書の提出命令に従わない場合の対処の仕方も異なります。

謝罪文や反省文を書かないからと言って、出勤停止などの他の懲戒処分を課すことはできません。「戒告」や「訓戒」というのは、本人に反省を促すもので、始末書を提出してもしなくても、反省を促せば、それで処分は済んだものとみなされます。

ただし、事実経過の部分(顛末書)も書かないというのであれば、これは業務命令違反となりますので、懲戒処分を課すことができます。

違反があればすぐに始末書を提出させる

会社が指摘をした最初は、違反者はその事実を認めることが多いのですが、時間が経つと責任転嫁をしたり、否定したりすることがあります。

就業規則に違反する事実があれば、その都度、すぐに始末書を提出させることにしましょう。

公平に処分する

例えば、AさんとBさんがいて、2人とも同じように遅刻を繰り返していたとします。

このとき、Aさんは優秀だからという理由で黙認し、成績の悪いBさんだけを懲戒処分するというのは認められません。過去の前例も重視されます。つまり、一貫性が必要ということです。

何か問題があったときには就業規則に基づいて、キチンと運用する習慣を身に付けて下さい。

就業規則を整備する

就業規則がないと懲戒処分はできません

また、就業規則に書かれてある懲戒事由に該当しない言動についても、懲戒処分を行うことはできません。

(2006/9作成)
(2014/5更新)