試用期間の法律知識

試用期間の法律知識

「とりあえず働いてもらおう。採用するかどうかは試用期間が済んでから」と安易に考えていると、痛い目に会うかもしれません。

試用期間について、法律的なことを少し詳しく見てみましょう。

試用期間の意味

採用前に1度や2度の面接をしただけで、その人の能力や適格性を見抜くことはほぼ不可能です。

そのため、初めから正式の本採用としないで、一定期間を定めて試しで雇ってみる試用期間を設けている会社が一般的です。

そして、この試用期間中に、能力や技能、勤務態度、性格などの適格性をみて、正式な社員として採用するかどうかを決めます。

試用期間の長さ

試用期間というのは従業員にとっては不安定な立場ですので、ずっと試用期間ということは許されません。必ず期間を定めないといけません。

試用期間の長さについては、特に労働基準法等で決まりはありませんが、一般的に最も多いのは3ヶ月、最長でも1年が限度と解釈されています。

本採用の拒否=解雇

試用期間中の適格性をみて、本採用を拒否する行為は、法律上は「解雇」になります。

試用期間中の場合は「解雇」と認識されていない経営者もいらっしゃいますが、試用期間中であっても解雇の正当性が問われますし、試用期間中でも入社して14日を超えると、労働基準法上の解雇予告の手続きが必要になります。

試用期間中は簡単に辞めさせられる?

正社員を解雇する場合は正当な理由が必要とされ、厳しい制約が課されています(詳しくは解雇トラブルの防止をご覧下さい)が、試用期間中の解雇は正社員の場合よりも比較的認められやすいです。

比較的認められやすいというだけで、「特に理由もないのに試用期間が終わったから解雇する」というのは認められません。このような事を想定しているのでしたら、最初から期間雇用として採用するようにして下さい。

また、「なんとなく気に入らないから」というのも理由にはなりません。

そして、本採用の拒否(解雇)事由として認められるのは、採用時の面接などでは知ることができなかった事実が、試用期間中に判明したというものでないといけません。つまり、「面接だけでは予想できなかった」という事実が必要です。

本採用拒否の具体的事由

裁判例では、次のような事由が、本採用拒否の正当な事由と認められました。

これは個々の裁判で判断されたものですので、これに該当すれば問題ないということではありません。参考程度として紹介しているものです。

試用期間は教育や指導をするための期間でもありますので、上のような不適格事由があったとしても、いきなりの解雇は認められず、その期間中にどのような教育や指導をしたのかがポイントになります。

本人としても何も注意されなければ本採用を期待しますし、その期待が裏切られるとトラブルに発展します。試用期間中は十分な教育や指導を行って、本人の不適格性を指摘することが欠かせません。それによって改善されれば、会社にとっても本人にとっても、好都合です。

また、試用期間が終わった後は正社員として活躍してもらうことが前提ですので、そういった面からも、試用期間中の教育や指導は欠かせません。

試用期間の延長

試用期間を延長する場合は、延長せざるを得ない特別な事情が必要です。

また、延長する期間を定めていないと、本採用したものと判断されますので、延長する際は、必ずその期間を定める(同意書を取り付ける)ようにしてください。

ただし、試用期間を延長すると、最初の延長前の試用期間中の事実だけを理由にして、解雇することができません。他の解雇事由があったり、延長することになった事実が改善されなかったり、試用期間を延長すると解雇が難しくなります。

個人的には、試用期間は延長しないで、最初の試用期間中で判断するべきと思います。就業規則に3ヶ月で定めているのでしたら、試用期間を延長しないで済むように、最初から試用期間は4ヶ月や5ヶ月、6ヶ月で定めておく方が良いと思います。

試用期間中の各種保険

試用期間中でも、労災保険や雇用保険、社会保険(健康保険と厚生年金)については、それぞれの加入基準を満たしていれば、本採用後ではなく、最初の採用当初から加入しないといけません。

(2004/2作成)
(2014/6更新)