就業規則の記載事項

就業規則の記載事項

  • 就業規則には何を記載するのでしょうか?
  • 労働基準法によって、就業規則に「必ず記載しなければならない事項」と「制度を設ける場合は記載しなければならない事項」が定められています。

就業規則に記載しないといけない事項

労働基準法(第89条)によって、「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。」と規定されていて、就業規則に記載しなければならない事項が明示されています。

就業規則に必ず記載しなければならない事項

就業規則に必ず記載しなければならない事項として、次の3つが挙げられています。労働条件の中心となるもので、「絶対的必要記載事項」と呼ばれています。

  1. 労働時間に関する事項
    • 始業時刻及び終業時刻
    • 休憩時間
    • 休日
    • 休暇(年次有給休暇、育児休業、生理休暇など)
    • 交替勤務の場合は交替勤務に関する事項
  2. 賃金(基本給や手当)に関する事項
    • 賃金の決定方法又は計算方法
    • 賃金の支払方法
    • 賃金の締切日及び支払日
    • 昇給に関する事項
  3. 退職に関する事項
    • 退職及び解雇の事由
    • 退職及び解雇の際の手続き

労働時間について、始業時刻が9時、終業時刻が18時、休憩時間が12時から13時までと一定の時刻で定めている場合は、その時刻を記載します。

そうでない場合は、始業時刻、終業時刻、休憩時間の決定方法を記載します。例えば、「所定労働時間は1日8時間以内とし、始業時刻、終業時刻、休憩時間は、雇用契約書によって各人ごとに決定する」のようになります。

休日も同じです。土曜日、日曜日、祝日、夏季休業、年末年始休業と定めている場合は、その具体的な休日を記載して、雇用契約書やシフト表によって各人ごとに決定している場合は、その決定方法を記載します。

休暇が挙げられていますが、労働基準法や育児介護休業法等によって、様々な休暇・休業が定められています。法定の要件を満たしている従業員が休暇・休業の取得を申し出たときは、会社は拒否できませんので、休暇・休業を与える必要があります。

労働基準法や育児介護休業法等の法律で定められている休暇・休業は、当然、従業員に適用されますので、休暇・休業の内容や取扱いについて、就業規則に記載する必要があります。会社が独自に(法定外の)慶弔休暇やリフレッシュ休暇等の制度を設けている場合は、それも記載します。

賃金については、基本給、役職手当、資格手当、職務手当、通勤手当等の名称だけではなく、具体的な支給額や支給額の決定方法を就業規則(賃金規程)に記載する必要があります。

また、昇給に関する事項の記載がない就業規則(賃金規程)を見掛けることがありますが、法定の要件を満たしていないこと(労働基準法違反)になります。なお、昇給に関する事項を記載することが義務付けられているもので、昇給自体が義務付けられるものではありません。就業規則(賃金規程)の書き方が重要になります。

制度を設ける場合は就業規則に記載しなければならない事項

会社で制度を設けたり、ルールを定めたりしている場合に記載しなければならない事項として、次の内容が挙げられています。制度として定めていない場合は記載する必要がなくて、「相対的必要記載事項」と呼ばれています。

退職金を支払う場合は、通常は退職金規程を作成して、退職金の支給額の決定方法等を記載します。退職金規程や賃金規程も就業規則の一部という扱いになります。

表彰及び懲戒の種類及び事由に関する事項が挙げられていますが、懲戒は就業規則の重要な役割の1つです。

労働契約法(第15条)によって、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」と規定されています。

”使用者が労働者を懲戒することができる場合において”という条件が設定されていますが、就業規則に懲戒の種類及び事由を定めることによって、この条件を満たすことになります。つまり、就業規則に懲戒に関する記載がなければ、相当な理由があったとしても、会社は懲戒処分を行うことができません。

安全及び衛生に関する事項としては、健康診断が該当します。会社が従業員の健康管理を怠って、健康状態が悪化した場合は、従業員から損害賠償を請求される恐れがあります。そのような事態にならないように、ガイドラインとして就業規則には適切な規定を設けるべきです。

その他従業員の全てに適用される事項としては、休職等が該当します。休職制度を設ける場合は、休職事由や休職期間、復職に関する事項を定めます。退職や解雇に繋がりますので、トラブルが生じないように様々なケースを想定して規定することが重要です。

キノシタ社会保険労務士事務所では、過去の裁判例も研究して(労働基準法関連労働契約法関連の一部は公開しています)、トラブルを防止できる就業規則を作成いたします。

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