就業規則に記載できない事項

就業規則に記載できない事項

  • 就業規則には何を記載しても良いのでしょうか?記載できない事項はありますか?
  • 職場で共通のルールを記載することは可能ですが、法律に違反する事項は記載できません。

従業員の全てに適用される事項

労働基準法(第89条)によって、労働時間、賃金、退職に関する事項など、就業規則に記載しなければならない事項が列挙されています。その中で、自由に記載できる事項として、「その他従業員の全てに適用される事項」があります。

例えば、出張、車両、在宅勤務(テレワーク)等の手続きのルールや取扱いで、それぞれ出張旅費規程、車両管理規程、在宅勤務(テレワーク)規程等を作成するケースがあります。

従業員に共通するルールや取扱いがあれば、従業員に対する説明を省略できますので、整理して規程を作成するのが効率的です。その規程は、就業規則の一部になります。

労働基準法に違反する事項

「従業員の全てに適用される事項」として定めたいとしても、労働基準法等の法律に違反する内容は記載できません。就業規則に記載しても、労働基準法の内容が優先して適用されます。

例えば、従業員が10分の遅刻をしたときに、10分ぶんの賃金を減額しても問題はありませんが、10分の遅刻を1時間に切り上げて賃金を減額することは認められません。10分の遅刻に対して1時間分の賃金を減額すると、50分ぶんの賃金の不払となり、労働基準法違反になります。

また、よくあるケースとして、割増賃金の基礎に算入する必要がある手当を算入していない場合も、労働基準法に違反します。就業規則のその部分は無効になって、労働基準法に従って割増賃金を算出して支払うことが義務付けられます。

ところで、労働基準法等の法律に違反する就業規則を労働基準監督署に届け出ると、法律違反のため、労働基準監督署から指導されることがあります。

もし、労働基準法に違反する就業規則を労働基準監督署に届け出て、指導されないで、そのまま受付の処理が済んだとしても、その就業規則が有効になる訳ではありません。後で違反が発覚したときは、修正するよう指導又は是正勧告が行われます。

合理的な労働条件

労働契約法(第7条)によって、「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。」と規定されています。

「合理的な労働条件」を定めていることが求められます。抽象的で判断が難しいですが、例えば、1回の無断欠勤で解雇をするという規定は、合理的ではないと判断されます。

就業規則は会社が作成・変更するものですが、その際は、従業員の過半数代表者に意見を聴くことが義務付けられています。適正に選出した過半数代表者が、納得して同意する内容であれば、一般的に「合理的な労働条件」と考えて差し支えないように思います。


執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。

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