就業規則の規定と規程、条・項・号
規定と規程
- 就業規則を見ていると、「規定」と「規程」という言葉が使われていますが、「規定」と「規程」は違うのでしょうか?
- 労働基準法等の法律では、「規定」は個々の条文を指す場合に使います。「規程」は条文が集まったものを指す場合に使います。
就業規則の規定と規程
規定と規程は発音が同じで意味も似ていますので、混同して使われることがあります。
労働基準法を見ると、「産前産後の女性が第65条の規定によって休業した期間」、「前項の規定によって明示された労働条件が・・・」のように記載されています。規定は、特定の文章・条文を指していることが分かります。
また、労働基準法を見ると、「貯蓄金の管理に関する規程を定め・・・」「監督方法についての規程の制定・・・」のように記載されています。規程は、1つのテーマについて定めたルールの全体(規定が集まったもの)を指していることが分かります。
就業規則は労働基準法に基づいて作成が義務付けられているものですので、就業規則の書き方も労働基準法の書き方に準拠しているケースが一般的です。
「規定」が集まったものを「規程」と言いますので、会社で作成する就業規則もこれに準拠して、就業規則のうち、賃金に関する取扱いのルールを定めたものは「賃金規程」になります。
「賃金規定」、「退職金規定」、「育児介護休業規定」となっているものを見掛けることがありますが、それぞれ「賃金規程」、「退職金規程」、「育児介護休業規程」が正しいです。
厳密に言うとそうですが、「賃金規定」、「退職金規定」、「育児介護休業規定」となっていても、問題が生じることはありません。
第○条、第○項、第○号
第○条、第○項、第○号も、法律に触れる機会がないと、何を指しているのか分かりにくいです。
第○条は、労働基準法や就業規則にそのまま記載されていますので、直ぐに分かります。
第○項と第○号については、就業規則では次の例のように、第○条>第○項>第○号の順で、小さくなっていきます。労働基準法もこのような形式になっていますので、就業規則も同じ形式にしている会社が一般的です。
第6条(提出書類)
1 従業員として新たに採用された者は、入社日までに次の各号に掲げる書類を提出しなければならない。
(1)誓約書
(2)雇用契約書
(3)源泉徴収票・・・
2 正当な理由がなく、期限までに前項の書類が提出されない場合、又は提出した書類に関し虚偽の記載・申告を行った場合は、採用を取り消すことがある。
3 第1項の提出書類の記載事項に変更があったとき、又は会社が必要と認めたときは、その都度2週間以内に届け出なければならない。
第○項や第○号とそのまま記載されていませんので、分かりにくいです。
この就業規則の例では、条の下に番号だけで1つの文章になっているものを項、項の下にカッコ付きの番号で箇条書きになっているものを号、と表しています。
それぞれの会社の就業規則によって、漢数字を用いたり、@Aのように丸数字を用いたりするケースがあります。その場合でも、第○条>第○項>第○号の順で、小さくなるのは同じです。
また、大分類として「第○章」、小分類として「第○節」を設けるケースも多いです。なお、労働基準法は第○章だけで第○節は使用していませんが、育児介護休業法では第○節も使用しています。
就業規則の形式は、労働基準法では特に定められていません。必要事項が記載されていれば、「条・項・号」という形式になっていなくても問題はありません。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。