就業規則の前文|就業規則の規定例
就業規則の前文
- 就業規則に「前文」を記載した方が良いですか?
- 個人的には、就業規則に「前文」は必要ないと考えていますので、特に記載したいことがなければ、記載しなくても良いと思います。
就業規則の前文とは
「就業規則の診断」や「就業規則のリニューアル」の業務を行っていると、前文を設けている就業規則を見掛けることがあります。私の経験から言うと、前文を定めている就業規則は、全体の1割未満と思います。
就業規則の前文には、会社の経営理念や経営方針、社訓、社是といった会社の基礎となる信条を記載しているものが多いです。例えば、次のようなものです。
- 地域社会に貢献する
- 取引企業の発展に貢献する
- 日本の発展に貢献する
- 顧客の満足度を向上する
- 社業の発展に努める
このような前文は、就業規則の必要記載事項ではありませんので、労働基準法上は記載しなくても構いません。前文を記載するかどうかは会社の自由です。
前文の効果
「就業規則を作成するときは、前文を記載して、従業員のモチベーションを高めよう」と主張する社会保険労務士もいます。経営理念を定めて、従業員に浸透することは大事なことです。これを否定するつもりはありません。
しかし、こちらでも解説していますが、就業規則に何かを記載するだけで(前文を記載するだけで)、モチベーションが上がることは考えにくいです。
就業規則は、退職したい、育児休業を取得したい、病気になった(休職の規定を確認したい)、慶弔休暇を取得したい等、普通は何かあったときしか見ません。
また、経営者が他社の就業規則を見て、「この前文は素晴らしい」と思って、そのまま自分の会社の就業規則にコピーをしても意味がありません。上で列挙したような内容を読んで、従業員のモチベーションが上がるとは思えません。「耳触りの良いことが書いてあるな」と思うだけではないでしょうか。
そもそも経営理念や会社の信条のようなものは、経営者自身が心の底から共感できる、実体験に基づいたオリジナルの言葉でないと、従業員にはなかなか浸透しにくいです。
そして、それは、就業規則に記載して終わりではなく、繰り返し従業員に訴えないといけません。何度も訴え掛けることで、従業員に浸透して初めて、モチベーションの向上に繋がるものと思います。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。