嘱託とは|就業規則の規定例
嘱託とは
- 嘱託とは、どのような者を言うのでしょうか?
- 定年退職後に再雇用する者を嘱託と呼んでいる会社が多いですが、どのような者を嘱託と呼ぶのかは、それぞれの会社が決めることです。
嘱託とは
労働基準法に、「嘱託」という記載はありません。「嘱託」は法律で定義付けられているものではありませんので、「嘱託だから、このように取り扱わないといけない」といったルールは特にありません。
嘱託という文字を見ると、委嘱や委託が連想されて、雇用関係ではないと思われるかもしれません。しかし、通常は、正社員が60歳で定年退職をして再雇用するときに、嘱託に切り替えるケースが多いです。この場合は、委嘱や委託ではなく、雇用関係になります。
また、労働基準法では、「使用者(会社)」と「労働者(従業員)」の関係が示されています。嘱託も労働者に該当しますので、労働基準法上は、正社員と同様に取り扱われます。
その他にも、パートタイマー、アルバイト、契約社員、臨時従業員など、呼び方を区別している場合がありますが、労働基準法上は、会社が雇用している者は全て労働者に該当します。
それぞれの会社において、取扱いを区別するために、便宜上、雇用形態(従業員の種類)を設定しています。嘱託もその1つです。
雇用形態ごとの定義付けは、通常は、それぞれの会社が就業規則で定めますので、例えば、A社ではパートタイマーは無期雇用、B社ではパートタイマーは有期雇用という違いが生じます。
嘱託については、定年までは正社員として基幹業務を任せて、60歳の定年以降は個人のペースに合わせて働き方を変えることがあります。そのような場合に、正社員と区別するために、60歳で定年退職した者を嘱託として再雇用する会社が多いです。
定年年齢を65歳としている会社では、65歳以上の者を嘱託として再雇用するケースもあります。また、定年後に嘱託ではなく、契約社員やパートタイマーとして再雇用する方法もあります。会社の就業規則でそのように定めていれば、特に問題はありません。
そして、嘱託として再雇用する場合は、一旦退職して、採用しますので、改めて労働条件を決定します。
正社員から嘱託に切り替えて、期間を定めて雇用したり、労働時間を短縮したり、賃金(手当)の構成を変えたり、役職を外したり、休職を適用しなかったり、賞与を支給対象外にしたり、退職金規程の適用を除外したり、労働条件を変更できます。
ただし、休職を適用しなかったり、賞与を支給対象外にする場合は、就業規則や賃金規程のそれぞれの項目で、嘱託には適用しないことを規定する必要があります。もし、就業規則や賃金規程に適用を除外する規定がなければ、嘱託にも適用することになります。
なお、定年になった以降も労働条件を変更しない場合は、正社員と嘱託を区別する必要がありませんので、就業規則の定義付けに嘱託の項目を設ける必要はありません。退職するまで正社員のまま雇用することになります。その場合は、定年年齢を60歳から65歳に引き上げても良いかもしれません。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。