解雇の予告と解雇制限|就業規則の規定例

解雇の予告と解雇制限

  • 解雇の予告と解雇制限について、就業規則に記載しないといけませんか?
  • 就業規則に記載する義務はありませんが、労働基準法で定められている内容ですので、会社が適切に対応するために、記載した方が良いです。

解雇の予告と解雇制限

解雇の予告

労働基準法(第20条)によって、会社が従業員を解雇するときは、30日以上前に解雇の予告をするか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払うことが義務付けられています。「解雇の予告」と言います。

ただし、次のいずれかに該当して、労働基準監督署長の認定を受けた場合は、解雇の予告の手続が免除されます。

  1. 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
  2. 従業員の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合

また、次のいずれかに該当する従業員についても、解雇の予告の手続が免除されます。

  1. 日々雇い入れられた者
  2. 2ヶ月以内の期間を定めて雇用された者
  3. 季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて雇用された者
  4. 試用期間中の者

解雇制限

労働基準法(第19条)によって、次の期間及びその後の30日間は解雇が禁止されています。「解雇制限」と言います。

  1. 従業員が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間
  2. 女性従業員が(労働基準法第65条によって)産前産後休業する期間

ただし、次のいずれかに該当する場合は、解雇制限が解除されます。

  1. 療養開始後3年が経過して、会社が平均賃金の1200日分の打切補償を支払った場合
  2. 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となって、労働基準監督署長の認定を受けた場合

就業規則に記載する義務

労働基準法(第89条)によって、就業規則に記載しなければならない事項の1つとして、「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」が挙げられています。

括弧書きで「解雇の事由を含む」と記載されていますが、これに解雇の予告と解雇制限は含まれるのでしょうか。通達等で具体的に示したものがありませんが、労働基準法第15条の労働条件の明示の規定が参考になります。

会社が従業員を採用するときは、労働条件を明示することが義務付けられていて、労働基準法施行規則によって、明示しなければならない労働条件の1つとして、「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」が挙げられています。

就業規則に記載しなければならない事項と一致しています。記載するべき内容も同じと考えられます。

そして、労働条件の明示は、労働条件通知書や雇用契約書によって行いますが、厚生労働省が公開しているモデル労働条件通知書を見ると、「退職に関する事項」の欄は、次のように記載されています。

  1. 定年制 ( 有(  歳)  無 )
  2. 継続雇用制度 ( 有(  歳まで)  無 )
  3. 自己都合退職の手続 (退職する  日以上前に届け出ること)
  4. 解雇の事由及び手続 (             )

この内容で労働基準法の要件をクリアしているとすると、解雇の予告と解雇制限の規定は、就業規則に記載しなくても問題はないと考えられます。

就業規則に記載しない場合のリスク

しかし、就業規則に記載しないとしても、労働基準法は適用されますので、会社は解雇の予告と解雇制限の規定は守らないといけません。

最初にそれぞれの制度の内容を説明しましたが、一般的には余り知られていないと思います。就業規則に記載していれば、会社(上司や担当者)は就業規則を見て適切な対応ができますが、就業規則に記載していなければ、間違った対応をする可能性が高くなります。

「間違った対応=労働基準法違反」ですので、「知らなかった」で済む話ではありません。労働基準法違反を予防するために、解雇の予告と解雇制限に関する規定は、就業規則に記載した方が良いです。

もし、経営者が「解雇の予告はしたくない」「就業規則に記載すると従業員に気付かれる」と考えているとすると、違法な取扱いをすることが前提ですので、従業員とのトラブルは不可避です。

トラブルが表面化すると、法律違反をしている会社に勝ち目はありませんし、解雇の正当性も疑われます。就業規則に解雇の予告と解雇制限の記載をしないことによって、会社が得られるメリットは皆無と言えます。

当事務所で就業規則を作成する場合も、これらの記載をしています。


執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。

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