懲戒解雇の事由の分類|就業規則の規定例

懲戒解雇の事由の分類

  • 懲戒解雇をしても認められる理由としては、どのようなケースがあるのでしょうか?
  • 横領などの重大な違反行為をして、その者を排除しなければ職場の秩序を維持できないようなケースであれば、懲戒解雇をしても認められます。

懲戒解雇とは

従業員が違反行為を行ったときは、会社は就業規則に基づいて懲戒処分を行えます。懲戒処分は軽い順に、

  1. けん責(始末書を提出させる)
  2. 減給
  3. 出勤停止
  4. 諭旨退職
  5. 懲戒解雇

といった種類があり、懲戒解雇は最も重い処分になります。

心身の障害や能力不足等を理由として従業員を解雇する場合がありますが、これらは本人が故意で行ったり、悪意を持って行ったりするものではありません。懲戒解雇と区別をするために普通解雇と呼ばれることがあります。普通解雇は会社都合による解雇として、通常は退職金が支払われます。

一方、懲戒解雇は普通解雇と違って、故意であったり、悪意を持って行った違反行為に対して、会社が制裁として解雇するものです。懲戒解雇は本人に重大な責任があることから、退職金規程(就業規則)に基づいて、退職金は不支給又は減額となるケースが一般的です。

また、労働基準監督署から解雇予告の除外認定を受けられれば、会社は解雇予告の手続きを省略できます。なお、懲戒解雇であれば、解雇予告の除外認定を受けられるということではありません。解雇予告の除外認定を受けられる範囲と、懲戒解雇が認められる範囲は、必ずしも一致しません。

解雇予告の除外認定を受けられる基準

会社が従業員を解雇するときは、労働基準法により、30日以上前に解雇の予告をするか、30日分以上の解雇予告手当(平均賃金)を支払うことが義務付けられています。いきなり解雇されると、従業員は収入がなくなるため、30日分の時間的又は金銭的な猶予を与えることとされています。

しかし、横領等の悪質な違反行為をした者まで、このような保護をする必要はないことから、一定の基準を超える者については、労働基準監督署の認定を受けた上で、解雇予告の手続きを省略することが認められています。

そして、解雇予告の除外認定を受けられる事例が、次のように通達で列挙されています。

  1. 会社内で窃盗、横領、傷害等、刑法犯に該当する行為を行った場合
  2. 賭博、風紀紊乱等により職場の規律を乱し、他の従業員に悪影響を及ぼした場合
  3. 採用条件の要素となるような経歴、不採用の原因となるような経歴を詐称した場合
  4. 他の会社に転職した場合
  5. 2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
  6. 出勤不良で、数回にわたって注意を受けても改めない場合

これらは例示であって、限定されているものではありません。同程度に重大又は悪質なものであれば認定を受けられます。

懲戒解雇が認められる基準

懲戒解雇は解雇の一種ですので、解雇について定められている労働契約法(第16条)の規定が適用されます。

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」

また、懲戒解雇は懲戒の一種ですので、懲戒について定められている労働契約法(第15条)の規定が適用されます。

「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」

どちらも、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、無効とされます。大雑把に言うと、「懲戒解雇をされても仕方がない」と世間的、一般的に認められるような理由があれば、懲戒解雇は有効と判断されます。

また、労働契約法(第15条)で、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において」と規定されていますが、会社が懲戒処分を行う場合は、就業規則に懲戒の事由と種類を記載していることが条件とされています。

就業規則に根拠となる懲戒の事由と種類を記載していなかったり、就業規則がなければ、そもそも懲戒処分(懲戒解雇)は行えません。就業規則に記載をして、「こんなことをすれば懲戒処分が行われる」とあらかじめ従業員が知ることができれば、従業員は行わないよう注意できますが、何も記載がなければ(知ることができなければ)注意の仕様がありません。

懲戒解雇の事由の分類

懲戒解雇となり得る主な事由(違反行為)を分類すると、次のようになります。

  1. 経歴詐称
  2. 犯罪行為(横領、窃盗、傷害、脅迫等)
  3. 損害行為(機密漏洩、信用失墜等)
  4. 二重就職(兼業)
  5. 業務命令違反(異動の拒否、出勤不良等)
  6. 服務規律違反(セクハラ、パワハラ、暴言等)

就業規則には括弧内で示したように、それぞれの分類ごとに具体的な事由を列挙することになります。

前述したとおり、就業規則に該当する事由がなければ、会社は懲戒処分(懲戒解雇)を行えません。したがって、懲戒の事由は漏れなく記載することが重要です。

しかし、想定できる事由にも限界があり、想定外の出来事も起こり得ます。そのため、各号の最後に、「その他前各号に準ずる事由」といった包括的なの項目を設けておくことも大事です。この規定により、想定外の出来事にも対応できるようになります。

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