就業規則を作成し直したい
就業規則を作成し直したい
- 昔に作成した就業規則があるのですが、今の取り扱いと一致していなかったり、法改正に対応できていない部分があったりするので、改めて一から就業規則を作成し直そうと思っています。何か問題がありますでしょうか?
- 就業規則を、社員にとって不利益に変更することが目的でないのでしたら問題はないのですが、改めて就業規則を作成し直す場合は、不利益に変更することのないよう注意して下さい。
就業規則を変更する理由
就業規則を変更する理由が、規定が曖昧なので分かりやすく変更したい、今の取り扱いが就業規則に書かれていないので追加したいというように、就業規則を社員にとって不利益に変更することがなければ問題はありません。
今の取り扱いを変更しないで、就業規則の曖昧な規定を明確にするということは、元々の基準が明確ではありませんので、不利益に変更することにはなりません。
今の法律に合わせて就業規則を変更する場合も、法律で求められていることですので、問題なく変更できます。
また、労働基準監督署に届け出ていなくて、社員にも見せていない就業規則がたまにありますが、この場合は、会社に就業規則が存在していないのと同じですので、不利益変更という考えもありません。
改めて一から就業規則を作成し直す場合は、前の就業規則と見比べて、不利益に変更することのないよう注意して作成して下さい。なお、社員にとって就業規則を有利に変更することは問題ありません。
就業規則の不利益変更
就業規則を社員にとって不利益に変更することは認められにくいです。特に、賃金を引き下げるような場合はトラブルになりやすく、変更は認められにくいです。
例えば、取引先に100万円の商品を販売したにもかかわらず、「やっぱり90万円しか払えません」ということが通用しないのと同じです。
しかし、就業規則が全く変更できないことになると、会社は身動きがとれなくなりますので、一定の条件が整っている場合に限って、就業規則を不利益に変更することが認められています。
社員の個別同意
一番分かりやすい方法は、就業規則の変更について、社員全員から個別に同意を得ることです。同意が得られれば、就業規則を不利益に変更することができます。
社員から同意を得る場合は、不利益になる部分と利益になる部分を調整して提示すると良いでしょう。
就業規則の不利益変更が認められる条件
しかし、会社の規模が大きくなると、社員全員から個別に同意を得ることは困難になります。社員全員から同意が得られない場合でも、就業規則の不利益変更が認められる条件が、過去の判例で示されています。
その条件は次のとおりで、これらの条件を総合的に考慮して判断されます。
- 就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度
- 使用者側の変更の必要性の内容・程度
- 変更後の就業規則の内容自体の相当性
- 代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況
- 労働組合等との交渉の経緯
- 他の労働組合又は他の社員の対応
- 同種事項に関する我が国社会における一般的状況
これは法律ではなく、あくまでも判例ですので、全ての条件を満たしていなくても、就業規則の不利益変更が認められる場合もあります。
当事者になると客観的な判断が難しくなりますので、就業規則を不利益に変更する場合は、専門家の社会保険労務士に相談して進めるのが良いと思います。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。