法改正と就業規則
法改正と就業規則
- 就業規則の変更を伴う法律の改正は、最近では、どのようなものがありましたか?
- 平成26年4月現在で、改正が必要な内容を紹介します。
高年齢者雇用安定法の改正
就業規則(定年退職、再雇用)
これまでは、60歳で定年になった社員について、再雇用する者の基準を労使協定で定めて、誰を再雇用するか選別できました。
この仕組みが廃止され、平成25年4月1日からは、60歳以降も希望者全員を65歳になるまで継続雇用するよう義務付けられることになりました。このように就業規則を変更しないといけません。
ただし、平成25年3月31日までに、再雇用する者の基準を労使協定で定めている場合は、厚生年金の支給開始年齢以上の者に、労使協定の基準を適用することが認められています。
なお、この改正は、定年年齢を65歳に引き上げるものではありません。従来どおり60歳で定年退職として、再雇用をするという形式は変えなくても構いません。
裁判員休暇
就業規則(休暇)
平成21年から裁判員制度が始まりました。同時に、労働基準法で定められている「公民権行使の保障」として、会社は裁判員休暇を与えることが義務付けられています。
「休暇」は就業規則の絶対的必要記載事項ですので、裁判員休暇について、就業規則に記載する必要があります。
育児介護休業法の改正
就業規則(育児休業、介護休業、育児介護休業規程)
育児介護休業法については、平成22年6月30日(一部は平成24年7月1日)から、多くの改正が加えられています。これ以前にも育児介護休業法の改正がありましたが、ここでは直近の改正だけを取り上げています。
- 3歳未満の子を養育する社員は、「所定外労働の免除」、「短時間勤務」を申し出ることができるようになりました。
- 子の看護休暇は年5日取得できることになっていましたが、小学校就学前の子が1人のときは年5日、2人以上のときは年10日取得できるようになりました。
- 育児休業は原則として子が1歳になるまで取得できましたが、父母が共に育児休業を取得する場合は、子が1歳2ヶ月になるまで育児休業を取得できるようになりました。
- 育児休業は特別な事情がない限り、一子につき1回だけでしたが、父親が出産後8週間以内に取得した育児休業については、特別な事情がなくても、再度の取得が可能になりました。
- 労使協定を締結することで、配偶者が専業主婦(夫)や育児休業中である場合は本人の育児休業を拒否できましたが、この取扱いが廃止され、配偶者が専業主婦(夫)や育児休業中であっても育児休業を取得できるようになりました。
- 要介護状態の対象家族が1人のときは年5日、2人以上のときは年10日の介護休暇を取得できるようになりました。
解雇の事由
就業規則(試用期間)
労働基準法により、就業規則に必ず記載しなければならない事項として、「解雇の事由」が定められています。
試用期間中の本採用拒否は解雇と同じです。これに関する規定が不十分なケースがよく見られます。
試用期間中の解雇は、本採用後の社員より広い範囲で認められますが、就業規則で「会社が不適当と認めたときは本採用を行わない」となっているだけでは、抽象的で会社の勝手な判断が許され、解雇の事由としては何も規定していないのと一緒だと反論される余地があります。
そうなると、正社員と同程度の理由が必要とされ、正当な解雇理由とは認められにくくなってしまいます。
したがって、就業規則には、具体的に試用期間中の解雇(本採用拒否)の事由を記載する必要があります。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。