解雇と退職
解雇と退職
解雇と退職、会社を辞めることは同じなのですが、どちらに該当するかによって法律的な効果がぜんぜん違ってきます。
解雇と受け取られるようなことを言ってしまうと、面倒なことになるかもしれません。
解雇と退職、どう違うのでしょうか。
会社の辞め方
社員が辞めていく場合、大きく分けると解雇と退職に分けられます。
「解雇」は、会社側が労働契約を一方的に解約することを言います。
- 「辞めろ!」「クビだ!」「明日から来るな!」と言えば解雇になります。
「退職」は、解雇以外によって労働契約を解約することを言います。
- 一般的には、社員が退職届や退職願を提出して退職します。
- これには定年退職や休職期間の満了による退職なども含まれます。
労働契約とは、「社員が働く」←→「会社が給料を支払う」という関係をいいます。
退職勧奨
上のようにストレートに「辞めろ!」ではなく、「辞めてくれないか?」と言っただけでは解雇にはなりません。これは退職勧奨と呼ばれるもので、退職を勧めているだけと解釈されます。
よくあるトラブルですが、「辞めてくれないか?」という言葉を会社からの解雇通知と受け取って、出社しなくなることがあります。解雇するつもりがない場合は、「解雇ではない」とハッキリ言っておきましょう。
そして、社員が退職届や退職願を提出してくれば、退職が成立します。
しかし、社員から「辞めません」と言われれば、それで終わりです。会社は退職を勧めたけど、社員は応じなかったということで、会社は退職を強要することはできません。
退職願と退職届
少し話がずれますが、ドラマなどで辞表を出すときに、「退職願(ねがい)」となっていることがあります。
間違いではないですが、文字通り解釈すると、「退職したいんですけど...」とお願いしている段階で、その段階ではまだ退職が成立していません。人事権のある人が「分かった」と承認して初めて、退職(労働契約の解約)が成立することになります。
したがいまして、「辞める」と決心した場合は、本当は「退職届(とどけ)」が正解です。この場合は、会社の承認はいりません。人事権のある人に退職の意思を伝えることによって退職が成立します。
ただし、裁判例ではどちらも退職の申し出として、余り区別はされていないようです(退職の意思が伝われば退職が成立します)。
解雇と退職の効果
話を元に戻しますが、後になって、退職や解雇の撤回(無効)を求めてきた場合、退職と解雇では、法律的な意味合いが違ってきます。
解雇の場合
解雇においては、「その解雇は無効だ!」というのが代表的な例です。
解雇をする場合は、解雇されても仕方がないという程度の正当な理由が必要で、正当な理由のない解雇は無効と判断されます。そして、裁判所はなかなか解雇を有効と認めません。詳しくは解雇トラブルの防止をご覧下さい。
そして、裁判で「解雇無効」と判断されると、解雇した時点にさかのぼって、その間の賃金の支払いを命じられます。
退職の場合
退職においては、「やっぱり退職するのはやめます」というのが代表的な例です。
「辞めてくれないか?」と言って、社員が退職届(退職願)を出したということは、そこに社員の退職の意思が入っていることになります。
提出された退職届(退職願)が有効か?撤回できるか?という問題で、解雇のように正当な理由があったかどうかは問われません。
また、裁判所においても、嫌がらせや脅迫等がない限り、退職の効力を覆すことは余りありません。
社員が退職する際は、退職届(退職願)をもらってください。
雇用保険(失業給付)
退職か解雇か、どちらに該当するかで、雇用保険(失業給付)の内容が異なります。離職理由が自己都合退職の場合は、3ヶ月経ってからでないと、失業給付がもらえません。
一方、離職理由が解雇の場合は、すぐに失業給付がもらえて、給付金額も多いです。なお、退職勧奨に応じた場合は、雇用保険においては解雇と同様の扱いになります。
また、助成金の関係もあります。それぞれの助成金の種類によって異なりますが、解雇の実績があると、雇入れ関係の助成金の受給が難しくなります。
(2004/2作成)
(2014/5更新)