解雇と退職の違いとは?退職勧奨・失業給付・退職届の法律知識

解雇とは

解雇とは、会社から一方的に労働契約を解約するものを言います。

解雇は更に、懲戒解雇と普通解雇に分類されます。懲戒解雇は、従業員が横領をしたり、機密漏洩をしたり、重大な違反行為をしたときに、制裁として行うものです。

一方、普通解雇は、重大な違反行為を伴わないケースで、雇用を継続できない事情(会社が指示した業務を行えない状況)が生じた場合に行うものです。一般的には、心身の不調、能力不足、勤務態度不良、協調性の欠如等が解雇事由として挙げられます。

特定の従業員を対象とするものが多いですが、経営上の問題で、事業の継続が困難な状況になった場合に行う整理解雇(リストラ)も、普通解雇に該当します。

そして、解雇に該当する場合は、労働基準法、労働契約法、育児介護休業法によって、次のような制限が設けられています。

解雇予告(労働基準法)

労働基準法第20条によって、従業員を解雇するときは、30日以上前に予告をするか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払うことが義務付けられています。

退職の場合はて準備ができますが、解雇の場合は、会社が一方的に行いますので、準備が難しい。その準備のために、30日の期間又は賃金の猶予を与えることになっています。

解雇制限(労働基準法)

労働基準法第19条によって、業務上の傷病による休業期間プラス30日、産前産後休業の期間プラス30日は、解雇が禁止されています

これらの期間は再就職が困難ですので、休業に専念できるように、原則として、解雇が禁止されています。

育児・介護休業等を理由とする解雇(育児介護休業法)

育児介護休業法第10条及び第16条によって、育児休業や介護休業の取得等を理由にして、解雇をすることが禁止されています。

正当な解雇理由(労働契約法)

労働契約法第16条によって、解雇は、客観的に合理的な理由がなくて、社会通念上相当と認められない場合は、無効になることが定められています。

会社が解雇をする場合は、一般常識で考えて「解雇されても仕方がない」と認められるような理由が必要ということです。従業員が解雇の無効を主張して、それが認められると、会社は解雇した時点にさかのぼって、賃金の支払いを命じられます。

失業給付の優遇(雇用保険法)

自己都合で退職する場合は、原則として1ヶ月(以前は3ヶ月でした)の給付制限期間が設定されますが、解雇された場合は、給付制限期間を待たずに失業給付を受給できます。また、支給額(所定給付日数)も増額される場合があります。

また、助成金の関係もあります。助成金の種類によって異なりますが、解雇の実績があると、雇入れ関係の助成金の受給が難しくなります。

退職とは

退職に該当する事由としては、次のようなものがあります。従業員から一方的に労働契約を解約するもの(自己都合退職)や一定の事実が到来したときに自動的に労働契約を終了するものは退職に該当します。

  1. 自己都合退職
  2. 定年退職
  3. 休職期間の満了
  4. 契約期間の満了
  5. 死亡
  6. 役員就任

退職と解雇の判別

退職に該当する場合は、解雇のような制限はありません。法律的な意味合いが大きく異なりますので、退職か解雇かどちらに該当するのかという問題になることがあります。

会社にとっては、解雇に関連する規制を受けませんし、後から解雇の無効を主張される心配もありませんので、退職扱いにできた方が都合が良いです。

従業員にとっては、解雇予告の規定が適用されますし、失業給付が有利になりますので、解雇扱いにできた方が都合が良いです。場合によっては、解雇の無効を主張することも考えられます。

一旦は退職の意思表示をしたけれども、後になって撤回するケースがあります。そのときに、退職届や退職願があれば、退職の意思を示す重要な証拠になります。会社が脅迫や騙したりして提出させたものでなければ、退職の効力を覆すことは余りありません。

退職届・退職願の有無が重要な証拠になりますので、従業員が退職するときは提出してもらってください。

退職勧奨(肩たたき)とは?解雇との違い

会社から従業員に、「辞めろ」ではなく、「辞めてくれないか?」と言っただけでは解雇にはなりません。これは退職勧奨と呼ばれるもので、退職を勧める行為と解釈されます。

よくあるトラブルですが、「辞めてくれないか?」という言葉を会社からの解雇通知と受け取って、出社しなくなることがあります。解雇するつもりがない場合は、「解雇ではない」と明確に伝える必要があります。

そして、従業員が退職届や退職願を提出すれば、退職が成立します。しかし、従業員が「辞めません」と言えば、それで終わりです。会社は退職を勧めたけど、従業員は応じなかったということで、会社は退職を強要することはできません。

(2004/2作成)
(2026/3更新)


社会保険労務士 木下貴雄

執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。メールを用いた関連サービスは20年以上の実績があり、全国の中小零細企業を対象に、これまで900社以上の就業規則の作成・変更に携わってきました。