解雇予告

解雇とは

解雇とは、会社が一方的に労働契約を解約することを言います。

自己都合退職や合意による退職と違って、解雇は社員本人の意思が反映されないため、突然の解雇は社員の生活に大きな影響を及ぼします。

したがって、労働者を保護するために、労働基準法では解雇の予告を義務付けたり、解雇を制限したりする規定が存在します。

解雇予告とは

会社が社員を解雇するときは、少なくとも30日前に解雇の予告をしないといけません。この30日というのは、出勤日ではなく暦日でカウントします。

例えば、今日が6月1日とすると、翌日の6月2日から数えて30日目となる7月1日以降の日を指定して、「○月○日付で解雇する」と予告をする必要があるということです。

解雇予告手当

解雇をするときは、少なくとも30日前に解雇の予告をすることが原則ですが、30日分以上の平均賃金を支払って、解雇の予告を省略することが認められています。

言い方を変えると、30日以上前に解雇の予告を行わない場合は、30日分以上の平均賃金を支払わないといけません。解雇の予告に代えて支払う平均賃金のことを「解雇予告手当」と言います。

なお、解雇予告手当の支払は、解雇の通告と同時に支払うべきものとされています。

平均賃金

平均賃金とは、直近の3ヶ月の賃金総額(各手当及び割増賃金も含みます)を、その対応する3ヶ月の暦日数で割った金額を言います。

合計で30日分以上

解雇予告の期間が30日に満たない場合に、解雇予告手当(平均賃金)と合わせて30日分以上とする方法も認められています。

例えば、6月1日に解雇の予告を行って、6月25日付で解雇する場合は、解雇予告の期間は24日になります。このときに、30日に不足する6日分以上の解雇予告手当(平均賃金)を支払えば、法律に適した対応となります。

解雇予告が不要な社員

解雇予告が不要な社員として、労働基準法では次の4つが定められています。

  1. 日雇労働者
  2. 2ヶ月以内の期間を定めて雇用された者
  3. 季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて雇用された者
  4. 試用期間中の者

ただし、これらに該当しているとしても、それぞれ次の場合は解雇予告が必要です。

  1. 日雇労働者で、雇用して1ヶ月を超えている場合
  2. 2ヶ月以内の期間を定めて雇用された者で、契約期間を超えている場合
  3. 季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて雇用された者で、契約期間を超えている場合
  4. 試用期間中の者で、入社日から14日を超えている場合

14日というのは、出勤日ではなく暦日でカウントします。

ところで、試用期間については誤解が多いようです。試用期間中であっても、入社日から15日目以降になると解雇予告が義務付けられます。試用期間中は解雇予告がいらないと思っている方が多いようですが間違いです。

また、パートタイマーやアルバイトであっても解雇予告の規定は適用されますので、上の4つのケースに当てはまらない場合は、解雇予告が義務付けられます。

解雇予告が不要とされるケース

解雇予告が不要な社員は上で説明したとおりですが、他にも解雇予告が不要とされるケースがあります。労働基準監督署の認定(解雇予告の除外認定といいます)を受けた場合です。

具体的には次のケースに該当する場合は、解雇予告は行わなくても構いません。

  1. 天災事変等が原因で事業の継続が不可能となった場合
  2. 社員の不都合な言動によって解雇する場合

天災事変等が原因で事業の継続が不可能となった場合

地震などの天災事変等のやむを得ない事由により事業の継続が不可能となった場合は、解雇予告の手続きが不要になります。ただし、労働基準監督署の認定(解雇予告の除外認定といいます)を受けることが条件になっています。

事業の継続が不可能となった原因として、地震などの天災事変が例示されていますが、他には火事による会社の焼失等が該当するとされていて、経営環境の悪化を原因とするような場合は該当しないとされています。

また、事業の継続が不可能ということですので、事業の縮小や一時休業の場合は認定を受けることができません。

社員の不都合な言動によって解雇する場合

一般的には就業規則で定めている懲戒解雇に該当するような言動があった場合です。

この場合も、会社の判断で解雇予告を省略できるのではなく、労働基準監督署の認定(解雇予告の除外認定といいます)を受けることが条件になっています。そして、解雇予告の除外認定を受けられるケースが、通達により例示されています。

  1. 職場内での盗取、横領、傷害などの刑法犯に該当する行為のあった場合
  2. 賭博等により職場規律を乱し、他の従業員に悪影響を及ぼす場合
  3. 採用のときに重要な要素となるような経歴を詐称した場合
  4. 他へ転職した場合
  5. 2週間以上の無断欠勤で、出勤の督促にも応じない場合
  6. 出勤不良で、数回にわたって注意を受けても改めない場合

これらは例示されているもので、これに値するような重大で悪質な行為については、解雇予告除外認定を申請すれば認められます。個別の事案については、最寄りの労働基準監督署にお問い合わせ下さい。

なお、解雇予告の除外認定を受ける前に解雇を行うと、解雇予告手当の支払義務が生じますので、解雇を行う前に解雇予告の除外認定を受けないといけません。

(2009/7更新)
(2014/5更新)