解雇制限

解雇とは

解雇とは、会社が一方的に労働契約を解約することを言います。

解雇は、自己都合退職や合意による退職と違って、社員本人の意思が反映されませんので、突然会社に解雇されると、生活に大きな支障が生じます。

このような労働者を保護するために、労働基準法では解雇の予告を義務付けたり、解雇を制限する規定が存在します。

解雇制限とは

労働基準法でいう解雇制限とは、一定期間の解雇を禁止する規定です。この期間として、次の2つの期間が定められています。

  1. 業務上の傷病により休業する期間とその後30日間
  2. 産前産後休業をしている期間とその後30日間

業務上の傷病により休業する期間とその後30日間

仕事が原因(業務災害)によるケガや病気で会社を休んでいる期間と、その後の30日間は解雇できません。

例えば、仕事中にケガをして10日間療養のために休業した場合は、その後の30日間の解雇が制限され、合計で40日間は解雇が禁止されます。

なお、ケガ等の症状が回復して職場に復帰し、通院により治療している期間は解雇制限の対象にはなりません。療養のために休業している(会社を休んでいる)期間が対象になります。

また、解雇制限の対象になるのは、仕事が原因(業務災害)によるケガや病気に限られますので、私生活でのケガや病気は該当しません。通勤災害によるケガ等も解雇制限の対象にはなりません。

産前産後休業をしている期間とその後30日間

産前産後休業をしている期間と、その後の30日間は解雇が制限されます。

産前産後休業から引き続いて育児休業をする場合は、産前産後休業の期間は、一般的には余り意識されていないようです。

ここでいう産前産後休業とは、労働基準法第65条で定められている産前産後休業です。つまり、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)と産後8週間の期間で、この期間とその後30日間の解雇が禁止されます。

解雇制限の例外

解雇制限の期間中は絶対に解雇ができないのか、というとそうではありません。労働基準法では、次の2つの例外が定められています。

  1. 打切補償を行った場合
  2. 天災事変等が原因で事業の継続が不可能となった場合

これらに該当する場合は、解雇制限が解除されて、例外的に解雇できるようになります。

打切補償を行った場合

打切補償というのは、労災保険で定められている制度で、仕事が原因によるケガや病気で会社を休んで、3年経っても治らないときに、会社が1200日分の平均賃金を支払うというものです。

この打切補償を行えば、解雇制限が解除されて解雇できるようになります。しかし、平均賃金が1万円とすると1200万円になりますので、実際に打切補償を行うケースは多くはないようです。打切補償を行うかどうかは、会社の判断によります。

また、打切補償を行う方法以外にも、解雇制限が解除される場合があります。

同様に、仕事が原因によるケガや病気で会社を休んで、3年経った以降に、社員が労災保険から傷病補償年金を受けることになった場合です。傷病補償年金を受けることになったときは、打切補償を行ったものとみなされて、解雇制限が解除されます。

天災事変等が原因で事業の継続が不可能となった場合

地震などの天災事変等のやむを得ない事由により事業の継続が不可能になった場合は、解雇制限が解除されて解雇できるようになります。ただし、この場合は労働基準監督署の認定を受けることが条件になっています。

事業の継続が不可能となった原因として、地震などの天災事変が例示されていますが、他には火事による会社の焼失等が該当するとされていて、経営環境の悪化を原因とするような場合は該当しないとされています。

また、事業の継続が不可能ということですので、事業の縮小や一時休業の場合は認定を受けることができません。いずれにしても、労働基準監督署の認定が必要となりますので、その際は労働基準監督署にお尋ね下さい。

懲戒解雇に該当する言動があったとしても解雇できない

解雇予告については、懲戒解雇に該当する言動があって、労働基準監督署の認定を受けることができれば、例外的に解雇予告の手続きは不要になります。しかし、解雇制限については、そのような例外規定はありません。

したがって、懲戒解雇に該当する言動が発覚したとしても、解雇制限の期間中は解雇できません。また、整理解雇を実施する場合も、解雇制限の期間中は解雇できません。

(2009/7作成)
(2014/6更新)