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時事通信社事件 事件の概要

通信社の従業員が、約1ヶ月間の連続する年次有給休暇の申し入れをしました。

申し入れに対して、会社は、担当者は本人1人だけで1ヶ月も不在になると業務に支障があること、代替勤務できる者の確保が困難なことを挙げて、2週間ずつ2回に分けて欲しいと回答しました。

そして、前半部分の2週間の年次有給休暇は認めて、後半部分の年次有給休暇は業務の正常な運営を妨げるものとして時季変更権を行使しました。

しかし、従業員は、これを無視して就業しませんでした。

そのため、会社は、業務命令に違反したことを理由にして譴責処分を行って、賞与を減額して支給しました。

そこで、従業員は、会社が行った時季変更権の行使は要件を満たしていないと主張して、譴責処分の無効と減額された賞与の支払いを求めて提訴しました。

時事通信社事件 判決の概要

年次有給休暇が長期になればなるほど、会社は代替勤務者を確保することが困難になり、事業の正常な運営に支障が生じる可能性が高くなる。

また、年次有給休暇が長期になると、その期間中の業務量の程度や代替勤務者を確保できるかどうか、他の従業員の休暇の状況など、事業の正常な運営を妨げるかどうかを判断する諸事情を正確に予測することが困難になる。

このため、従業員には、業務計画や他の従業員の休暇予定等について、事前の調整を図る必要性が生じる。

従業員が会社とこのような調整をしないで、長期で連続する年次有給休暇の時季指定を行ったときは、休暇が事業運営にどのような支障をもたらすか、休暇の時期と期間をどの程度修正、変更するかという、時季変更権の行使については、会社にある程度の裁量的判断の余地を認めざるを得ない。

ただし、会社の時季変更権の行使に関する裁量的判断は、年次有給休暇の権利を保障している労働基準法第39条の趣旨に沿う合理的なものでなければならない。

また、会社の裁量的判断が、労働基準法第39条の趣旨に反し、休暇を取得させるための状況に応じた配慮を欠いているときは、労働基準法第39条第5項但し書きの「事業の正常な運営を妨げる場合」には該当せず、時季変更権の行使は違法と判断するべきである。

本件においては、長期休暇の時期及び期間について会社と十分な調整をしないで時季指定を行ったこと、会社は理由を挙げて2週間ずつ2回に分けて欲しいと回答した上で後半部分のみ時季変更権を行使して相当の配慮をしたこと等から、会社が行った判断は合理的と言える。

解説−有給休暇の時季変更権

長期の連続した年次有給休暇を取得すると、業務の運営に支障が生じやすいことは明らかです。

このため、従業員には会社と事前の調整を行うことが求められ、従業員が事前の調整を怠ったときは、時季変更権の行使について、会社には、ある程度の裁量的判断の余地があることが示されました。

つまり、長期の年次有給休暇については、短期のものより、時季変更権が認められやすくなります。

ただし、会社は、できる限り従業員が指定した時季に休暇を取得できるよう、状況に応じた配慮をすることが求められます。この配慮を怠ったときは、時季変更権を行使しても認められません。

この事件では、1ヶ月の年次有給休暇の申出に対して、前半部分を認めていたことが、配慮をしているものと認められました。

なお、従業員が年次有給休暇の時季指定を行う前に、会社と調整をして、具体的な期間を特定したときは、会社の時季変更権は放棄されたものと考えられます。