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弘前電報電話局事件 事件の概要

会社が定めた勤務割では、17日は出勤日となっていたのですが、この日に年次有給休暇の時季指定を行いました。

これに対して、上司は、当日に予定されていた成田空港反対現地集会に参加して、違法行為に及ぶ恐れがあると考えました。

上司はこれを阻止するために、当日の代替勤務を申し出ていた他の従業員を説得して、その申出を撤回させました。

これにより、17日は出勤しなければ最低配置人員を欠くことになるとして、従業員に対して、年次有給休暇の時季変更権を行使しました。

しかし、従業員はその日に出勤しなかったため、会社は欠勤を理由にして戒告処分にするとともに、1日分の賃金をカットしました。

そこで、従業員は、戒告処分の無効と賃金の支払いを求めて提訴しました。

弘前電報電話局事件 判決の概要

年次有給休暇は労働基準法で認められた権利で、その実効を確保するために付加金の支払いや刑事罰の制度が定められ、また、年次有給休暇の時季指定は従業員が行うことになっている。

このことから、労働基準法は、会社に対して、できるだけ従業員が指定した時季に休暇を取れるよう状況に応じた配慮をすることを要請しているものとみることができる。

勤務割で定めていた出勤日に、年次有給休暇の時季指定をした場合であっても、会社は、従業員が指定した時季に休暇を取れるよう状況に応じた配慮をすることが要請される。

労働基準法第39条第5項但し書きの「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するかどうかの判断に当たって、代替勤務者の配置の難易は判断の一要素となる。特に、勤務割による勤務体制がとられている会社においては、重要な判断要素となる。

したがって、会社が通常の配慮をすれば、勤務割を変更して代替勤務者を配置できる状況にもかかわらず、会社が配慮をしないことによって、代替勤務者が配置されないときは、事業の正常な運営を妨げる場合には当たらない。

本件については、あらかじめ代替勤務を申し出ていた従業員がいて、その従業員が職務を代行することについて支障は認められないから、代替勤務者の配置が容易であったことは明らかである。

また、会社が通常の配慮をすれば、代替勤務者を配置できる状況にもかかわらず、年次有給休暇の利用目的によって、会社が配慮をしないで時季変更権を行使することは、利用目的を考慮して年次有給休暇を与えないことと同じで許されない。

以上より、事業の正常な運営を妨げる場合には該当しないため、会社が行った時季変更権の行使は無効である。

解説−有給休暇の時季変更権

時季変更権の行使に際して、会社に対して、できるだけ従業員が指定した時季に年次有給休暇を取得できるよう状況に応じた配慮をすることが要請されることを明らかにしました。

また、会社が状況に応じた配慮をしているかどうかは、労働基準法第39条第5項但し書きの「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するかどうかを判断する際の要素と位置付けました。

そして、この裁判では、代替勤務者がいたにもかかわらず、状況に応じた配慮を怠って、時季変更権を行使したものとして、会社の主張は認められませんでした。

また、年次有給休暇をどのように利用するかは、従業員の自由です。年次有給休暇の利用目的によって配慮をしないで時季変更権を行使しても認められません。