試用期間の延長|就業規則の規定例
試用期間の延長
- 試用期間を延長する場合があるかもしれませんので、就業規則に、それを想定した規定を追加してもらえますか?
- 就業規則に規定を追加して、試用期間を延長することは可能ですが、いくつか注意点があります。
試用期間の延長
就業規則に、試用期間の延長について規定するべきかどうか、社会保険労務士の間でも意見が分かれると思います。当事務所としては、これまでの経験や裁判例から、トラブルが発生するリスクを比較すると、試用期間の延長に関する規定は設けない方が良いと考えています。
試用期間を延長する場合は、クリアしなければならない条件や注意点がいくつかありますので、実際に試用期間を延長したときはトラブルになりやすいです。
就業規則の規定
試用期間中に解雇する場合と本採用後に解雇する場合を比較すると、試用期間中の解雇の方が有効と認められやすいです。従業員にとっては不安定な状態ですので、会社が自由に試用期間を延長することはできません。原則的には、本人から同意を得る必要があります。
ただし、就業規則に「試用期間を延長することがある」といった規定を設けていれば、これを根拠にして試用期間を延長できます。試用期間を延長することを想定している場合は、そのような規定を追加する必要があります。
試用期間を延長する理由
試用期間は従業員にとっては不安定な状態ですので、特別な理由がなければ、試用期間を延長することはできません。例えば、本採用の基準を満たしていない、就業規則に違反する言動があった、本採用の適否を判断する材料が不十分だった等の理由が考えられます。
また、従業員に対して、試用期間を延長する理由、改善するべき事項、本採用の判定基準、及び延長する期間について、説明する必要があります。丁寧に説明することによって、本採用を拒否したときに、本人が納得しやすくなります。
延長する期間
無期限に延長することは認められませんので、試用期間を延長する場合は、延長する期間を具体的に定める必要があります。
試用期間の延長を繰り返していると、その都度、延長をする理由が認められにくくなります。また、通算して試用期間が1年以上になると、無効と判断される可能性が高くなります。
延長後の解雇が認められる条件
試用期間を延長して、本採用することになれば、特に問題は生じないと思います。本採用を拒否(解雇)する場合に、問題が生じやすいです。
延長前の試用期間中の事実のみを理由として、解雇することはできません。試用期間を延長することになった理由が解消されなかったり、延長後の試用期間中に別の解雇事由が発生したりといった事実が求められます。
就業規則に試用期間の延長の規定を設けて、「本採用の適否の判断ができなければ、試用期間を延長すればいい」と安易に考えていると、漫然と試用期間が過ぎてしまいます。
試用期間は延長しないと決めていれば、その期間内で、従業員の言動や能力を意識して観察することになって、本採用の適否の判断がしやすくなると思います。
試用期間の設定方法
以上のとおり、当事務所では、就業規則に試用期間の延長の規定を設けるより、本来の試用期間で本採用するかどうかを判断した方が良いと考えています。
試用期間の長さについては、労働基準法では特に決まっていませんが、3ヶ月としている会社が約7割、1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月としている会社がそれぞれ約1割です。従業員の適格性を判断するという試用期間の趣旨から考えると、6ヶ月が上限で、それを超える期間が必要な理由(半年経っても見極められない理由)は考えにくいです。
なお、労働基準法による解雇予告の期間を考えると、できれば30日以上前に、本採用(解雇)の判断をしたいので、試用期間を3ヶ月とする場合は、入社して2ヶ月後に判断することになります。
これまでの経験から、2ヶ月で判断が難しい会社については、試用期間を最初から6ヶ月として、入社して5ヶ月後に判断することにしても構いません。
また、試用期間が6ヶ月では長過ぎるということであれば、4ヶ月や5ヶ月とすることも可能です。珍しいですが、問題はありません。
就業規則で試用期間を4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月と定めて、問題がなさそうな者については、試用期間を3ヶ月に短縮して、本採用の時期を前倒しする方法も可能です。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。