始業時刻前の出勤命令|就業規則の規定例
始業時刻前の出勤命令
- 始業時刻の30分前に出勤することを就業規則に記載したいのですが、問題ないでしょうか?
- 問題がありますので、就業規則にそのような記載はするべきではありません。
始業時刻前の出勤命令
朝礼、当日の作業の打合せ、掃除、ラジオ体操等を行ったり、従業員が出勤していることを確認したりするために、始業時刻前に出勤するよう義務付けたいと思われるかもしれません。
しかし、就業規則に始業時刻の30分前に出勤することを規定して、従業員に義務付けていると、始業時刻前の30分間は労働時間(早出残業)と判断されて、時間外勤務手当(残業手当)の支払いが義務付けられます。
就業規則に「始業時刻前の30分間は労働時間(早出残業)とみなさない」と規定したり、労働時間(早出残業)とみなさないことについて従業員から同意を得たとしても、実際の取扱いに基づいて判断されます。
つまり、会社の指揮命令下にある時間は労働時間と判断されて、労働基準法に基づいて、時間外勤務手当の支払い義務が生じます。会社が指示をして、朝礼、当日の作業の打合せ、掃除、ラジオ体操等を行わせていると、その時間は労働時間と判断されます。
また、就業規則に具体的な出勤時刻を記載すると、その時点から会社の指揮命令下に入って、労働時間と判断される可能性が高くなります。
したがって、就業規則の記載は、始業時刻に業務を開始できるように出勤することを義務付ける程度にしておいて、始業時刻(業務を開始する時刻)の他に、出勤時刻は記載しない方が良いです。
なお、就業規則に出勤時刻を記載しないで、従業員に始業時刻の30分前に出勤するよう口頭で指示をして義務付けていると、同じように、時間外勤務手当(残業手当)の支払いが義務付けられますので注意してください。
もし、始業時刻前の作業(出勤)が欠かせない場合は、始業時刻及び終業規則を繰り上げたり、時間外労働として残業手当(時間外勤務手当)を支払うことを検討するべきです。
ところで、始業時刻は業務を開始する時刻、出勤時刻は会社に出勤する時刻を言います。タイムカードは出勤時刻を記録するものですので、始業時刻とは異なります。
しかし、タイムカードの出勤時刻と実際の始業時刻に15分以上の時間差があると問題になりやすいので、従業員には、始業時刻の直前、終業時刻の直後に打刻するように指導してください。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。