欠勤する権利|就業規則の規定例
欠勤する権利
- 頻繁に会社を休む従業員がいるのですが、本人が「今日は休みたい」と言ってきたときは、会社は認めないといけませんか?
- その頻度や状況によります。常識の範囲内であれば認めないといけませんが、限度を超える場合は拒否できます。
当日の年次有給休暇の申請
風邪や発熱等で体調が悪いため、当日の朝に会社に連絡をして、年次有給休暇を取得するケースがあると思います。
年次有給休暇の申請は、本来は前日までに行うことが、労働基準法上のルールになっています。そのため、当日の朝(当日以降)に年次有給休暇を申請してきたときは、会社は年次有給休暇の取得を拒否できます。
前日までに従業員が年次有給休暇を申請したときは、会社は認めないといけません。当然ですが、取得理由によって認めたり、認めなかったりすることはできません。
しかし、当日以降の申請については、会社は拒否できますので、認める場合に、取得理由を限定したり、必要な手続きを定めたりすることができます。
例えば、急病の場合に限定して、当日以降に年次有給休暇を申請する者に対して、医療機関のレシートや領収書の提出を求めることができます。就業規則に、当日以降の年次有給休暇の申請について定めて、このような手続きを義務付けていれば、虚偽の取得を予防できます。
欠勤は契約違反
年次有給休暇や就業規則で定められている他の休暇を取得しないで、会社を休んだときは、欠勤扱いになります。また、会社に連絡をしないで休んだときは、無断欠勤になります。
特に時間給の学生アルバイトに多いですが、従業員の中には、「欠勤した日の賃金は支払われないのだから、欠勤をするのは本人の自由だ」と、欠勤をする権利があると考える者がいます。しかし、欠勤や遅刻・早退は、契約違反です。
会社と従業員は、労働契約の関係にあります。労働契約とは、「従業員は会社の指示どおり働いて、会社はその対価として賃金を支払う」という契約です。
定められた日時に出勤して、会社の指示どおり働くことは義務です。欠勤をすると、その義務を履行できませんので、契約違反ということになります。従業員は出勤をする義務はありますが、欠勤をする権利はありません。
また、二日酔いや体調不良で出勤して、会社の指示どおり働けない場合も、契約違反になります。そのような場合は、従業員に帰宅を命じることができます。
欠勤を理由とする解雇
労働契約は人との契約ですので、体調不良が原因で会社を休むことは十分想定されます。常識で考えられる範囲内であれば、欠勤は許容しないといけません。
体調不良のまま仕事をして体調が悪化すると、会社は健康配慮義務を怠ったと指摘されますので、体調不良が原因で休む場合は、従業員に医療機関の受診を勧めることが重要です。
しかし、欠勤が繰り返されると業務に支障が生じますので、個別の状況によっては、正当な解雇事由になり得ます。就業規則の解雇事由として、業務に耐えられないとき、欠勤を繰り返したとき、といった事項があることを確認してください。
ただし、欠勤を繰り返したときに、いきなり解雇をしても通常は認められにくいです。正当な理由があって欠勤したかもしれませんし、会社が注意や指導をしていないと欠勤は黙認されていると思い込んでいるかもしれません。
また、私傷病が原因で欠勤が長期間に渡る場合に、就業規則に休職の規定を設けている会社では、休職を適用することになります。
休職事由等に該当しないで、欠勤の頻度が増えたときは、まずは、欠勤は契約違反であることを明らかにして、就業規則の服務規律や懲戒(制裁)の規定を見せて、注意や指導を行います。欠勤する理由を確認することも重要です。
そして、正当な理由がなく、欠勤を繰り返す者については、始末書を提出させるなど、懲戒処分を行って、違反行為であること、改善されなければ解雇することを認識させます。あらかじめ就業規則の懲戒処分の事由に、当てはまる事項があることを確認してください。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。