社内恋愛|就業規則の規定例
社内恋愛を禁止できるのでしょうか?
- 社内恋愛を禁止したいと思っています。就業規則に社内恋愛を禁止する規定を設けても良いですか?
- 社内恋愛はプライベートのことで、直接業務に支障が生じるものではありませんので、会社が禁止することはできません。
社内恋愛の禁止
社内恋愛を禁止することを就業規則に記載するのであれば、解雇の事由や懲戒の事由に挙げることが考えられます。
労働基準法(第89条)によって、就業規則には、解雇の事由と制裁(懲戒)に関する事項を記載することが定められています。解雇や制裁(懲戒)の事由とする場合は、あらかじめ就業規則に記載しておく必要があります。
また、労働契約法(第16条)によって、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定されています。
会社が解雇をする場合は、一般常識で考えて、「解雇されても仕方がない」と認められるような理由が必要で、それが認められない場合は、解雇は無効になります。
更に、労働契約法(第15条)によって、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」と規定されています。
懲戒(制裁)についても同様に、「懲戒(制裁)を受けても仕方がない」と認められるような理由が必要で、それが認められない場合は、懲戒(制裁)は無効になります。懲戒(制裁)については、譴責(戒告)、減給、出勤停止、諭旨退職、懲戒解雇のように段階がありますが、それぞれに見合った程度の理由が必要ということです。
そして、社内恋愛について、配置転換が難しい中小零細企業においては、人間関係がこじれると、業務に支障が生じる可能性があることから、禁止したいと考えるかもしれません。
しかし、恋愛はプライベートのことですので、会社の業務とは直接関係のないことです。社内恋愛によって、会社に損害が生じたり、会社の信用を失墜したりして、直結する場合は、会社は禁止できますが、そうではありません。
したがって、社内恋愛が発覚したとしても、そのことを理由にして、会社が解雇や懲戒をすることはできません。不倫であっても同じです。
直接、社内恋愛を禁止することはできませんが、職場を離脱したり、個人情報を漏洩したり、関係が悪化して、セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントに及んだり、職場の秩序を乱したり、職場で実害が生じていて、就業規則の他の違反行為に該当する場合は、その規定に基づいて、会社が懲戒処分を行うことは可能です。
以上のとおり、社内恋愛(のみ)を理由にして、会社は解雇や懲戒をすることはできませんので、就業規則に社内恋愛を禁止する規定は設けるべきではないと思います。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。