フジ興産事件(就業規則の効力要件)

フジ興産事件 事件の概要

会社は就業規則(旧就業規則)を作成して、従業員代表の同意を得た上で、昭和61年に労働基準監督署に届け出ていました。

その後、平成6年4月からは、旧就業規則を変更した新就業規則を実施することにして、同年6月に従業員代表の同意を得た上で、労働基準監督署に届け出ました。

これと前後して、平成5年9月から平成6年5月までの間に、ある従業員について、得意先の担当者の要望に応じないでトラブルを発生させたり、上司の指示に対して反抗的な態度をとったり、上司に対して暴言を吐いたりする行為が見られました。

そのため、職場秩序を乱したこと等を理由として、平成6年6月に、新就業規則に基づいて、会社はこの従業員を懲戒解雇しました。

しかし、この懲戒解雇をする以前は、この従業員が勤務をする職場には就業規則が備え付けられていませんでした。

そこで、従業員は、懲戒解雇の根拠となる事実が発生した時点においては、就業規則が存在しなかったことから、懲戒解雇の無効を主張して提訴しました。

フジ興産事件 判決の概要(最高裁 平成15年10月10日判決)

会社が従業員を懲戒処分するときは、あらかじめ就業規則に懲戒の種類及び事由を定めていることが必要である。

また、就業規則が法的規範としての性質を有するものとして、拘束力を生じるためには、その内容を従業員に周知していることが必要である。

フジ興産事件 解説

就業規則が拘束力を生じるためには、その就業規則を従業員に周知していることが条件として示されました。

また、懲戒処分をするときは、懲戒の種類と、その事由を定めていなければならないことも示されました。

このケースでは、就業規則を労働基準監督署に届け出た事実は確認できましたが、就業規則を従業員に周知していたかどうかは確認できませんでした。

就業規則は作成するだけでは不十分で、従業員が見たいと思ったときに、いつでも見られる状態にしておかないといけません。就業規則を職場に備え付けていれば拘束力が生じます。

なお、就業規則の内容を従業員に教え込んだりすることまでは求められません。就業規則を職場に備え付けていて、それを見るかどうかは従業員の自己責任です。

就業規則に関する代表的な裁判例