出張時の宿泊費と交通費の定め方|就業規則の規定例
出張時の宿泊費と交通費の定め方
- 出張旅費については、日当以外で言いますと、宿泊費と交通費が主な経費になると思います。出張旅費規程(就業規則)では、宿泊費と交通費はどのように規定すれば良いでしょうか?
- 基本的には、実際の取扱いに合わせて、出張旅費規程(就業規則)を作成することになります。出張に関して、トラブル事例をいくつか紹介しておきますので、これらに対応できるよう規定しておくと良いでしょう。
宿泊費
出張時の宿泊費の支払方法は、次の2通りがあります。
- 宿泊代金の実費を支給する
- 宿泊代金の実費に関係なく、一律の金額(1泊につき8,000円等)を支給する
これまでに当事務所で就業規則(出張旅費規程)を作成してきた経験で言いますと、宿泊費は実費を支給している会社が大半です。
宿泊代金の実費を支給
この場合は、勝手に高価な宿泊施設を選ばれると困りますので、何らかの方法で制限しないといけません。制限をする方法としては、次のような方法が考えられます。
- 宿泊施設について、事前に会社(上司)の承認を義務付ける
- 宿泊施設の予約と宿泊代金の支払を会社が行う
- 宿泊費の上限金額を設定する
宿泊費の上限金額を設定する場合は、全ての従業員に対して一律でも構いませんし、役職によって差を設けても構いません。また、出張する地域ごとに、上限金額を設定するケースもあります。
これまでに当事務所で就業規則(出張旅費規程)を作成してきた経験で言いますと、役員や役職者であっても、1泊につき15,000円以下で設定している会社が大半です。一般従業員については、1泊につき8,000円から9,000円で設定している会社が多いです。
宿泊代金の実費を支給する場合に起こりやすい問題を1つ紹介しておきましょう。宿泊施設によって、宿泊代金と食事代金が区別されている場合があります。このときに、食事代金は誰が負担するのかということで揉めることがあります。トラブルを防止するために、食事代金を会社が負担するのか負担しないのか、出張旅費規程に規定しておいた方が良いでしょう。
また、宿泊代金の実費を確認するために、宿泊施設の領収書を提出させるよう規定しておくことも大事です。
一律の金額を支給
宿泊代金の実費に関係なく、1泊につき8,000円等の決まった金額を支給する場合です。
出張をしたときに日当を支給しないで、宿泊費を一律の金額で支給することにして、本人の考えで、外食費等に回したければ、安い宿泊施設を選んで自由に浮かせても良いとしている会社もあります。
また、この場合は、一律の金額を支給することが原則ですので、基本的にどこに宿泊をしたとしても、一律の金額を支払って処理します。しかし、場合によっては、宿泊代金を要しないケースがあります。例えば、
- 研修のための出張で、研修費用の中に宿泊代金が含まれている
- 他社から招待を受けて出張をする場合に、宿泊施設が用意されている
- 電車、船、自動車で宿泊をする
- 会社の施設に宿泊をする
- 従業員の知り合いの家に宿泊をする
このような場合に、宿泊費を不支給にしたり、減額したりする場合は、出張旅費規程に明確に規定しておく必要があります。
この場合の支給額の設定方法については、上の上限金額の考え方と同じで、全ての従業員に対して一律でも構いませんし、役職によって差を設けても構いません。また、出張する地域ごとに、上限金額を設定するケースもあります。金額についても、ほぼ同じです。一般従業員については、1泊につき8,000円から9,000円で設定している会社が多いです。
交通費
出張に伴う交通費は、会社が実費を負担します。これ以外の方法で、出張旅費規程(就業規則)を作成したことはありません。
基本的には、会社と出張先の往復の交通費を支給するのですが、移動日や移動の時間帯によって、従業員の自宅から直行又は自宅に直帰するケースがあります。そのような場合も、実費を支給することを定めておいた方が良いでしょう。
また、役員に限って、電車のグリーン車や飛行機のビジネスクラスの利用を認めることを出張旅費規程(就業規則)に規定する場合もあります。認めるかどうかは会社の自由ですが、認める場合は一定のルールとして、その範囲等を定めておいた方が良いでしょう。
カラ出張
実際には出張に行っていないにもかかわらず、数年間に渡って、不正に出張旅費を請求していたことが発覚したというケースがあります。いわゆる「カラ出張」と呼ばれる行為で、横領に当たります。悪質さの程度によっては、就業規則の懲戒解雇の事由に該当することも考えられます。
また、カラ出張には、実際には日帰りで済ませておいて、宿泊したことにして宿泊日当や宿泊費を請求するという手口もあります。出張した事実を確認するために、一律の金額で宿泊費を支給する場合も、宿泊施設の領収書の提出を義務付けておくべきでしょう。
別のトラブル事例として、必要でないにもかかわらず、本人の勝手な判断で出張をして問題になるケースもあります。出張をする場合は、事前に所属長の承認を要することを定めておくべきです。また、その際は、移動のルートも提出させて、あらかじめ無駄な費用が発生しないか確認することも大事です。