出張時の宿泊費と交通費|就業規則の規定例
出張時の宿泊費と交通費
- 従業員に出張を命じた場合の宿泊費と交通費は、どのように決定して支給すれば良いでしょうか?
- 交通費は、最短経路の実費を支給する方法が一般的です。宿泊費は、会社によって支給額の決定方法が異なります。
出張時の宿泊費と交通費
出張をした場合の日当については、こちらのページで解説しています。
交通費の支給額
会社から従業員に、業務として出張を命じた場合は、出張に要する費用は必要経費として会社が負担しないといけません。
当事務所で出張旅費規程(就業規則)を作成するときは、交通費については、原則的には、最も経済的な経路・移動手段で移動した場合の実費を支給することにしています。これ以外の方法で、出張旅費規程を作成したことはありません。
仮に、実費以外の方法で支払って、不足額を従業員に負担させると、従業員から反発されますし、経費の処理方法として問題があります。反対に、交通費の名目で実費を超える額を支払う方法も、合理的ではありません。
通常は、会社と出張先の往復の交通費の実費を支給しますが、移動する日や時間帯によっては、従業員の自宅から直行又は自宅に直帰するケースがあります。そのような場合も、実費を支給することを出張旅費規程で定めておいた方が良いでしょう。
最も経済的な経路・移動手段で移動した場合の実費の支給を原則としていますが、役員に限って、電車のグリーン車や飛行機のビジネスクラスの利用を認めている会社もあります。
認めるかどうかはそれぞれの会社の自由ですが、認める場合は出張旅費規程(就業規則)を作成して、その範囲等を定めておいた方が良いでしょう。
宿泊費の支給額
会社から従業員に、業務として宿泊を必要とする出張を命じた場合は、会社は宿泊に要する費用を負担しないといけません。出張時の宿泊費の支給額の決定方法は、次の2通りがあります。
- 宿泊代金の実費を支給する
- 宿泊代金の実費に関係なく、一律の金額(1泊につき8,000円等)を支給する
これまで当事務所が就業規則(出張旅費規程)を作成してきた経験で言いますと、宿泊費は1.の実費を支給している会社が8割以上です。
1.の実費を支給する方法については、勝手に高級な宿泊施設を選ばれると困りますので、次のような方法で制限をする必要があります。
- 宿泊費の上限金額を設定する
- 宿泊施設は本人が選択して、事前に会社(所属長や総務担当)の承認を義務付ける
- 宿泊施設は会社が指定して、会社が宿泊施設の予約と宿泊代金の支払いを行う
宿泊費の上限金額を設定する場合は、全ての従業員に一律で設定しても構いませんし、役職によって差を設けても構いません。また、出張する地域ごとに、上限金額を設定する方法もあります。
また、宿泊代金の実費を支給するとして、それに食事代金を含むかどうかで問題になることがあります。朝食込みの宿泊プランは別にして、宿泊施設によっては、宿泊代金と食事代金が区別されている場合があります。
トラブルを防止するために、宿泊代金と別になっている食事代金について、会社が負担するのか負担しないのか、出張旅費規程に規定しておいた方が良いでしょう。
更に、宿泊代金の実費を確認するために、出張旅費規程に、宿泊施設の領収書を提出させるよう規定しておくことも重要です。
1.の実費を支給する方法が合理的ですが、2.の1泊につき○円と定額で支給する方法は、会社にとっては事務処理が簡単で、従業員にとっては浮かした額を小遣いにできます。この方法で宿泊費を実際の相場より少し高額で設定して、出張時の日当は支給しないで、使い道を本人に委ねている会社もあります。
デメリットとしては、翌日の業務に支障が生じるような宿泊施設を従業員が選択する可能性があります。
また、次のように、出張の種類によっては、宿泊代金を負担しないケースがあります。
- 研修のための出張で、研修費用に宿泊代金が含まれている
- 他社から招待を受けて出張する場合に、宿泊施設が用意されている
- 電車、船、自動車で宿泊をする
- 会社の施設で宿泊をする
- 従業員の知人宅で宿泊をする
このような場合に、宿泊費を不支給にしたり、減額したりする場合は、出張旅費規程に明確に規定しておく必要があります。
カラ出張
実際には出張していないにもかかわらず、架空の出張を申請して、不正に交通費や宿泊費を受給する“カラ出張”と呼ばれる行為があります。また、実際には日帰りで出張をして、宿泊したことにして、不正に宿泊費を受給するという手口もあります。
カラ出張は横領に該当しますので、懲戒処分の対象になります。
出張した事実を確認するために、一律の金額で宿泊費を支給する場合も、会社が必要と判断したときは、宿泊施設の領収書やレシートの提出を求めることを記載するべきです。毎回は求めないとしても、このように記載していれば、不正行為の防止に繋がります。
また、明らかな違反行為とは言いにくいですが、必要でないにもかかわらず、本人の勝手な判断で出張をして問題になることがあります。
出張をするときは事前に出張予定表を作成して、出張を終えたときは出張報告書の提出をルールにしておけば、トラブルを予防できます。下からサンプルをダウンロードできるようにしました。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。