出張時の日当の決め方|就業規則の規定例

出張時の日当の決め方

  • 出張旅費規程を作成しようと思っていますが、出張したときの日当は、いくらに設定すれば良いでしょうか?
  • 出張時の日当の額については、何のために支給するのかという目的を基準にして決定してはいかがでしょうか。

出張時の日当の決め方

出張時の日当の支給義務

宿泊を伴う出張を命じた従業員に対して、日当を支給している会社が多いですが、日当を支給していない会社もあります。

従業員が出張した場合に日当を支給することは、法律では義務付けられていませんので、日当を支給するかどうかは、それぞれの会社の判断で自由に決められます。

言うまでもありませんが、出張に伴って、業務のために実際に掛かった交通費や宿泊費等については、必要経費として会社が負担しないといけません。

出張時の日当の額を定めて従業員に支給する場合は、通常は出張旅費規程を作成します。この出張旅費規程は賃金規程と同様に、就業規則の一部となります。

なお、就業規則については、労働基準法(第89条)によって、労働時間や賃金等に関する事項を記載することが定められていますが、「当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項」も記載することになっています。

したがって、出張に関するルールを設定する場合は、出張に関する事項を就業規則に記載しないといけません。就業規則(本則)に記載しても構いませんが、通常は賃金規程と同様に、就業規則(本則)から切り離して、出張旅費規程として作成する方法が一般的です。

そして、就業規則(出張旅費規程)に、出張時の日当に関する記載をすると、労使間の契約内容として成立しますので、会社は就業規則(出張旅費規程)に基づいて、日当の支払が義務付けられます。

反対に、就業規則に出張時の日当に関する記載がなければ、その会社には日当に関するルールが存在しないということで、従業員から日当の支払を求められることはありません。

出張時の日当の決め方

出張時の日当は、全員一律の額でも構いませんし、役職に応じて支給額に差を設けても構いません。本来、日当を支給する義務はありませんので、支給額は会社が自由に決められます。

そして、当事務所に就業規則の作成を依頼された会社から、「日当の相場は、いくらぐらいですか?」と相談を受けることがあります。

そのときは、「当事務所で出張旅費規程を作成する場合は、2,000円〜3,000円の範囲で設定している会社が多いです。」「日当を支給する目的を基準にして決定してはいかがでしょうか。」と回答しています。

日当を支給する目的は、会社によって異なりますが、次のような目的が挙げられます。基本的には、従業員の不満解消のために支給するケースが多いです。

誰もが出張に行きたがるようでは、高額過ぎます。誰もが出張を嫌がるようでは、低額過ぎます。日当はその中間の額で設定することが望ましいと思います。

残業時間の幅によって差が生じると思いますが、当事務所で作成した経験で言うと、日当は2,000円前後が標準で、役職者や役員でも5,000円以下で設定している会社が多いです。傾向として、会社の規模が大きくなると、日当は高額になります。

出張期間中の休日

出張が1日2日で終わらないで長期間になると、出張中に休日を含む場合があります。

その休日に勤務をした場合は、当然、休日労働として賃金と日当を支給しますが、勤務をしなかった場合に、日当を支給するかどうかで問題になります。

勤務しなかった休日を日当の支給対象外とするのであれば、出張旅費規程(就業規則)に、日当を支給しないことを定めておく必要があります。ルールを明確にするために、支給する場合も、支給することを記載しておいた方が良いでしょう。

なお、勤務しなかった休日に日当を支給するかどうかは、どちらでも構いません。日当を支給する目的に照らして決めてください。

日帰り日当

宿泊を伴う出張をした場合に限って、日当を支給している会社が多いですが、日帰りで出張した場合も、日当を支給している会社があります。

ただし、日帰り出張に対して日当を支払う会社でも、近所の客先に出掛けるような場合は支払わないと思いますので、日帰り日当を支給する基準を具体的に定める必要があります。

日帰り日当を支給する基準の例として、次のような場所に出張する場合が考えられます。

これは例ですので、このとおりにする必要はありません。2つの条件を組み合わせる方法もあります。


執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。

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