アルバイトの健康診断|就業規則の規定例

アルバイトの健康診断

  • アルバイトにも健康診断を受診させないといけませんか?
  • 原則的には、アルバイトにも健康診断を受診させないといけませんが、例外的に、受診を省略できる場合があります。

労働安全衛生法の健康診断

健康診断については、労働安全衛生法(第66条)によって、「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。」と規定されています。

そして、定期健康診断については、厚生労働省令(労働安全衛生規則)によって、「事業者は、常時使用する労働者に対し、1年以内ごと1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。」と規定されています。

アルバイト、パートタイマー、契約社員、嘱託従業員、正社員といった呼び方(雇用形態)は、それぞれの会社で定義しているものです。労働安全衛生法においては、全て“労働者”として取り扱われます。

上の厚生労働省令(労働安全衛生規則)の規定を見ると、「常時使用する労働者」に対して、定期健康診断を実施することが義務付けられています。通達によって、次の両方の要件を満たす者が、「常時使用する労働者」に該当することが示されています。

  1. 1年以上雇用している者、又は、1年以上雇用することを予定している者(期間を定めないで雇用する者も含みます)
  2. 1週間の労働時間が、通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分3以上の者

この両方の要件を満たす者については、健康診断を実施する必要があります。アルバイトやパートタイマー等の雇用形態は関係ありません。個人ごとに判断されます。

2.について、比較の基準となる「通常の労働者」は、通常は正社員が当てはまります。したがって、正社員の1週間の所定労働時間が40時間とすると、1週間の労働時間が30時間以上のアルバイトやパートタイマー等は要件を満たすことになります。

また、通達では、4分3未満であっても、1.の要件を満たしている場合は、2分1以上の者(1週間の労働時間が20時間以上の者)に対して、健康診断を実施することが望ましいとされています(義務ではありません)。

また、厚生労働省令(労働安全衛生規則)によって、雇入時の健康診断として、「事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、医師による健康診断を行わなければならない。」と定められています。

雇入れ時の健康診断についても、「常時使用する労働者」が対象になっています。雇入れ時の健康診断の対象者は、定期健康診断の対象者と同じです。

労働安全衛生法に基づいた取扱いは、以上のとおりです。

就業規則と健康診断

労働基準法(第92条)によって、「就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。」と規定されています。

つまり、就業規則の内容は、労働基準法や労働安全衛生法で定められている内容(最低基準)を満たしている必要があります。

また、労働契約法(第12条)によって、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」と規定されています。

要するに、個別に健康診断を実施しないことを労働契約で明示していたとしても、就業規則や労働安全衛生法によって、健康診断を実施することになっている場合は、健康診断を実施しないといけません。

アルバイトやパートタイマーに適用する就業規則を確認してください。健康診断に関する規定が、どのようになっているのかが重要です。

「1週間の所定労働時間が正社員の4分の3未満の者、又は、1年以上雇用する見込みがない者については、健康診断を省略することがある」といった規定がある場合は、その規定を根拠として、該当する者の健康診断を省略できます。

一方、健康診断を実施することが定められていて、上のように省略や適用を除外する規定がない場合は、全ての者(アルバイトやパートタイマー等)に対して、健康診断の実施が義務付けられます。健康診断の実施は、従業員にとっては権利であって義務でもあります。

会社として、全員に健康診断を受診させたいのであれば、省略や適用を除外する規定を設ける必要はありません。しかし、短期雇用の学生のアルバイト等がいて、全員に受診させる必要がない場合は、上のような規定を追加してください。


執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。

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