健康診断の受診拒否|就業規則の規定例
健康診断の受診拒否
- 健康診断を受診するよう言っても、受診しない従業員がいるのですが、会社はどう対応すれば良いでしょうか?
- 就業規則に、従業員は健康診断を受診する義務があることを規定していれば、会社は業務命令として従業員に健康診断を受けさせることができます。
健康診断の受診拒否
労働安全衛生法によって、会社は、毎年1回定期健康診断を実施することが義務付けられています。
「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。」(労働安全衛生法第66条第1項)
「事業者は、常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。」(労働安全衛生規則第44条第1項)
一方、従業員についても、労働安全衛生法によって、会社が行う定期健康診断を受診する義務があることが定められています。
「労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行う健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行うこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。」(労働安全衛生法第66条第5項)
就業規則を作成していなかったり、就業規則に健康診断の受診義務があることを規定していなくても、この労働安全衛生法の規定を根拠にして、会社は従業員に受診を命じることができます。
しかし、就業規則に受診する義務があることを規定している方が従業員に説明しやすいですし、応じない場合に懲戒処分を行うことを考えると、就業規則に受診義務の規定を設けるべきです。
また、会社には、従業員の健康に配慮する義務があります。従業員が健康診断を受診しないで、会社がそれを放置して(“黙認”と判断されます)、万一、過重労働等の業務が原因で病気を発症したり、病状が悪化したりすると、会社は健康配慮義務を怠っていたと判断されます。そうなると、従業員から損害賠償を請求される可能性があります。
健康診断を受診しない従業員を放置・黙認することは問題がありますので、就業規則に基づいて、始末書を提出させる等の懲戒処分を行うべきです。そこまでしておけば、会社は安全配慮義務を怠っていた訳ではない、できることは行っていたと判断されますので、会社の損害賠償責任が免除又は軽減されます。
しかし、会社が懲戒処分を行ったとしても、従業員の健康管理はできませんので、根本的な解決にはなりません。
従業員が健康診断の受診を拒否する理由を確認した上で、健康管理は大事なこと、健康診断の拒否は業務命令違反であること、就業規則に違反する行為であること等を従業員に説明してください。
また、会社が指定する医療機関ではなく、他の(主治医がいる)医療機関で受診をして、その健康診断の結果を会社に提出する方法も認められています。この場合の受診費用は本人負担としても構いません。作成をする就業規則には、このような方法もあることを記載しておくと良いでしょう。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。