ワーク・ライフ・バランスとは

ワーク・ライフ・バランス

最近、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が注目されています。

ワーク・ライフ・バランスとは、噛み砕いて言うと、仕事一辺倒の生活から、私生活も充実させながら仕事をしましょうということです。

ワーク・ライフ・バランスは、「コストが掛かるだけで会社にメリットがない」、「中小企業にそんな余裕はない。無理だ」という意見もあります。本当でしょうか?

ワーク・ライフ・バランスのメリット

採用の武器に

欲しい人材を思い通りに採用できていますか?この先、労働人口が減少することは確実ですので、採用は今よりもっと難しくなります。そして、この影響を一番受けるのは中小企業です。

価値観の多様化とよく言われますが、仕事も私生活もどちらも大切と考える人が増えています。特に若い世代には、こうした考えが広がっています。

ところが、実際には長時間労働を強要したり、休暇を取りにくくしたり、私生活を犠牲にしてでも会社に尽くして欲しいと考える経営者は少なくありません。そして、出産や育児、介護が必要となった社員に冷ややかな対応をして退職させるケースもあります。

このような人材の中に優秀な方が埋もれています。このような方をターゲットにして採用活動を行ってみませんか。「私生活も大切にする会社です」とPRすることで、他社と差別化でき、退職を強要された人や若い世代に魅力的に映ります。

例えば、単に「出産休暇制度あり」とするのではなく、「出産休暇や育児休業、看護休暇、介護休暇など制度が充実していますので安心して働けます」といった表現にすれば、社員の私生活も大切にしているという姿勢が伝わります。

また、「誰からも求められる人材と企業」、「誰からも選ばれない人材と企業」の二極化が進んでいます。私生活の犠牲を強いる企業は、誰からも選ばれない企業になってしまう恐れがあります。

定着率の向上

退職されると、欠員を補充するための採用コストや教育コストが掛かります。1人退職すると、100万円ぐらいは掛かっているのではないでしょうか。

人材を流出させないための対策を講じることが重要です。ワーク・ライフ・バランスに取り組むことで、辞めたくはないけど家庭の事情で仕方なく辞めるという事態を防げます。

生産性が高まる

例えば、育児短時間勤務を行うケースでは、保育所に迎えに行く時間までに仕事を終えないといけません。そうなると、毎日、段取り良く効率的に仕事をすることが求められ、生産性が高まります。

また、チームで業務を行う体制を整えて、多能工化を進めるのも良いでしょう。担当者が休んだときや人手が足りないときに、他の社員がサポートできますので、同じ成果を維持することができます。

多能工化を進める際は、同時に作業の標準化を行うことになります。日々行っている作業を書き出して、重複している作業をなくしたり、非効率な作業を改善したりできれば、作業の効率化が進みます。

このように、ワーク・ライフ・バランスを取り入れることで、生産性を高めることに繋がります。

ワーク・ライフ・バランス制度

では、ワーク・ライフ・バランスとして、どのような制度があるのでしょうか?

様々な選択肢を用意することは有効ですが、中小企業ではたくさんを制度化するのは難しいでしょう。

でも、その反面、社員との距離が近いという利点がありますので、本人と話し合って個々で決定するのも良いと思います。実際、中小企業の方が柔軟に利用されているという調査結果もあります。

フルタイムだけでなく、柔軟な働き方を認める

活用できる人材の幅が広がりますので、より多くの人材を確保できるようになります。

休暇制度を柔軟にする、充実する

社員の復帰を歓迎する

会社がワーク・ライフ・バランスに取り組んで、「在籍したままで、気兼ねなく休んでもいいよ」と言っても、出産や介護等を理由にして退職する社員はいます。

そのような社員の復帰を促します。在籍していたので、復帰後の働き振りが予測できて安心ですし、採用、教育コストはほとんど掛かりません。

いつでも復帰を歓迎することを伝えて、定期的に会社から連絡を取ることが大切です。

ワーク・ライフ・バランス制度のコストは?

例えば、育児休業を取得したとしても、会社にコストは掛かりません。この間は無給で構いませんし、社会保険料(健康保険と厚生年金の保険料)も雇用保険料も掛かりません。社員には育児休業給付金が支給されますので、社員にも喜ばれます。

一度、導入しようと考えている制度を提供したときに、実際に掛かるコストを計算して下さい。恐らく、採用コストと比較すれば大したコストにはならないはずです。

また、会社から思いやりのある取り計らいを受けると、いつかは会社に恩返しをしたいと従業員満足が高まり、一所懸命働いてくれるはずです。そうなれば簡単に元は取れます。

気兼ねなく制度を利用できる職場にする

出産休暇や育児休業、看護休暇などは法律で定められている制度ですが、取得することで肩身が狭くなったり、取得をためらって退職したりしないよう啓蒙します。

該当する社員がいなくても、「気兼ねなく取得して下さい」、「結婚しても両立できますよ」とメッセージを発信しておくことが大切です。

管理職の役割

ワーク・ライフ・バランスを成功させるためには管理職のマネジメント能力が問われます。管理職はメンバーとコミュニケーションを取りながら、一人一人の状況を把握した上で仕事を振って、成果を上げないといけません。

また、家庭の事情を考慮することは単なるわがままではない、というメンバー間の同意も欠かせません。良い意味での割り切りが必要となるでしょう。

(2010/1更新)
(2014/5更新)