社会保険制度の概要

社会保険制度の概要

社員が入社すると、健康保険や厚生年金、雇用保険、所得税、住民税など、様々な名目で賃金から控除することになります。

特に新卒者は、「どうしてこんなに引かれるんだ」と不満に思っているかもしれません。

それぞれの制度を理解していなければ、より強く思うことでしょう。

また、会社が社会保険料の半額を支払っているのに、その事実を知らない社員もいます。

社会保険制度の概要をお伝えします。

健康保険と厚生年金

加入基準

健康保険と厚生年金の加入基準は同じで、「1日の労働時間と1ヶ月の労働日数がともに、正社員のおおむね4分の3以上のとき」は加入義務があります。

1日の労働時間と1ヶ月の労働日数が“ともに”ですので、どちらか一方が4分の3未満になっていれば、加入要件を満たさなくなります。週30時間が加入基準の目安になります。

また、健康保険に加入している40歳以上の社員は、介護保険に加入することになります。

保険料の仕組み

健康保険と厚生年金の保険料は、標準報酬月額に応じて決定されます。

標準報酬月額は、毎年、4月、5月、6月の賃金(残業手当や通勤手当等も含みます)の平均額を算出して、例えば、3ヶ月の平均額が188,200円だったとすると、標準報酬月額は190,000円になります。

この標準報酬月額は、その年の9月から翌年の8月まで使用されます。平成26年4月現在の保険料は、次のようになっています。

こちらから社会保険料額表がダウンロードできます

なお、新しく入社した社員については、勤務実績がありませんので、入社後の残業手当や通勤手当等を含めた賃金額を想定して、標準報酬月額を決定します。

保険料の控除

健康保険等の保険料は1ヶ月単位で掛かるのですが、毎月末日が基準日になります。つまり、末日に在籍している場合は、その月の保険料が掛かります。末日に在籍していなければ、その月の保険料は掛かりません。

例えば、4月末日で退職したときは、4月末日は在籍していますので、4月分の保険料が掛かります。一方、4月25日で退職したときは、4月分の保険料は掛かりません。

また、入社する場合も同様に、4月30日に入社したときは、4月分の保険料が1ヶ月分掛かります。4月1日入社でも同じです。

そして、保険料の納付期限は、翌月末日です。当月分(4月分)の保険料については、通常は、翌月(5月)に支払う賃金から控除して、会社負担分とまとめて納付します。

健康保険の給付

業務外のケガや病気があったときは、3割負担で治療を受けられます。

また、業務外の病気やケガのために会社を休んだときは傷病手当金が、高額な治療費が掛かったときは高額療養費が、出産したときは出産育児一時金と出産手当金が、死亡したときは葬祭料が、支給されたりします。

厚生年金の給付

65歳になると老齢年金が支給されます。60歳代前半で在職老齢年金や特別支給の老齢厚生年金が支給される場合もあります。

また、障害があったときに支給される障害年金や、生計を維持していた方が亡くなったときに支給される遺族年金という制度もあります。

介護保険の給付

介護認定を事前に受けることによって、訪問介護や通所介護、通所リハビリテーション、福祉用具の貸与といった介護サービスを受けられます。

児童手当の給付

中学校を卒業するまでの児童を養育する者に対して、月額15,000円又は10,000円(一定の所得がある場合は月額5,000円)の児童手当が支給されます。

雇用保険

加入基準

1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上雇用する見込みがあるときは、雇用保険に加入する義務があります。

当初は31日以上の雇用が見込まれない場合であっても、その後、31日以上の雇用が見込まれることになった場合は、その時点から加入しないといけません。

1週間の所定労働時間が20時間未満のときは、加入義務はありません(加入できません)。

保険料の仕組み

雇用保険は、健康保険等と違って、実際の賃金額(残業手当や通勤手当等も含みます)に、雇用保険料率を掛けた金額が保険料になります。平成26年度の雇用保険の保険料は、次のとおりです。

一般の事業建設業
社員負担賃金額×0.5%賃金額×0.6%
会社負担賃金額×0.85%賃金額×1.05%

雇用保険の給付

会社を退職して、失業状態になったときは、失業給付を受けられます。

また、育児休業や介護休業をしたとき、60歳以降で賃金が低下したときに、賃金の一部が補償されたり、教育訓練に対して補助が行われたりする制度があります。

労災保険

加入基準

労働時間や労働日数に関係なく、採用した社員は全員加入することになります。ただし、健康保険や雇用保険のように、入社時に加入手続きを行う必要はありません。

保険料の仕組み

労災保険は、雇用保険と同様に、実際の賃金額に事業の種類ごとに異なる労災保険料率(0.25%〜8.9%)を掛けた金額が保険料になります。社員の負担はなく、会社が全額を負担します。

毎年、前年の4月1日から当年の3月末日までの間に支払った全社員分の賃金を集計して、雇用保険の保険料と一緒に納付します。

労災保険の給付

仕事中のケガや病気通勤途中のケガや病気があったときは、無料で治療が受けられます。

また、それによる休業、障害、死亡に対する賃金補償が受けられる制度もあります。

社会保険料の負担合計

以上の社会保険の保険料を合計すると、一般の事業では、賃金に対して、社員負担は約15%、会社負担は約16%となっています。つまり、会社は、賃金の約16%の負担が、賃金とは別に必要になるということです。

採用時には見えにくい費用ですが、これらも想定して賃金額を決定して下さい。採用時に決めた賃金を引き下げることは難しいので、余り高く設定することのないよう注意して下さい。

(2014/6作成)