通勤災害、こんなときは?
通勤災害
社員が自宅と会社の間を、寄り道しないで往復しているときにケガをした場合は、普通は「通勤災害」として、労災保険の給付が行われます。
しかし、「通勤災害ではない」と判断されると、労災保険の給付は受けられません。
微妙なケースが結構ありますので、1つずつ見てみましょう。
通勤災害、こんなときは?
労災保険とは、「業務上災害」又は「通勤災害」により、労働者がケガをしたり、病気になったりしたときに、必要な保険給付を行う制度です。
そして、労災保険上の通勤とは、「労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復すること」と定義されています。
どんなときに「通勤」と判断され、どんなときに「通勤ではない」と判断されるのか、過去に裁判で争われた具体的なケースで見てみましょう。
就業に 関し |
業務終了後に社内で、レクリェーション活動、サークル活動、 労働組合活動等をした後に帰宅する場合 (ただし、2時間程度の長時間となる場合は除く。) | 通勤 |
昼休みに昼食を食べに帰宅するときの往復 | 通勤 | |
住居 | 早出や長時間の残業、交通ストライキのために、 臨時に用いる旅館等から出勤する場合 | 通勤 |
友人宅でマージャンをして、翌朝その場所から出勤する場合 | 通勤外 | |
合理的 な経路 |
会社に届け出ている経路及び通常これに代替することが 考えられる経路 | 通勤 |
道路工事その他やむを得ない理由があって迂回する場合 | 通勤 | |
共働きの人が、託児所等に子供を預けに行く場合 | 通勤 | |
近道をするため、電車の線路内を通った場合 | 通勤外 | |
合理的 な方法 |
無免許運転、泥酔運転 | 通勤外 |
免許証不携帯 | 通勤 |
通勤の逸脱、中断
通勤経路から逸れることを「逸脱」、通勤を途中でやめることを「中断」と言います。この「逸脱」や「中断」に該当すると、その最中とその後の往復は、通勤と認められません。
通勤の途中で、
- 映画を見に行ったり
- お酒を飲みに行ったり
- デートをしたり
といった行為が逸脱、中断となります。ただし、通勤の途中で「近くの」
- 公衆便所に行ったり
- タバコや雑誌を購入したり
- ジュースを立ち飲みしたり
といった行為も逸脱や中断と考えられそうですが、このような行為は「ささいな行為」として、その最中もその後の往復も、通勤と認められます。
また、逸脱や中断が、「日常生活上必要な行為であって、やむを得ない理由により行うための最小限度のもの」である場合は、その最中は通勤と認められませんが、通常の通勤経路に戻った時点から通勤と認められます。
具体例として、次の行為が「日常生活上必要な行為」として定められています。
- 日用品の購入、散髪等
- 職業訓練や学校(仕事に必要なもの)
- 選挙権の行使
- 病院での診察や治療
(2002/12作成)
(2014/5更新)