パワーハラスメント(パワハラ)とは

パワーハラスメント(パワハラ)

最近、パワーハラスメント(パワハラ)という言葉が注目され始めています。

いわゆる上司による嫌がらせのことですが、嫌がらせは昔からありました。

しかし、新しい言葉が成立したことの意味は大きく、裁判で一般化されたり、法制化が進められたり、これから社会に広く浸透していくことが予想されます。

セクシャルハラスメント(セクハラ)は裁判例も多く、法制化され、多くの企業でその対策が進んでいますが、パワハラについては対策がほとんど講じられていないのが現状です。しかし、対策を講じる必要がある点ではセクハラと同じです。

パワーハラスメントの定義

パワーハラスメントの名付け親である岡田康子氏によると、パワハラを次のように定義しています。

  1. 職権などのパワーを背景にして
  2. 本来業務の適切な範囲を超えて
  3. 継続的に
  4. 人格と尊厳を傷付ける言動を行い
  5. 働く環境を悪化させたり、雇用不安を与えること

パワハラの事例

セクハラについては、これに該当する事例が一般化されていますが、パワハラについてはまだそこまで進んでいません。以下はパワハラに該当するであろう事例です。

裁判での判断基準

パワハラとしての判断基準ではありませんが、従来からある職場での嫌がらせについては、

がポイントになります。実際の判例では、

等について慰謝料の支払を命じています。

使用者責任がある

パワハラは上司と部下の当事者だけの問題ではありません。パワハラ行為があった場合、上司本人に責任が問われるのは当然ですが、会社にもその責任が及びます。これはセクハラも同じです

会社には、社員が働きやすいよう職場環境に配慮する義務(職場環境配慮義務)があり、これを放置したり、適切に対処していなければ、会社にも損害賠償が請求されることになります。

パワハラによる悪影響

パワハラ行為が行われると、被害者は慰謝料や損害賠償を求めて会社を訴えてくる可能性があります。解雇や退職、うつ病等の発症をキッカケに、今後は増えてくるでしょう。

訴訟になると、お金と時間が掛かりますが、それ以上に大きな問題があります。

パワハラが蔓延している職場では、社員のヤル気が萎え、生産性も低下します。そして、「こんな会社に将来はない」と見切りを付けた社員が退職し、転職できない人だけが会社に残ります。そうなると、会社は右肩下がりになることは容易に想像できます。

パワハラの対策

パワハラ行為が発覚したときは、事実を確認して、その内容や被害の程度、再発防止の観点から、懲戒処分や降格、配置転換等を行います。

管理職になるような方は、ストレスに対する抵抗力が強く、自分を基準にして部下を指導していることがあります。大抵は本当に仕事熱心なのでしょう。

事実確認をして行き過ぎた言動をとがめても、「自分もこうやって育てられた」「奮起を促すために言っただけ」「ただの指導だ」と、本人がパワハラ行為と自覚していない場合があります。

セクハラと同じようにパワハラも、相手がどう感じたかが大事な要素となります。また、パワハラは業務の延長で行われますので、見極めが難しいですし、セクハラより発生する危険性が高いと言えます。

自分の経験からよかれと思って部下にしてあげることも、その部下にとっては迷惑かもしれません。また、ストレスの抵抗力には大きな個人差があります。これを自覚することが大切です。

被害者を非難

セクハラでもそうですが、会社が加害者である上司を守って、被害者を非難するケースがあります。経営者が管理職を処分すると、自分に責任が跳ね返ってくるのではないかと恐れているのかもしれません。

こうなると、組織風土がおかしい方向に向かっていると言えるでしょう。組織風土の改善は容易ではありませんが、経営トップが意識を変える必要があります。

就業規則の規定例

予防策の1つとして、就業規則の服務規律に、パワハラについての規定を追加しておくと良いでしょう。就業規則に基づいて迅速に処分ができ、周知・教育すれば発生の予防にもなります。

【規定例】職務権限を背景にして、本来の業務の適正な範囲を超えて、精神的苦痛を与えるような言動を行ってはならない。

(2009/10更新)
(2014/5更新)