不正行為の防止(不正のトライアングル)

不正行為

不正行為の代表例として横領と呼ばれるものがあります。

特に、取引先に請求書を偽造させる等して、外部の者と共謀して行われる横領は発見が困難で、被害金額も大きくなります。

また、近年では、個人情報の漏えいが大きな問題となっていますし、不正行為にはこれら以外にも様々なものがあります。

中小企業では、不正行為に対する認識が不足していたり、不正行為を未然に防止する仕組みや早期発見をする仕組みが整っていない所が多いようです。

一回、不正行為が起きると...

横領の多くは、ちょっとした出来心で会社のお金に手を付けることから始まります。しかし、不正を発見する仕組みが整っていないと、不正を直ぐに見付けることができません。

そして、不正が発覚しないことが分かると、不正行為を繰り返し、会社の被害金額がどんどん膨らんでいきます。

不正のトライアングル

不正は、次の3つの条件が揃ったときに起きるという「不正のトライアングル」という説があります。

  1. 不正を行う「動機・プレッシャー」がある
  2. 不正を行うことができる「機会」がある
  3. 不正を行っても自分を「正当化」できる

横領のケースに適用すると、

  1. 金銭的な問題を抱えていて、
  2. 横領をしても見付からないと認識していて、
  3. 自分には横領しても許される理由がある

場合に発生します。

動機・プレッシャーの一例

社員に目標の達成を強く求め過ぎるとプレッシャーになり、不正が行われる可能性が高まります。

機会の一例

中小企業では社員数が限られていますので、1人でいくつもの業務を担当し、また、長年勤務している社員を過度に信頼して任せ切っているケースがよくあります。

第三者のチェックが入らないと、不正が行われる可能性が高くなってしまいます。

正当化の一例

会社に対する不満から、「これぐらいのことは構わない」と考えて自分を正当化するもので、会社の組織風土や法令順守の状況に左右されます。

不正行為の防止

「不正のトライアングル」として、3つの条件が揃ったときに不正が起きると説明しましたが、逆に言うと、3つのうち1つでも欠けると不正は起きないとされています。

つまり、不正を防ぐためには、どれか1つを排除すれば良いということです。

まずは、「機会」から取り組むと効率的です。不正を行っても確実に発覚すると社員が認識すれば、不正を起こすことは考えにくいです。

機会

機会をなくすためには、次のような取り組みが考えられます。

いくつか例示しましたが、厳しくし過ぎると弊害が生じます。例えば、業務が停滞したり、社員が萎縮したり、「自分たちは信用されていない」と経営者に対して不信感を抱いたり、ルールを守ること自体が目的になったりします。

人が行うことですので、どれだけルールを厳格にしたとしても、不正を完全になくすことはできません。過去の不正や想定される不正による損害を考慮して、これらとバランスを取りながらルールを作っていくことが重要です。

そして、不正を起こせない仕組み作りだけではなく、不正を起こそうという「動機」、不正を「正当化」させないことに着目した取り組みも大切です。

動機・プレッシャー

それぞれの社員に設定された目標や課題が適切かどうか改めて確認してください。適度なプレッシャーは成長を促しますが、過度なプレッシャーは不正に繋がる危険があります。問題がある場合は修正したり、社員が1人で悩まないよう上司がフォローして下さい。

また、私生活上の金銭的な問題については立ち入ることができませんので、会社として対応できることは限られます。動機・プレッシャーの条件を排除することは難しいです。

例えば、収入に不相応な贅沢をしている、交友関係や異性関係が派手、ギャンブルに熱中している、多額の借金がある等の事実を確認したときは、金銭を扱わない部署に配置転換をすることが考えられます。

正当化

不当に低い処遇をしていないか、会社として違法なことをしていないか、社員にとって納得できないものがあれば正当化が助長されます。

一方、経営者や上司が社員から慕われ、お互いに個人的に信頼し合える関係であれば、「あの人に迷惑は掛けられない」と思い留まり、不正を起こすことはありません。

つまり、経営者と上司の価値観、社員に対する姿勢が問われます。

言葉で言うのは簡単ですが、一朝一夕に改善できることではありません。しかし、不正行為を防止するためには、これが一番効果があります。

(2012/10作成)
(2014/5更新)