社員が行方不明に

社員が行方不明に

社員と連絡が取れなくなって、社員が行方不明になった場合、会社はどのように対応していますか?

電話をしても出ない...

自宅に様子を見に行っても不在...

山田君(仮名)が行方不明になった場合で考えてみましょう。

行方不明になったら、解雇できるのでしょうか?

一般的な就業規則では、懲戒解雇の事由として、「無断欠勤が14日以上に及んだとき」といった規定があると思います。そして、無断欠勤が14日になった時点で、山田君を懲戒解雇することになるでしょう。

しかし、解雇をするためには、その意思表示が山田君に伝わらないと効力が発生しません。例えば山田君の両親に解雇の意思表示をしても、解雇の効力は発生しません。あくまでも山田君本人に対して行わないといけません。

実際は、社員の家族と話し合った上で、解雇又は退職したものとして処理するケースが多いようです。

法律的に正しい方法とは

行方不明になった社員を、法律的に正しい方法で解雇するためには、『公示送達』を行う必要があります。

※『公示送達』とは

相手方の最後の住所地を管轄する簡易裁判所に申立てをして、裁判所の掲示板に掲示をして、この掲示について官報及び新聞に少なくとも1回掲載することによって行います。そして、最後に官報若しくは新聞に掲載された日から2週間が経過すれば、相手方にその意思表示が到達したものとみなされます。

公示送達をすれば、山田君に解雇の意思表示をしたことになります。

解雇予告の手続き

解雇をする場合は解雇の予告が必要で、行方不明になって公示送達を行う場合も例外ではありません。

解雇の予告

意思表示が相手方に到達したとみなされた日から、更に30日を経過した日に解雇が成立することになります。

解雇予告手当

解雇の予告をしないで早く解雇したい場合は、解雇予告手当を支払うことになります。

この場合、解雇の意思表示と解雇予告手当の支払いは同時に行わないといけませんので、公示送達を行う際にあらかじめ解雇予告手当の相当額を『供託』し、その旨も併せて公示します。

※『供託』とは

金銭等を相手が受け取らない場合に、相手が受け取ったのと同じ法律上の効果を得るために、その金銭等を供託所に預けることを言います。供託は法務局で行います。

解雇予告の例外 

労働基準監督署長から解雇予告の除外認定を受けられた場合は、解雇予告の手続きは不要になります。

解雇予告の除外認定を受けられる事例として、「原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」が挙げられています。

行方不明になったときは、「無断欠勤」の条件はクリアしているのですが、後半の「出勤の督促に応じない場合」の督促ができません。おそらく解雇予告の除外認定は受けられないでしょう。

行方不明の対処法

ここまで長々と書いてきましたが、簡単な方法があります。

就業規則の退職の事由に、「行方不明による欠勤が30日に及んだとき」と定めておけば、行方不明が30日に達した時点で、自動的に退職となります。

休職期間の満了と同じように、社員に意思表示をしなくても、これで退職の効力が生じます。

この場合は「解雇」ではなく、自動的に「退職」することになりますので、公示送達や解雇予告の手続きはいりません。

更に、退職金の不支給事由に「行方不明・・・」と定めておけば、退職金の支払も不要になります。

就業規則の退職の事由に、「行方不明による欠勤が30日に及んだとき」を追加してはいかがでしょうか。

(2004/2作成)
(2014/5更新)