パートタイマーの雇い止め

パートタイマーの雇い止め

労働契約の解約について大きく分類すると、会社から一方的に労働契約を解約することを「解雇」、社員から労働契約を解約することを「退職」、契約期間の満了により労働契約を解約することを「雇い止め」と言います。

期間を定めて雇用している(有期労働契約の)従業員がいる会社では、「雇い止め」に関してトラブルが起こる可能性があります。

主にパートタイマーですが、雇い止めを問題なく行うためには、どうすれば良いのでしょうか。

雇用契約の更新

パートタイマーやアルバイトなど、期間を定めて雇用契約を結んだ場合は、その契約している期間が満了すれば、定年退職と同じように雇用契約は終了します。

1回限りで雇用契約が終了する場合は、余り問題になりません。

しかし、漫然と雇用契約を繰り返し更新していると、雇い止めの際にトラブルになります。

雇い止めが認められなかった事例

期間を定めて雇用している従業員の雇い止めに関する裁判例を見ると、結果として雇い止めが認められなかったケースが多いです。

  1. 契約更新の経緯等により、実質的に期間の定めのない契約と認められたケース
  2. 実質的に期間の定めのない契約とは認められないものの、契約更新についての従業員の期待が合理的なものと認められたケース
  3. 特段の支障がない限り当然更新されることを前提として契約が締結されていると認められたケース

などがあり、これらの事例では雇い止めが認められませんでした。

雇い止めが認められないと、この雇い止めは解雇として扱われます。そうなると、「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には権利の濫用として無効」といった基準によって、解雇の正当性が問われることになります。

「雇い止め」と「解雇」では解雇の方が制限が厳しいので、ほとんどの場合、雇い止めが認められないときは解雇も認められません。そして、その解雇が認められないとなると、雇い止め(解雇)を行ってから現在までの給料の支払を命じられることになります。

雇い止めの判断基準

では、有期労働契約の雇い止めに関して、判断の要素となる具体的な項目を見てみましょう。

  1. 継続雇用を期待させるような言動・認識があったかどうか
  2. 同様の地位にある他の従業員の雇い止めの有無
  3. 仕事の内容が「基幹的・恒常的」か「補助的・臨時的」かどうか
  4. 労働条件が正社員とどの程度同じか
  5. 契約更新の回数・勤続年数
  6. 更新手続の有無・時期・方法
  7. 更新するかどうかの判断基準の説明の有無

これらの項目を総合的にみて、雇い止めが有効かどうか判断されます。

6.について、更新手続きをしないで自動更新となっている場合は、実質的に期間の定めのない契約と判断される可能性が高いです。

他の項目については、従業員が継続雇用を当然のものと期待するような環境があったかどうかがポイントになります。

これは期待権の保護と言って、例えば、他社から転職の誘いがあっても、継続雇用を期待していると、その誘いを断ることになります。そのような転職や就職活動の機会を奪ってしまうような不利益を従業員に一方的に与えるのは不公平である、だから雇い止めは認められない、となります。

正当な雇い止め

正当な雇い止めとするためにはどのようにすれば良いか、有期労働契約の締結、更新、雇い止めに際しては、特に次の点についての注意が必要です。

契約更新の有無に関する説明

会社は、新規採用や労働契約の更新の際に、労働契約の更新の有無及びその考え方を、その従業員に説明します。

更新の有無及びその考え方の具体例

契約更新の判断基準の説明

前項の契約を更新することがあるとした場合には、更新する場合、更新しない場合の判断基準を、その従業員に説明します。

更新又は雇い止めの判断基準の具体例

このような基準を示して、具体的に説明をして、「雇用契約は必ずしも更新されるものではない」と本人に認識させることが大事です。また、この内容は、雇用契約書に記載しておきましょう。

最終更新の通知

今回の更新が最後というときに、「今回の更新をもって最終とし、平成○年○月○日をもって本契約は終了とする」と本人に説明をして、合意を得て契約書を交わすことができれば、契約期間満了によって雇い止めが成立します。

トラブルを防止するためには、これが一番良い方法ですが、更新の際に満了時の状況が分かっている場合の方が少ないかもしれません。

雇い止めの予告

前項の最終通告ができなくて雇い止めをするときは、契約期間の満了する日の少なくとも30日前までに、更新しない旨を予告する必要があります。

パートタイマーは雇用の調整弁として簡単に解雇できると考えている経営者もいらっしゃいますが、トラブルになった場合のことを考えて、以上のことを実践するようお勧めします。

(2006/8作成)
(2014/5更新)