統計資料の紹介

統計資料の紹介

私は社会保険労務士として活動しているのですが、お客さんから相談を受けたりしたときに、「他の会社はどうですか?」ということをよく聞かれます。

他の会社と比べて、自分の会社の労働条件が悪いと、社員が他社に転職して行くかもしれません。

また、「世間一般の会社と比較して、それなりの処遇をしてあげられているのだろうか?」と、気にされる経営者もいらっしゃいます。

他の平均的な会社が正しいとは限りませんが、やはり、気になるのでしょう。

ここでは、厚生労働省の統計資料の中から、皆さんに興味がありそうなものを集めました。

年次有給休暇の取得率

平成25年の1年間の年次有給休暇の取得率は、全体平均で、48.8%となっています。

付与した年次有給休暇を、ほぼ全部を使い切る会社がある一方で、ほとんど消化されない会社もあります。経営者の考え方や職場の雰囲気が、大きく影響するものと思います。

年次有給休暇は、会社の規模が大きいほど(社員数が多いほど)、取得率が高くなる傾向があります。

会社規模(社員数)ごとの、1年間の年次有給休暇の「付与日数」、「取得日数」、「取得率」の平均は次のとおりです。なお、「付与日数」には、繰越し分は含んでいません。

年次有給休暇の取得率

社員数平均付与日数平均取得日数平均取得率
1,000人以上19.4日10.8日55.6%
300〜999人18.5日8.7日47.0%
100〜299人18.1日8.1日44.9%
30〜99人17.4日7.4日42.2%
平均18.5日9.0日48.8%

厚生労働省「平成26年就労条件総合調査」

年次有給休暇の取得率が低い会社では、退職時に残っている年次有給休暇を全部まとめて取得するよう申し出てきて、問題になることが多いです。

可能であれば、取得率50%を目標にして、年次有給休暇の取得を促進してはいかがでしょうか。社員満足を高めることができて、長期的に見ると会社の業績アップにも繋がると思います。

離職率

平成25年の1年間の離職率は、全体平均で、15.6%となっています。平均すると、1年の間に100人中15.6人が離職したということになります。

なお、パートタイマーを除いた一般労働者に限ると、離職率の平均は12.4%となっています。

離職率は、業種によって大きく異なります。業種別の離職率は次のとおりです(パートタイマーも含んでいます)。

業種別の離職率

業種離職率
建設業12.1%
製造業10.6%
情報通信業9.4%
運輸業、郵便業12.9%
卸売業、小売業15.0%
金融業、保険業9.6%
不動産業13.6%
宿泊業、飲食業30.4%
医療、福祉業15.2%
サービス業23.2%
平均15.6%

厚生労働省「平成25年雇用動向調査」

退職していく理由にもよりますが、離職率は低い方が良いと思います。退職理由を確認して、離職率を減らすことを検討してはいかがでしょうか。

年間休日総数

平成25年の1年間の年間休日総数は、全体平均で、112.9日となっています。

年間休日総数は、会社の規模が大きいほど(社員数が多いほど)、多くなる傾向があります。

社員数30人〜99人規模の会社の年間休日総数は、平均すると、104.4日となっています。この規模の会社の年間休日総数の分布は、次のとおりです。

年間休日総数

厚生労働省「平成26年就労条件総合調査」

労働費用の総額

平成22年の労働費用の総額は、1人1ヶ月平均で、414,428円となっています。

労働費用の総額のうち、現金給与額(賃金)が占める割合は、81.5%(平均337,849円)です。

この現金給与額(賃金)以外に、会社が負担している労働費用は、18.5%(平均76,579円)になります。

項目別の労働費用は、次のとおりです。法定福利費とは、法律で負担が義務付けられている、厚生年金保険、健康保険、雇用保険などの保険料の合計を言います。

労働費用

総額414,427円100%
現金給与額337,849円81.5%
法定福利費44,770円10.8%
法定外福利費8,316円2.0%
現物給与595円0.1%
退職金の費用20,813円5.0%
教育訓練費1,038円0.3%
その他1,046円0.3%

厚生労働省「平成23年就労条件総合調査」

現金給与額(賃金)を100とすると、これ以外の労働費用の総額は約23になります。賃金以外に、少なく見積もっても賃金の約20%の費用を会社が負担しているということです。

「自分の給料は低い」と思っている社員がいるかもしれませんが、このような費用が掛かっていることを知らないことも原因の1つでしょう。

(2014/11作成)