短時間正社員
短時間正社員
正社員転換制度でもお伝えしましたとおり、パートタイマーを正社員に登用する動きが広がっています。
これと関連して、女性の有効活用という視点から、「短時間正社員」という働き方も注目されています。
会社にとっては管理の手間が増えたりしますが、デメリット以上のメリットがあると思います。
短時間正社員とは
「短時間正社員」とは、フルタイム正社員より一週間の所定労働時間が短いけれども、フルタイム正社員と同様の役割や責任を担い、同様の人事評価や賃金決定の仕組みが適用される社員のことを言います。
短時間正社員になる流れとしては次の3つが想定されます。
- フルタイム正社員 → 短時間正社員
- パートタイマー → 短時間正社員
- 採用時から、短時間正社員
短時間正社員を導入した事例を見ると、育児や介護を行うフルタイム正社員への対応策として、一定期間を対象とするもの(1.)が多いです。特に保育園の送迎を理由として導入したケースが多いです。
パートタイマーからの転換(2.)や当初から短時間正社員として雇用するケース(3.)は、現在ではまだ少ないようですが、今後は増えてくることが予想されます。
短時間正社員制度のメリット
私生活の時間を確保できる
社員にとっては、育児や介護のための私生活の時間を確保できたり、高齢者の体力的な負担を軽減できたりして、仕事と家庭のバランスに応じた働き方が可能になります。
定着率の向上と人材の確保
退職されることは会社にとって大きな負担です。これまで育児や介護が原因で働き続けることのできなかった人に、働き続けられる環境を提供することで、 継続して勤務してもらえるようになります。
また、雇用可能な人材の幅が広がり、他社からの転職を受け入れる機会が増します。
採用力アップ
例えば、パートタイマーの求人広告で、時給900円、1日8時間勤務で出勤日数が月21日とすると、月151,200円になります。
一方、月151,200円で正社員の募集を掛けると、同じ金額でも正社員の方が応募が集まりやすいです。やはり、パートタイマーという不安定な雇用形態よりも、雇用の保障がある正社員の方が好まれるのでしょう。
残業時間の削減
残業時間に対しては割増賃金を支払わないといけません。フルタイム正社員の残業時間を減らして、その分を短時間正社員に担当させれば残業時間を削減できるようになります。
意識の変化
時間給で勤務するパートタイマーにとっては勤務時間と賃金が連動しているため、自分の時間を会社に切り売りしているという意識が強く、仕事の対価として賃金を受け取っているという意識が希薄なケースがよくあります。
このような考えでは、勤務時間が過ぎるのを待っているだけで、作業を改善しようとか、コストダウンをしようという意欲は湧きにくいものです。
また、短時間正社員制度の適用を、フルタイム正社員を対象とするもの(1.)から、パートタイマーにまで対象を広げれば(2.)、正社員を希望するパートタイマーのモチベーションアップにも繋がります。
短時間正社員制度導入時の課題
短時間正社員という変則的な働き方を採用するとなると、いくつかの課題を検討しないといけません。
- 正社員と非正社員(パートタイマー等)とでは何が異なるのか整理する。
- フルタイム正社員と短時間正社員とで、同じ取扱いとするもの、異なる取扱いとするものを整理する。
- 基本給、各手当、賞与、退職金はどうするか?
- フルタイム正社員から短時間正社員に転換する場合に、業務の補完はどうするか?
短時間正社員制度導入時の注意点
導入が難しい業務
顧客や取引先など会社外の対応が必要な部署では難しいかもしれません。また、判断や決済、クレーム対応、他部署との調整が必要な管理職についても、最初からの導入は困難と思われます。
比較的導入しやすそうな部署で検討して、試してみるのが良いでしょう。その結果を踏まえて、改善する部分があれば改善し、徐々に対象を広げていくのが良いと思います。
十分な説明を行うこと
コスト削減など、会社の都合で勤務時間を短くするのではないかと誤解を招かないように、短時間正社員制度を導入する必要性や社員にとってのメリット等を説明しておく必要があります。
また、制度利用者以外の社員の協力が欠かせないことから、短時間正社員制度を利用する者だけでなく、利用しない他の社員の理解も得られるようにしないといけません。
(2010/8更新)
(2014/5更新)