正社員転換制度|パートを正社員に登用するメリットと条件を解説

正社員転換制度とは

パートタイマー、アルバイト、派遣社員などの非正規従業員は、人件費の削減や雇用の調整弁として活用されてきました。総務省の労働力調査によると、雇用者の約3分の1を非正規雇用労働者が占めています。

しかし、人手不足が深刻化し、このような状況が変わりつつあります。

通常、正社員は会社の外から採用していますが、最近は、会社の中の非正規従業員を正社員に登用・転換するケースが増えてきています。

正社員転換制度のメリットと正社員転換制度を取り入れる場合のポイントを見てみましょう。

正社員転換制度のメリット

採用リスクが小さい

新卒採用でも中途採用でも、短時間の面接だけで、採用後にどれぐらい活躍してくれるのか見極めることは、普通は不可能です。

しかし、会社に在籍しているパートタイマー等であれば、どれぐらい活躍してくれるのか、十分な時間を掛けて見極めることができます。

また、特に新卒採用は教育や指導に時間が掛かりますが、社内のパートタイマー等は実務もある程度は把握していますので、即戦力として期待できます。

社外の人材の採用にはリスクがありますが、これと比べて社内の人材の登用は採用リスクが小さいです。

人材の確保

最近は多くの会社が人手不足に悩まされていて、特に優秀な人材の確保が難しくなっています。

新卒採用と中途採用に限られていた採用ルートに、社内のパートタイマー等の正社員転換を加えることで、正社員の採用ルートが広がります。

正社員転換制度は、人材を確保する対策として効果的です。

人材の有効活用

最初は本人の都合でパートタイマーとして入社したけれども、正社員として勤務できるよう生活環境が変わることもあります。そんなときに、正社員としてやっていける能力があるにもかかわらず、パートタイマーのまま置いておくのはもったいない話です。

パートタイマーであれば仕事の範囲が限られ、能力を発揮できる機会が失われます。本人も、もっとやりがいのある職場を求めて転職するかもしれません。

パートタイマーを正社員に登用することによって、人材を有効に活用できるようになります。

パートタイマーのモチベーションアップ

最初はパートタイマーで良かったけれども、事情が変わってフルタイムで働きたいと考えている方がいるかもしれません。また、当初は正社員の募集がなかったため、仕方なく今でもパートタイマーとして勤務している方もいるかもしれません。

実際、「フルタイムで正社員として勤務できるようになったので転職する」という話はよくあります。

正社員転換制度により、正社員登用の道を示すことで、パートタイマーのモチベーションの向上が期待できます。

募集コストが掛からない

正社員転換制度により、社内のパートタイマーを正社員に登用するときは、求人広告を出す必要がありませんので、募集コストが掛かりません。

正社員登用の条件設定

正社員への登用を促進するとしても、希望者全員を正社員に登用することはできません。何らかの条件を設定する必要があります。

条件は会社ごとに異なりますが、例えば次のような条件が考えられます。

  1. 勤続年数
    1~2年が適当と思います。
  2. 人事評価
    少なくとも標準レベルの評価を得ていることとするのが適当でしょう。
  3. 所属長の推薦
  4. 正社員として勤務できる

正社員と非正規従業員の違い

正社員と非正規従業員で、何が異なるのか(これも会社ごとに異なります)を整理しておく必要があります。

そして、正社員として勤務できることを予め確認しておかないといけません。また、正社員として何を望むのかも十分に説明してください。

  1. 責任と権限が重くなる
    クレーム対応、決裁の権限、部下の管理、ノルマ等
  2. フルタイムで勤務する
    時間外勤務、休日勤務、深夜勤務、等
  3. 配置転換、転勤、出張がある
  4. その他

正社員転換制度の導入・取り組み

パートタイマーを正社員に登用すると人件費が増えますので、大企業に比べて中小企業の正社員転換の取り組みは遅れています。

しかし、正社員転換制度を導入することで、定着率の向上やモチベーションのアップに繋がった事例もあり、検討する価値は十分あると思います。

正社員転換制度と無期転換制度の違い

労働契約法第18条によって、有期労働契約を通算して5年が経過した従業員は、無期労働契約への転換を申し込めることになっています。正社員転換制度と無期転換制度は混同されることがありますが、制度の目的や効果が異なります。

項目正社員転換制度無期転換制度
制度の概要パートタイマーや契約社員などの非正規従業員を正社員として登用する制度有期労働契約が通算5年を超えたときに、従業員の申込みによって無期労働契約に転換する制度
根拠会社が任意に導入する制度労働契約法第18条に基づく制度
対象者会社が定める条件を満たした従業員通算契約期間が5年を超えた有期契約労働者
転換後の雇用形態正社員無期雇用労働者(正社員に限らない)
賃金・待遇正社員に適用する就業規則による原則として転換前の労働条件を引き継ぐ

無期転換制度は「契約期間がなくなる制度」であって、必ずしも正社員になる制度ではありません。一方、正社員転換制度は、正社員として登用しますので、原則として、責任や権限、処遇などは正社員と同じ労働条件になります。

正社員転換制度を導入する場合は、無期転換制度との違いを従業員に説明しておくことが重要です。

(2010/4作成)
(2026/3更新)


社会保険労務士 木下貴雄

執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。メールを用いた関連サービスは20年以上の実績があり、全国の中小零細企業を対象に、これまで900社以上の就業規則の作成・変更に携わってきました。