退職金制度の改定

基本給連動型の退職金

歴史のある多くの会社では、「退職時の基本給×勤続年数に応じた係数」によって、退職金の金額を決定する「基本給連動型の退職金制度」が採用されていました。

基本給連動型の退職金制度は、右肩上がりで、業績の向上が見込める時代は良かったのですが、現在では、次のようなデメリットが表面化しています。

  1. 基本給の上昇に伴って、退職金の金額が膨れ上がる。
  2. 長期勤続を促すため、社員の新陳代謝を進めたい場合は障害になる。
  3. 基本給の金額に影響するため、賃金制度を柔軟に変更できない。

退職金制度の改定

基本給連動型の退職金制度には、このようなデメリットがあるため、バブルが崩壊した以降、大企業や中堅企業を中心に、退職金制度の改定が積極的に行われてきました。

しかし、中小零細企業では、危機感がないのか、危機感があっても対処法が分からないのか、退職金制度の改定が進んでいない所が多いようです。

退職金の試算

まずは、今後、どれぐらいの退職金が必要になるのか、試算するようお勧めいたします。例えば、今後10年の間に、いくらの退職金を支払うのか計算してみましょう。

  1. 社員を年齢順に並べて、50歳以上の社員と、50歳未満の社員に分けます。
  2. 50歳以上の社員は、定年年齢の60歳まで勤務すると仮定して、定年時の退職金額を計算します。
  3. 次に、50歳未満の社員は、10年以内に退職すると仮定して、現時点で自己都合退職した場合の退職金額を計算します。
  4. 2.と3.の合計金額が、今後10年の間に必要な退職金の概算になります。
  5. そして、現在、退職金の原資として準備している積立金の金額を確認してください。

退職金の概算と現在の積立金の金額を比較すれば、積立て不足がどれぐらいか分かります。

退職金規程を作成した当時に予定していた状況と、現在の状況が大幅に異なっていて、積立て不足が思っていた以上に大きくなっていませんか?

退職金を支給する目的

そもそも退職金は、どのような目的で支給しているのでしょうか?退職金規程を作って10年以上経過しているようでしたら、ここで一度立ち止まって、整理してみましょう。

従来から退職金は、次のような目的をもって支給するものと考えられています。

  1. 永年の勤続に対する報償
  2. 老後の生活保障の一部
  3. 失業期間中の生活費の補助
  4. 在籍期間中の賃金の後払い

自社における退職金の位置付け

では、自社での退職金の位置付けを整理してみましょう。

これらを明確にして、以降も退職金を支給する価値があると判断した場合は、退職金制度は残しても良いでしょう。それほどの価値はない、退職金の原資は他に有効に使うべきと判断した場合は、退職金制度の廃止を考えることになります。

退職金制度改定の方向性

退職金は一般的に、「確定給付型」と「確定拠出型」の2つに分類できます。

「確定給付型」は、将来の退職金の給付額を約束する制度で、予定利回りを上回って積立金を運用できれば、剰余金が会社に返還されます。しかし、予定利回りを下回ると、積立て不足が発生し、会社は不足分を補填しないといけません。

一方、「確定拠出型」は、一定の掛金を納付するだけです。退職金の給付額は運用によって変動しますので、積立て不足が発生することはありません。

近年は、確定拠出型(中小企業退職金共済など)に移行したり、退職金制度を廃止する会社が増えています。また、最近設立した会社では、退職金制度のない会社が多いです。

退職金制度改定の注意点

退職金制度を改定する場合は、次の点に注意する必要があります。

既得権を保証すること

退職金制度を改定する前に、全員分の退職金の金額を計算してください。

退職金制度を改定する時点で計算した、それぞれの社員の退職金額は既得権として、会社は支払を保証する必要があります。

一方的に退職金制度(退職金規程)を変更しないこと

退職金制度の改定は、社員にとっては大きな不利益を受けることになりますので、就業規則の不利益変更の条件をクリアしながら進めてください。

退職金に関する情報を社員に公開して、社員と話し合って、社員に納得してもらうことが欠かせません。そのために、社員が受ける不利益をできるだけ最小限にするよう配慮することも必要です。

不利益緩和措置

退職金制度を改定するときに、社員から強い反対が予想される場合は、次のような方法を検討することも考えられます。

まずは、退職金制度を一気に改定するのではなく、5年や10年の猶予期間を設ける方法です。退職金制度の改定については、50代の社員の反発が大きいと思いますが、猶予期間を設けることで反発を抑えることができます。

次に、これから入ってくる社員には、別の退職金規程(退職金を支給しないことも可能です)を適用する方法です。在籍している社員には、従来からの退職金規程を適用して、1社に2つの退職金規程が存在することになりますが、問題はありません。この場合は、不利益変更には当たりません。

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(2014/7 作成)