退職届の受け取り拒否

退職届の受け取り拒否

「上司に退職届を提出したけど受け取ってもらえない」という相談を受けることがあります。

上司に退職届を受け取ってもらえないと、いつまで経っても退職できないのでしょうか。

法律的に、どうなっているのかお伝えします。

有期労働契約と無期労働契約

その前に、今の雇用されている状態が、有期労働契約か無期労働契約かによって、大きく異なります。

まず、有期労働契約と言うのは、例えば、1年契約とか、半年契約とか、期間を定めて雇用するという契約です。

一方、無期労働契約と言うのは、このように具体的な期間を定めないで、解雇事由等がない限り、ずっと雇用し続けるという契約です。

通常は、採用時に、雇用契約書や労働条件通知書といった書面が、会社から本人に手渡されることになっています。その雇用契約書等に、期間を定めて雇用するのか、期間を定めないで雇用するのか、記載されているはずです。

採用時に、雇用契約書等の交付がなく、「期間を定めて雇用する」といった説明を受けていなければ、無期労働契約として扱われます。

有期労働契約での退職届の受け取り拒否

有期労働契約は、期間を定めた雇用契約で、この期間が満了したときは雇用契約を解約することになります。もう1つ大事なことがあって、この期間中は、特別な事情(解雇事由や病気等)がない限り、会社も社員もお互いに、一方的に雇用契約を解約することができません。

契約期間の途中で、どちらかが解約したくなったときは、相手を説得して同意を得る必要があります。同意が得られないと、期間が満了するまで勤務(雇用)する義務があります。

したがいまして、退職届を提出して、上司(会社)が退職届の受取を拒否したときは、それに従わざるを得ません。もし、上司(会社)が退職届の受取を拒否しているにもかかわらず、社員が一方的に退職すると(出勤しない)と、法律的には損害賠償を請求されることも考えられます。

ただし、就業規則を確認して下さい。就業規則に、自己都合退職や依願退職の規定はありますか?

その規定に、「自己都合で退職するときは1ヶ月前までに退職届を提出しなければならない」といった規定があれば、自己都合退職を許容していることになりますので、退職届を提出して退職することができます。上司(会社)の同意は必要ありません。

法律の内容より、就業規則の内容の方が、社員にとって有利に定められているときは、就業規則の内容の方が優先して適用されます。

また、会社としても、普通に考えると、退職したいと思っている社員が、会社に貢献しようと一所懸命になって働いてもらえるとは思えません。私も、会社から社員の引き留めについて相談を受けたときは、無理に引き留めても良いことはないとアドバイスしています。

無期労働契約での退職届の受け取り拒否

無期労働契約の場合は、民法第627条により、次のように定められています。

「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」

つまり、2週間前に退職の申し入れをすれば、退職できるということです。退職理由も「一身上の都合」で構いません。社員には退職の自由が保障されていて、会社に引き留める権利はありません。

また、退職の申し入れ(退職の意思表示)は口頭でも構いません。しかし、「言った」「言わない」でトラブルになることを考えると、書面(退職届)で申し入れるのが良いです。就業規則にも、書面(退職届)で提出することが記載されていると思います。

無期労働契約の場合は、いつでも、退職の自由が保障されていますので、会社の意に反する退職であっても、損害賠償を請求される心配はありません。

また、提出する書類が退職“願”となっていると、「それは退職のお願いで、会社の承認を必要とするものです。会社は承認しない」と言われるかもしれません。退職“届”として、人事権のある人に提出して下さい。届け出た時点で退職が成立します。

(2014/5作成)