整理解雇の前に希望退職の募集を

業績の悪化や経営の合理化により、余剰人員が発生することがあります。

余剰人員に対して、配置転換や出向等をして調整できれば問題は解決しますが、それでも対応できなければ人員を削減しないといけません。

人員を削減する方法として整理解雇がありますが、整理解雇が有効と認められるためには厳しい条件があります

その条件の1つとして、解雇を回避する努力をしたかどうかが問われます。希望退職の募集をしないで整理解雇をすると、解雇を回避する努力を怠ったとして、特別な事情がない限り、整理解雇は否定されやすいです。

したがって、整理解雇をする前に、希望退職の募集を検討しないといけません。

希望退職とは

希望退職とは、一定の募集期間を設定して、社員に自発的な退職を促す制度を言います。退職を促すために、会社側から退職金の増額など通常の退職より有利な条件を提示するのが普通です。

社員が希望退職に応募して会社が承認すると、合意退職となります。解雇ではありませんので、解雇に関する規制は適用されません。解雇と比べて、退職はトラブルになる可能性が非常に低いです。

ただし、希望退職は、自発的に退職することが前提ですので、強迫や強要、詐欺によって行われた場合は無効になります。

希望退職を実施する場合の検討事項

募集人数

募集人数は設定しなくても構いませんが、応募が集まり過ぎて業務に支障が生じることも考えられます。今後、どの程度の人員で会社を運営していくのか想定して、募集人数を設定すると良いでしょう。

当然ですが、募集人員を多くすると、退職金の支払等の費用負担が大きくなります。

対象者の範囲

年齢や勤続年数、部門、勤務地などで対象者(グループ)を限定するか、全ての社員を対象にするか、を検討します。なお、性別による区別は均等法に違反します。

また、どこの会社にも辞められると困る社員がいると思いますが、会社が特に必要と認めた者は対象外とすることも可能です。その場合は、対象外であることを個別に事前に通知しておきます。

逆に、個別に面談をして、退職勧奨を行うケースもあります。

募集期間

募集期間は、短過ぎると退職の決断ができないですし、長過ぎても職場の雰囲気が悪くなってしまう恐れがありますので、2週間程度が適当と思います。

退職日

引き継ぎ等の関係から、退職日は募集期間が終わって1ヶ月経った前後の日で良いと思います。

退職金の増額幅

希望退職の応募者には、退職金を増額するのが一般的です。方法としては、

  1. 通常の退職金に一定割合を加算する方法
  2. 賃金の数ヶ月分を支給する方法
  3. 一定金額を支給する方法

があります。また、年齢別に設定したり、特に応募してもらいたい対象者(グループ)に対して更に増額したりするケースもあります。

また、退職金は自己都合退職で計算するのか、会社都合(解雇)で計算するのか、についても確認しておく必要があります。

退職金の増額幅の設定の仕方によって応募者数が違ってきますので、慎重に検討しないといけません。

それぞれの会社によって状況が異なりますので、一概にいくらが適正とは言えませんが、再就職に要する期間にいくらか加算して、賃金の1〜2年分の金額が目安になるのではないかと思います。

退職時のその他の条件

退職金の増額以外に提示できることを検討します。

  1. 未消化の年次有給休暇の買取り(買取り金額)
  2. 再就職の支援(再就職支援会社の利用など)
  3. 賞与の支給(退職後に支給予定の分)
  4. 再就職活動を認める(有給で出勤を免除する)

これらは法律等で求められているものではありませんが、応募を促すような魅力的な内容にすることが望ましいです。

応募者数による対応

希望退職の募集をして、応募者が予定していた募集人数に達したときは、その時点で募集を打ち切るか、引き続いて募集を受け付けるか、予め検討しておきます。

また、逆に、応募者が募集人数に満たないときは、二次募集をするか(条件を引き上げるか)、退職勧奨に切り替えるか(並行して行うか)、どの程度なら許容できるか、等について検討します。

希望退職の手順

希望退職制度の内容について検討した後の主な手順は次のとおりです。

従業員代表(労働組合)との協議

希望退職制度の内容について、事前に従業員代表(労働組合)と協議をして、理解を得ておきます。必要であれば内容の修正を行います。

役員報酬のカットや採用の停止、残業の抑制、遊休資産の売却など、できることを実行していなければ、希望退職について社員の理解を得ることは難しいです。社員にとっては生活に大きく影響することですので、その前にできることは全て実行しておきましょう。

説明会の開催

希望退職を実施せざるを得ない理由、募集人数、対象者、募集期間、退職条件など、希望退職制度の内容について、文書を配布して具体的に社員に説明します。

「従業員代表(労働組合)との協議」と「説明会」は誠実に時間を掛けて行う必要があります。特に、将来的に整理解雇を想定している場合は、社員との十分な話合いが欠かせません。

応募の受付

社員から応募があったときは、会社が承認をして、速やかに合意書を作成します。合意書の作成は義務付けられているものではありませんが、トラブル防止のために作成した方が良いです。

なお、希望退職制度の対象外となっている社員から応募があったときは、会社は承認を拒否できます。

希望退職制度(退職金の増額等)は適用できないことを説明して、それでも本人が退職を撤回しない場合は、通常の退職として取り扱うことになります。退職自体を会社が禁止することはできません。

(2013/8更新)
(2014/5更新)