中小企業退職金共済(中退共)
中小企業退職金共済(中退共)
中小企業退職金共済制度が、今注目されています。
「退職金は支給したいけど、運用リスクは負いたくない、」とおっしゃる場合は、中小企業退職金共済制度をお勧めいたします。
この中小企業退職金共済制度は、「中小企業退職金共済法」という法律に基づいて運営される国の制度です。
中小企業退職金共済制度は、以前から小規模企業の間では一般的な制度でした。
ここでは、中小企業退職金共済制度の概要について、紹介いたします。
中小企業退職金共済(中退共)の加入状況
平成26年5月末日現在の中小企業退職金共済制度(以下「中退共」と言います)の加入状況は、次のとおりです。
加入している企業数 | 361,840所 |
加入している社員数 | 3,284,382人 |
運用資産額 | 約4.3兆円 |
中退共への加入条件
中退共は、「中小企業退職金共済制度」という名称のとおり、中小企業しか加入できません。中小企業として、中退共に加入できる企業の条件は、次のとおりです。
業種 | 社員数 | 資本金 |
---|---|---|
下記以外 | 300人以下 | 3億円以下 |
卸売業 | 100人以下 | 1億円以下 |
サービス業 | 100人以下 | 5千万円以下 |
小売業 | 50人以下 | 5千万円以下 |
社員数又は資本金の一方でも当てはまれば、中退共に加入できます。個人事業でも加入できます。
中退共のメリットとデメリット
会社のメリット
- 確定拠出型のため、運用が悪化しても、会社は追加負担をする必要がありません。
- 中退共制度に加入した場合は、国から助成を受けられます。※
- 掛金は、全額損金に算入できます。
- 掛金月額は、社員ごとに個別に設定できます。※
- 国が行っている制度ですので、つぶれる可能性は極めて小さいです。
会社のデメリット
- 退職金は、直接社員に支払われます。懲戒解雇をする場合は不支給を申し出ることができますが、納付した掛金は没収されて、会社には戻ってきません。
- 加入期間が短いと掛け捨てになります。※
- 社員は全員加入させることが原則になっています。※
社員のメリット
- 退職時に会社の経営状態が悪くても確実に支払われますので、安心できます。
- 社員が転職しても、転職先が中退共に加入している場合は、通算して継続できます。
社員のデメリット
- 支給される退職金の金額は、運用利回りによって変動しますので、将来受けられる金額が分かりません。なお、平成26年現在、予定運用利回りは1%と定められています。※
国の助成
新しく中退共に加入した会社は、加入した4ヶ月目から1年間、掛金月額の1/2(社員ごとに上限5,000円)の助成を受けられます。
また、パートタイマー等の短時間労働者で、掛金月額が2,000円、3,000円、4,000円の場合は、それぞれ300円、400円、500円が、1.に上乗せして助成されます。
掛金月額が18,000円以下の社員の掛金を増額する会社は、増額した月から1年間、増額分の1/3の助成を受けられます。なお、20,000円以上の掛金月額からの増額は助成の対象になりません。
中退共の掛金月額の種類
掛金は、月額5,000円〜30,000円の間(1万円までは1,000円刻み、1万円以上は2,000円刻み)で、社員ごとに任意に設定できます。
短時間労働者(1週間の所定労働時間が30時間未満のパートタイマー等)については、特例として月額2,000円、3,000円、4,000円でも加入できます。
中退共の加入期間と退職金
中退共は、長期加入者の退職金を手厚くするよう制度設計が行われているため、加入期間が短いと不利になります。中退共の加入期間と退職金の関係は、次のとおりです。
加入期間 | 退職金の額 |
---|---|
11ヶ月以下 | 支給されません。 |
12ヶ月以上23ヶ月以下 | 掛金の総額を下回る金額になります。 |
24ヶ月以上42ヶ月以下 | 掛金と同額になります。 |
43ヶ月以上 | 運用利息が加算され、長期加入者ほど有利になります。 |
中退共に加入できる社員
原則として、社員は全員加入させることになっています。
中退共は労働者のための制度ですので、個人企業の事業主は加入できません。
また、法人企業の場合は、役員は原則的には加入できません。ただし、役員であっても、部長や支店長、工場長等、社員として賃金の支給を受けているといった実態があれば加入できます。
なお、小規模企業の個人事業主や会社の役員等を対象にした退職金制度として、小規模企業共済制度があります。
中退共の運用利回りと退職金額
中退共で、毎月1万円の掛金を40年間積み立てたとすると、掛金の総額は480万円になります。そして、運用利回りによって、受け取れる退職金額は、次のように大きく異なります。
運用利回り | 退職金額 |
---|---|
5.5% | 約1700万円 |
4.5% | 約1320万円 |
3.0% | 約 920万円 |
1.0% | 約 590万円 |
過去勤務期間の通算制度
現在、会社が中退共に未加入で、新規に中退共と契約(加入)する場合は、掛金を納付することによって、過去にさかのぼって通算できる制度があります。【過去勤務期間の通算】と言います。
1年以上勤務している社員で、その採用日まで(上限は10年前まで)さかのぼることができます。ただし、通常の掛金とは別に、利息分も納付しないといけません。
退職金規程との関係
退職金規程は、どのようになっていますでしょうか?退職金の準備方法を変更しただけでは意味がありません。会社は、退職金規程に基づいた金額の退職金を支払う義務があります。
追加負担を求められないようにするためには、「退職金規程による退職金の支給額=中退共制度」と一致させておく必要があります。
(2014/7 作成)