責任者や管理者等の選任
安全衛生管理体制
労働安全衛生法により、従業員数が10人以上になったときは衛生推進者や安全衛生推進者、50人以上になったときは衛生管理者や安全管理者等を選任することが義務付けられています。
このような安全衛生管理体制については、こちらでお伝えしましたが、これ以外にも様々な分野で、責任者や管理者等を選任することが求められるケースがあります。
- 派遣先責任者
- 派遣元責任者
- 高年齢者雇用推進者
- 再就職援助担当者
- 障害者雇用推進者
- 障害者職業生活相談員
- 外国人労働者の雇用管理に関する責任者
- 職業家庭両立推進者
- 短時間雇用管理者
- 機会均等推進責任者
- 安全運転管理者
- 防火管理者
派遣先責任者
労働者派遣法により、派遣社員を受け入れている派遣先は、派遣社員の適正な就業を確保するための業務の責任者として、派遣先責任者を選任することが義務付けられています。ただし、選任の届出をする必要はありません。
派遣社員の人数が1人以上100人以下を1単位として、1単位につき1人の派遣先責任者を選任することになっています。ただし、派遣先において、派遣社員と派遣先が自ら雇用する従業員の合計人数が、5人以下の場合は選任しなくても構いません。
派遣先責任者の選任に当たっては、次の技能を有する者を選任するよう努めることとされています。
- 労働関係法令の知識がある
- 人事労務管理について専門的な知識や相当期間の経験がある
- 派遣社員の就業に関する事項を決定(変更)できる権限があり、職務を的確に遂行できる
派遣先責任者の職務は、次のとおりです。
- 労働者派遣法や労働基準法により適用される規定、派遣契約の内容、派遣元から通知された内容を、派遣社員を指揮命令する者等に周知する。
- 派遣可能期間を延長するときは、派遣元に抵触日を通知する。
- 派遣先管理台帳を作成し、派遣元に記載内容を通知する。
- 派遣社員が申し出た苦情の処理に当たる。
- 派遣社員の安全衛生に関して、派遣先の管理者や派遣元と連絡調整を行う。
- その他、派遣元と連絡調整を行う。
派遣元責任者
労働者派遣法により、派遣元は、派遣社員の雇用管理を適正に行うための責任者として、派遣元責任者を選任することが義務付けられています。
派遣先責任者と同様に、派遣社員の人数が1人以上100人以下を1単位として、1単位につき1人の派遣元責任者を選任することになっています。
派遣元責任者の職務は、次のとおりです。
- 派遣社員であることを本人に明示する。
- 労働条件等を派遣社員に明示する。
- 派遣先に派遣社員の氏名等を通知する。
- 派遣元管理台帳を作成する。
- 派遣社員に必要な助言や指導を行う。
- 派遣社員が申し出た苦情の処理に当たる。
- 派遣社員の個人情報を管理する。
- 派遣社員の教育訓練の実施、職業生活の設計に関する相談に応じる。
- 派遣社員の安全衛生に関して、派遣元の管理者や派遣先と連絡調整を行う。
- その他、派遣先と連絡調整を行う。
高年齢者雇用推進者
高年齢者法により、高年齢者の雇用を確保するための措置(作業施設を改善したり、諸条件の整備を図ったりする業務)を推進する担当者として、高年齢者雇用推進者を選任するよう努めることとされています。
高年齢者雇用状況報告
30人以上の従業員を雇用している会社は、毎年1回、定年や継続雇用制度の状況、その他高年齢者の雇用に関する状況を厚生労働大臣に報告することが義務付けられています。
毎年5月に、従業員数が30人以上の会社に高年齢者雇用状況報告書が送付されていて、6月1日現在の高年齢者の雇用状況を記入して、7月15日までにハローワーク(公共職業安定所)に提出することになっています。
この高年齢者雇用状況報告書に、高年齢者雇用推進者の役職と氏名を記入する欄が設けられています。
再就職援助担当者
高年齢者法により、解雇等により離職する高年齢者が希望するときは、再就職を促進するために、会社は求職活動支援書を作成して、本人に交付しないといけません。
そして、求職活動支援書を作成した会社は、ハローワークと協力して、その高年齢者の再就職を援助する者として、再就職援助担当者を選任することが義務付けられています。
求職活動支援書に、再就職援助担当者の記入欄が設けられています。
障害者雇用推進者
障害者雇用促進法により、50人以上の従業員を雇用している会社は、次の業務を担当する者として、障害者雇用推進者を選任するよう努めることとされています。
- 障害者の雇用の促進と雇用の継続を図るために、必要な施設や設備を設置、整備する。
- 障害者の雇用状況を厚生労働大臣に報告する。
- 障害者を解雇した場合にハローワークに届け出る。
- 障害者の雇入れに関する計画を作成して、実施する。
- 障害者の雇用に関する連絡窓口となる。
障害者雇用状況報告書
従業員数が50人以上の(障害者の雇用義務がある)会社は、毎年1回、障害者の雇用に関する状況を厚生労働大臣に報告することが義務付けられています。
高年齢者雇用状況報告と同様に、毎年5月に、従業員数が50人以上の会社に障害者雇用状況報告書が送付されていて、6月1日現在の障害者の雇用状況を記入して、7月15日までにハローワークに提出することになっています。
この障害者雇用状況報告書に、障害者雇用推進者の役職と氏名を記入する欄が設けられています。
障害者職業生活相談員
障害者雇用促進法により、障害者を5人以上雇用している会社は、障害者の職業生活に関する相談や指導を行う者として、障害者職業生活相談員を選任して、ハローワークに届け出ることが義務付けられています。
なお、職業生活相談員は、厚生労働大臣が行う講習を修了した者、職業能力開発促進法による職業能力開発総合大学校の指導員訓練を修了した者、一定の実務経験がある者など、必要な要件を満たしている者でないと選任することができません。
外国人労働者の雇用管理に関する責任者
雇用対策法(外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針)により、外国人労働者を10人以上雇用している会社は、次の事項を管理する者として、外国人労働者の雇用管理に関する責任者を選任することが義務付けられています。ただし、選任の届出をする必要はありません。
- 外国人労働者の募集及び採用の適正化
- 適正な労働条件の確保
- 安全衛生の確保
- 雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険の適用
- 適切な人事管理、教育訓練、福利厚生等
- 解雇の予防及び再就職の援助
会社が外国人を雇い入れた場合、雇い入れた外国人が離職した場合は、氏名、在留資格、在留期間等を確認して、厚生労働大臣に届け出ないといけません。
雇用保険の被保険者の場合は、資格取得届又は資格喪失届に必要事項を記載して、ハローワークに届け出ることによって行います。
一方、雇用保険の被保険者でない場合は、外国人雇用状況届出書に必要事項を記載して、ハローワークに届け出ないといけません。
職業家庭両立推進者
育児介護休業法により、次の業務を担当する者として、職業家庭両立推進者を選任するよう努めることとされています。
- 育児介護休業法により、会社が講ずるよう定められている措置を適切かつ有効に実施する。
- 子の養育又は家族の介護を行う従業員の職業生活と家庭生活の両立を図るための措置を実施する。
短時間雇用管理者
パートタイム労働法により、パートタイマーを10人以上雇用している会社は、次の業務を担当する者として、短時間雇用管理者を選任するよう努めることとされています。
- パートタイム労働法や指針に定められている事項、パートタイマーの雇用管理の改善等について、必要な措置を検討し、実施する。
- 労働条件等について、パートタイマーの相談に応じる。
機会均等推進責任者
男女雇用機会均等法に関する通達により、次の業務を担当する者として、機会均等推進責任者を選任することが推奨されています。
- 性差別の禁止、セクシュアル・ハラスメントの防止、母性健康管理など、関係法令を遵守するために必要な措置を検討し、実施する。
- 女性従業員の能力の発揮を促進するための積極的な取り組み(ポジティブ・アクション)を推進するための方策を検討し、その取り組みが着実に実施されるよう促す。
安全運転管理者
人事労務分野の他に、道路交通法や消防法により、選任を義務付けられる場合があります。
道路交通法により、乗車定員が10人以下の自動車を5台以上(又は、乗車定員が11人以上の自動車を1台以上)使用している会社は、安全運転管理者を選任して、公安委員会に届け出ることが義務付けられています。
また、自動車を20台以上使用している会社は、副安全運転管理者を選任することが義務付けられています。
防火管理者
消防法により、次の規模以上の会社は、防火管理者を選任して、消防署に届け出ることが義務付けられています。
- 不特定の者が出入りする建物(百貨店、旅館、病院等)については、収容人員が30人以上の建物
- 特定の者が出入りする建物(事業所、工場、倉庫等)については、収容人員が50人以上の建物
- 福祉施設については、収容人員が10人以上の建物
延べ床面積によって、甲種防火管理者と乙種防火管理者の2種類が定められています。
(2019/4作成)