派遣社員の受け入れ

派遣社員の受け入れ

会社にとって派遣は、採用の手間や雇用のリスクを考えると、便利な面があります。

しかし、労働者派遣法には様々な制約があり、知らない間に法律違反をしてしまっているケースが少なくありません。

そこで、今回は、派遣社員を受け入れる派遣先企業において、見落とされることが多い労働者派遣法の内容を取り上げます。

受け入れ期間の制限

派遣法では、「専門26業務」とそれ以外の一般事務などの業務(「自由化業務」)で、派遣の受け入れ期間が区別されています。

「専門26業務」は受け入れ期間に制限はありませんが、「自由化業務」で受け入れることができる期間は原則1年間となっています。

ただし、過半数代表者等の意見を聴いたときは、最長3年間まで受け入れ期間を延長することが認められています。

複合業務

専門26業務にプラスして付随的な業務を行っている場合に、付随的業務の割合が1日当たり又は1週間当たりの勤務時間で1割を超えると、受け入れ期間の制限を受けることになります。

また、専門26業務と関係のない業務を併せて行っている場合は、勤務時間に関係なく、受け入れ期間の制限を受けることになります。

例えば、専門26業務の「事務用機器操作」で契約した派遣社員に、付随的業務でない「お茶くみ」をさせると、受け入れ期間に制限が生じます。

専門26業務の適正運用

専門26業務は受け入れ期間に制限がないことから、「専門26業務」と称して他の業務を行わせているケースが見受けられます。

特に、実際には専門性がない一般事務を行いながら、派遣契約上は専門26業務の「事務用機器操作」や「ファイリング」としているケースが多いようです。

受け入れ期間の考え方

受け入れ期間は、派遣社員ごとではなく、派遣先企業の勤務場所ごとの同一業務で見ます。

つまり、勤務場所が同じで業務も同じであれば、派遣社員や派遣元企業が変わったとしても、派遣期間は通算されますので、注意が必要です。

受け入れ期間の抵触日の通知義務

派遣契約を締結するときに、派遣先企業は派遣元企業に、受け入れ期間の制限に引っ掛かる抵触日を書面で通知する義務があります。

例えば、受け入れ可能期間が1年間で、平成26年4月1日に新しく派遣契約を締結した場合は、派遣終了日が平成27年3月31日ですので、その翌日の平成27年4月1日が抵触日となります。

また、受け入れ期間の抵触日が変更(1年から3年)になったときも、その都度、派遣元会社に通知する義務があります。

派遣社員の選定

派遣契約をする前に、面接を行ったり、性別や年齢の条件を付けたりして、派遣社員を特定する行為は禁止されています。

ただし、紹介予定派遣の場合は、面接や履歴書を送付してもらったり、派遣社員を特定する行為が可能です。

年次有給休暇の取得

派遣社員であっても、6ヶ月継続勤務をすれば年次有給休暇を取得することができます。

派遣社員の年次有給休暇は派遣元企業との関係によるものですので、派遣社員の年次有給休暇の取得について、派遣先企業が制限することはできません。代わりの派遣社員を出してもらうのか、派遣契約で取り決めておくと良いでしょう。

36協定の適用

36協定を締結することによって、36協定の範囲内で、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて勤務させたり、法定休日(週1回の休日)に勤務をさせることが可能になりますが、派遣社員は派遣元企業の36協定が適用されます。

派遣元企業の36協定の範囲内で、時間外勤務等を行わせることができます。この範囲を超えて勤務をさせることはできません。

派遣契約にない業務

派遣契約にない業務を派遣社員にさせることはできません。派遣契約と異なる業務をさせる場合は、派遣契約を変更する必要があります。

直接雇入れ

「自由化業務」で、抵触日以降も派遣社員に勤務してもらいたいときは、派遣先企業は抵触日の前日までに、派遣社員に対して雇用契約の申し込みをしないといけません。

抵触日以降は派遣社員のままで受け入れることができませんので、派遣先企業は直接雇用に切り替えるか、3ヶ月と1日以上のクーリング期間(派遣社員を受け入れない期間)を設ける等の措置が必要になります。

ただし、抵触日以降の3ヶ月と1日だけ直接雇用にして、その後にまた派遣契約に切り替えて受け入れることは、職業安定法に違反すると考えられています。

また、「専門26業務」で、同一業務に同一の派遣社員を、3年を超えて受け入れていて、その業務に新たに(直接雇用する)社員を雇い入れようとするときは、派遣先企業はその派遣社員に対して雇用契約の申し込みをしないといけません。

(2013/4作成)
(2014/5更新)