安全衛生管理体制

安全衛生管理体制

労働基準監督署の是正勧告は、これまで労働時間や割増賃金に関するものに集中していましたが、最近では労働安全衛生法に関する違反についても増加しています。

そして、労働安全衛生法では、安全衛生の責任体制を明確にすることが義務付けられています。

安全衛生管理体制

安全衛生管理体制は、業種と社員数の組み合わせで、衛生管理者などを選任することになっています。

業種

業種は次の3つに分類されています。

  1. 林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業
  2. 製造業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、卸売業、小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業
  3. その他の業種

社員数

ここでいう社員数とは、企業全体ではなく、その事業場(工場や支店など)単位で数えることになっています。また、パートタイマー等も常時雇用している場合は数に含まれます。

では、早速みてみましょう。

総括安全衛生管理者の選任

総括安全衛生管理者を選任する義務があるのは、次のとおりです。

  1. の業種 100人以上
  2. の業種 300人以上
  3. の業種 1,000人以上

総括安全衛生管理者は、事業場の安全衛生の最高責任者として、安全管理者や衛生管理者等を指揮し、次の業務を総括管理します。

  1. 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置
  2. 労働者の安全又は衛生のための教育の実施
  3. 健康診断の実施、その他健康の保持増進のための措置
  4. 労働災害の原因の調査及び再発防止対策
  5. その他、労働災害を防止するため必要な業務

安全管理者の選任

安全管理者を選任する義務があるのは、次のとおりです。

  1. の業種 50人以上
  2. の業種 50人以上
  3. の業種 選任義務なし

安全管理者は、安全についての技術的事項を管理する者として、作業場を巡視し、設備、作業方法等に危険の恐れがあるときは、その危険を防止するための措置を講じることとされています。

安全衛生推進者の選任

安全衛生推進者を選任する義務があるのは、次のとおりです。

  1. の業種 10人以上50人未満
  2. の業種 10人以上50人未満
  3. の業種 選任義務なし

安全衛生推進者は、安全管理者の選任が義務付けられていない中小規模の事業場で、安全衛生に関する業務を担当します。

衛生管理者の選任

衛生管理者を選任する義務があるのは、次のとおりです。

  1. の業種 50人以上
  2. の業種 50人以上
  3. の業種 50人以上

衛生管理者は、衛生についての技術的事項を管理する者として、作業場を巡視し、設備、作業方法又は衛生状態に有害の恐れがあるときは、労働者の健康障害を防止するための措置を講じることとされています。

なお、衛生管理者は、第一種衛生管理者免許、衛生工学衛生管理者免許、又は第二種衛生管理者免許を持っている者から選任することになっています。

衛生推進者の選任

衛生推進者を選任する義務があるのは、次のとおりです。

  1. の業種 10人以上50人未満
  2. の業種 10人以上50人未満
  3. の業種 10人以上50人未満

衛生推進者は、衛生管理者の選任が義務付けられていない中小規模の事業場で、衛生に関する業務を担当します。

なお、衛生推進者も、衛生に関する一定の実務経験者や講習を受けた者の中から選任することになっています。

産業医の選任

産業医を選任する義務があるのは、次のとおりです。

  1. の業種 50人以上
  2. の業種 50人以上
  3. の業種 50人以上

産業医は、健康診断の実施や健康障害の調査と再発防止のための対策の樹立など、労働者の健康管理を行います。

安全委員会の設置

安全委員会を設置する義務があるのは、次のとおりです。

  1. の業種 50人以上
  2. の業種 100人以上
  3. の業種 選任義務なし

安全委員会では、次の事項について調査審議します。

  1. 労働者の危険を防止するための基本となるべき対策
  2. 労働災害の原因及び再発防止対策で、安全に係るもの
  3. その他、労働者の危険の防止及び保持増進に関する重要事項(安全に関する規程の作成、安全教育の実施計画の作成、新規に採用する機械や原材料に係る危険の防止に関すること等)

衛生委員会の設置

衛生委員会を設置する義務があるのは、次のとおりです。

  1. の業種 50人以上
  2. の業種 50人以上
  3. の業種 50人以上

衛生委員会では、次の事項について調査審議します。

  1. 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策
  2. 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策
  3. 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るもの
  4. その他、労働者の健康障害の防止及び保持増進に関する重要事項(衛生に関する規程の作成、衛生教育の実施計画の作成、健康診断や診断結果に対する対策の樹立に関すること等)

安全委員会と衛生委員会の両方の設置が義務付けられている事業場は、それぞれの委員会に代えて安全衛生委員会を設置しても構いません。

最後に

このような安全衛生管理体制は、事故の未然防止を図ろうとするものです。

ハインリッヒの法則で紹介していますが、1つの重大事故の裏には300回のヒヤリとした体験と、29件の軽災害(軽いケガなど)があるものです。

そして、現場の社員は、事故が起きそうな状況であれば必ず把握しています。危険や健康に害を及ぼしそうな状況があれば、積極的に申し出るよう指導してください。安全は経営者の心掛けに左右されます。

(2007/9作成)
(2014/5更新)