傷病による長期欠勤の対応|会社がすべき休職・社会保険・退職手続きを解説
長期欠勤が発生したときの会社の対応手順
従業員が私傷病により、当分の間、職場に復帰できない場合に、会社としてどのように対応すれば良いのか戸惑うことがあります。対応しないといけないことがいくつかあります。
年次有給休暇の取扱い
出勤できないときは、最初の3日は年次有給休暇を取得して、傷病の様子を見ることが多いです。
ただし、年次有給休暇は、従業員が取得日を指定して利用するのがルールですので、会社が一方的に年次有給休暇を取得させることはできません。年次有給休暇を利用するのか、欠勤扱いにするのか、本人に確認してください。
傷病手当金の手続き
業務外の傷病のため、労務不能で休業して、無給の場合は4日目以降の休業期間に対して、健康保険から従業員に傷病手当金が支給されます。傷病手当金の支給額は標準報酬日額の約2/3で、支給期間は通算して1年6ヶ月が限度です。
年次有給休暇を使い切った場合、年次有給休暇を利用しないで休業する場合は、欠勤扱いで通常は無給ですので、傷病手当金の手続きを行います。
休職制度とは
私傷病休職とは、業務外の私傷病によって勤務できない従業員に対して、在籍したまま一定期間の勤務を免除する制度のことを言います。
私傷病によって勤務できない場合は、解雇事由になりますが、回復が見込まれる場合は解雇しないで休職させる会社が多いです。つまり、休職は、解雇を一定期間猶予する制度とも言えます。
そして、休職期間中に業務が行える状態に回復した場合は、復職します。一方、休職期間が満了しても回復しない場合は、就業規則の規定に基づいて、自動的に退職となります。
休職は法律で定められている制度ではありませんので、休職を採用するかどうか、休職の内容(休職事由や賃金の有無、休職期間の長さ等)は会社の裁量で決めることができます。通常は、就業規則で定めて運用しています。
従業員にとってのメリット
- 安心して働ける
会社にとってのメリット
- 休職期間満了による「退職」となるのでトラブルになりにくい(「解雇」の場合は正当な理由が必要とされ、解雇予告の手続きが義務付けられます)
- 復職する場合は採用コストが掛からない
従業員にとってのデメリット
- 賃金が支払われない(健康保険に加入している場合は傷病手当金が支給されます)
会社にとってのデメリット
- 無給でも会社負担分の社会保険料を支払わないといけない
- 他の従業員に業務の負担が掛かる
休職制度(私傷病休職)の適用
就業規則で休職制度を定めている場合は、就業規則に基づいて休職を適用します。その後、休職期間が満了するまでに復職できない場合は、通常は自動的に退職となります。
後のトラブルを防止するために、休職を適用するときは休職願の提出を求めて、具体的に○月○日が休職期間の満了日であることを書面にして、予め従業員に通知することが重要です。
休職命令が出せない
従来は、就業規則で、欠勤が一定期間継続した場合は休職を命じると規定している例が多く、休職の適用に関してトラブルになることは余りありませんでした。
しかし、近年は、精神疾患に関して、休職の適用を拒否する従業員がいます。精神疾患の場合は出勤しようと思えばできる場合がありますので、欠勤が一定期間に達する前に断続的に出勤して、休職を命じることができるのかどうかでトラブルになります。
従業員の希望どおりに勤務を続けて、症状が悪化すると、会社の責任が問われます。会社には安全配慮義務がありますので、症状が悪化する可能性があることを把握していたにもかかわらず、会社は何も対応をしなかったと指摘される恐れがあります。
そのため、症状が悪化する恐れがある、勤務すべきでないと思われる場合は、強制的に休職を適用して治療に専念させるべきです。
ただし、休職を命令する場合は、就業規則に根拠となる規定が必要ですので、「精神疾患等により労務の提供が不完全なとき」というように、欠勤が一定期間継続しない場合でも、休職を命じることができる規定を休職事由の中に追加しておくと良いでしょう。
休職制度がない場合
私傷病によって勤務できない場合は、解雇事由になります。就業規則の解雇事由として、「精神又は身体の障害により、業務に耐えられないと会社が認めたとき」といった規定があると思います。
しかし、2~3ヶ月ほど療養すれば職場に復帰できることが明らかな場合は、解雇は無効と判断される場合があります。休職制度がない会社でも、直ぐには解雇しないで、症状が安定して、復帰の見込みが明らかになるまで待った方が良いです。
職場への復帰が見込めないで、雇用の継続が不可能な場合は解雇は有効と認められますが、その場合は、解雇予告の手続きが必要です。
欠員の補充
小規模企業で欠員が生じたときは、代替要員が必要になるケースが多いです。療養している従業員が復帰したときに、代替要員を解雇するとトラブルになりますので、代替要員は復帰の見込みに合わせて、6ヶ月や1年といった期間を定めて雇用すると良いでしょう。
社会保険料等の徴収
社会保険料
健康保険と厚生年金の社会保険料は毎月掛かりますので、毎月振り込んでもらう方法が良いです。
復帰後にまとめて返済を求める方法もありますが、長期間になると合計金額が大きくなって返済が大変ですし、復帰しないで退職する場合は返済に応じないでトラブルになることがあります。
雇用保険料
雇用保険は実際に支払った賃金に対して保険料が掛かりますので、無給の場合は雇用保険の保険料は掛かりません。
住民税
住民税については、長期間になることが予想される場合は、会社が徴収して納付する方法から、個人で納付する方法に切り替えると良いでしょう。切替えの手続きは住所地の市区町村にお尋ねください。
業務上の傷病による場合
業務上の傷病による場合は、労働基準法で、療養のために休業する期間とその後30日間は、解雇できないことが定められています。この場合は、休職を適用して自動的に退職させることはできませんし、解雇することもできません。
(2013/9作成)
(2026/3更新)
執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。メールを用いた関連サービスは20年以上の実績があり、全国の中小零細企業を対象に、これまで900社以上の就業規則の作成・変更に携わってきました。
