傷病による長期欠勤の対応

社員が重い病気やケガをして、当分の間、職場に復帰できないことが明らかになりました。

こうなったときに、会社としてどのように対応して良いのか戸惑ってしまうことが多いようです。

対応しないといけないことが色々あります。

整理しましたので、1つずつ見ていきましょう。

年次有給休暇の取扱い

出勤できないときは、通常は年次有給休暇を取得して、傷病の様子を見ることになります。

しかし、年次有給休暇は、社員が取得日を指定して利用するものですので、会社が勝手に年次有給休暇を消化させることはできません。年次有給休暇を利用するのか、欠勤扱いにするのか、本人に確認して下さい。

社会保険の手続き

傷病手当金

年次有給休暇を使い切ったり、年次有給休暇を利用しないで休む場合は、欠勤になります。欠勤は通常は無給ですので、健康保険の傷病手当金の手続きを行います。

支給される金額は、賃金の約3分の2です(正確には、4日目以降の休んだ日1日につき標準報酬日額の3分の2です)。ただし、休んだ日に対して賃金が支払われたときは、その分だけ傷病手当金は減額されます。

傷病手当金が支給される期間は、暦日で最長1年6ヶ月です。

高額療養費

1ヶ月の医療費の自己負担額(窓口負担)の合計が、80,100円(標準報酬月額が53万円以上の方は、150,000円)を超えたときは、超えた金額の大部分が「高額療養費」として戻ってきます。

この制度を知らない方が多いようですので、知らせてあげると喜ばれるでしょう。ただし、高額療養費は少し複雑な制度になっていて、細かな取り扱いに苦戦するかもしれません。

限度額適用認定

上の高額療養費は1ヶ月の医療費を合計して、事後に手続きを行うものですが、医療費が高額になることが明らかな場合は、事前に同様の申請することができます。

その場合は、事前に健康保険協会(けんぽ協会)に「限度額適用認定申請書」を提出して、「限度額適用認定証」の交付を受けて、これを医療機関の窓口に提出する必要があります。

この手続きをすれば、医療機関での窓口負担が軽減されます。高額療養費として受け取っていたものが相殺されて、必要な金額だけを支払うことになります。高額療養費を申請する手間も省けます。

休職制度

休職制度がある場合

就業規則で休職制度を定めている場合は、就業規則に基づいて対応します。そして、休職期間が満了するまでに復職できないときは、通常は自動的に退職となります。

後のトラブルを防止するために、休職を開始する際は休職願を提出してもらう等して、具体的に○月○日が休職期間の満了日であることを書面にして、予め社員に理解してもらうことが重要です。

休職制度がない場合

私傷病により約束していた業務が十分に行えないときは、会社は解雇することができます。就業規則に解雇事由として、「精神又は身体の障害により、業務に耐えられないと会社が認めたとき」といった内容が定められていると思います。

ただし、2,3ヶ月ほど療養をすれば職場に復帰できることが明らかな場合は、解雇が認められないと判断されることもあります。

また、休職制度がない場合は、「解雇」になりますので、解雇予告の手続きが必要です。

一定の猶予期間を与える場合

休職制度がない会社でも、直ぐには解雇をしないで、一定の猶予期間を与えるケースがあります。この一定期間については、会社としてどれくらいなら許容できるのかを考えて設定します。

この場合も休職と同様に、いつまでなら在籍させ続けることができるのか、具体的な日付を予め書面で伝えておくことが大事です。曖昧だとずるずると引き延ばすことになりかねません。

欠員の補充

小規模企業で欠員が生じたときは、代替要員が必要になるケースが多いです。

療養している社員が復帰したときに、代替要員を解雇するとトラブルになりますので、代替要員は復帰の見込みに合わせて、6ヶ月や1年といった期間を定めて雇用すると良いでしょう。

社会保険料等の徴収

社会保険料

健康保険と厚生年金の社会保険料は毎月掛かりますので、毎月振り込んでもらうのが良いです。

復帰後にまとめて返済してもらう方法もありますが、長期になると合計金額が大きくなって返済が大変ですし、復帰しないで退職するケースでは返済に応じてもらえずにトラブルになることがあります。

雇用保険料

雇用保険は実際に支払った賃金に対して保険料が掛かりますので、無給の場合は雇用保険の保険料は掛かりません。

住民税

住民税については、長期になることが予想される場合は、会社が徴収して納付する方法から、個人で納付する方法に切り替えると良いでしょう。切替えの手続きは住所地の市区町村にお尋ね下さい。

退職後の傷病手当金

職場に復帰できないで退職(解雇)するときでも、退職日まで1年以上健康保険に加入していて、退職日に傷病手当金を受給しているときは、退職後も引き続き傷病手当金を受給できます。

ただし、退職日に勤務すると受給できなくなりますので、注意して下さい。

失業給付の受給期間の延長申請

失業給付を受給できる期間は、原則的には退職した日から1年間となっています。

しかし、傷病により働けないときは、失業給付を受給できません。このような場合は、受給期間を3年間延長することが認められています(合計で4年間)。

延長申請は、ハローワークに離職票や受給資格者証などを添付して行います。また、申請期間が、退職をして31日目から1ヶ月以内と決められていますので、注意が必要です。

事前に必要書類等についてハローワークに確認すると良いでしょう。この申請は、郵送でも可能です。

業務上の傷病による場合

業務上の傷病による場合は、労働基準法で、療養のために休業する期間とその後30日間は、解雇できないことが定められています。

この場合は、休職を適用して自動的に退職させることはできませんし、解雇することもできません。

(2013/9作成)
(2014/5更新)